錬金チート開拓記 ~国に捨てられた俺、前世の知識と万能の錬金術で自由気ままな辺境暮らしを楽しむ~

六志麻あさ

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8 温泉を作る

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「ああ、本当に完成したんだな……」

 俺は完成したばかりの城をもう一度見上げた。

 夕日に映える白く輝く壁や美しい尖塔。

 雄大にそびえるその城を眺めていると感動があらためてこみ上げてくる。

 興奮冷めやらぬまま、俺は城の裏手へと回った。

 ここからは森の景色を一望できる絶好のロケーションだ。

「よし、ここにしよう。露天風呂を作るには、ここが一番よさそうだ」

 俺は腕組みしながら、あらためて脳内でここに造られた露天風呂をイメージする。

 前世では、狭いユニットバスで膝を抱えて浸かるのが精一杯だった。

 満天の星空の下で、広い湯船に浸かって露天風呂を満喫するなんて夢のまた夢だった。

 けれど、この異世界ではそれが叶う――。

「しかも、自分だけの温泉だ。最高だよな……」

 想像するだけで、疲れた体が癒やされるような気がした。

 王国での搾取の日々、前世での社畜生活、その全ての疲れを洗い流す、最高の温泉を作るぞ――!

 俺はそう決意した。



 まず岩盤に手をかざして、錬金術を行使する。

 ごごごごご……。

 地鳴りのような音とともに、岩盤が形を変え始めた。

 一辺が二十メートル近い巨大な湯船が、岩をくり抜くようにして錬成されていく。

「……ちょっとデカすぎたか? 一人分でいいんだけど、張り切っちゃったな、はは」

 俺は苦笑した。

 ゴツゴツしていた岩肌は、俺の錬金術によって滑らかに磨き上げられている。

 実際にもたれかかったり、座っても、まったく痛さを感じない。

 さらに、底には肌触りの良い玉砂利が敷き詰められた。

 ついでに掛け湯用のスペースも作り、さらに風呂桶や風呂椅子を手近な木から錬成しておく。

 広すぎるのも、別にデメリットではないし、これは理想の湯舟といっていいだろう。

「よし、すごく良い感じだ。次は源泉だな」

 俺は満足して湯舟を見回した。

 源泉を引くにはどうすればいいんだろう?

「とりあえず、この辺りの地脈を探ってみるか」

 俺は地面に手をかざした。

 魔力が地中深くまで浸透し、源泉の位置を探査する。

「……あった!」

 俺は数十メートル歩き、そこでもう一度手をかざす。

 今度は地面を掘削し、源泉を湯舟の方まで引いてくるための術式だ。

 ほどなくして――、

 ゴポゴポ……。

 湯船に透明な湯が湧き出し始めた。

 湯気とともに、硫黄の香りが漂ってくる。

「くぅーっ、これこれ! これぞ、温泉って感じの匂いだよな!」

 俺は歓喜した。

「本当に温泉が出るところを見ると、感激もひとしおってやつだな……! しかも泉質は単純泉か。悪くないぞ」

 だが、もうひと工夫してもいいかもしれない。



 俺はふたたび森の中に入った。

 森に入ると、俺は足元に生えている薬草を見回した。

 前世の知識と錬金術師としての知識から、それぞれの効能を分析する。

 まず、この『シズマリグサ』には鎮静作用がある。

 こっちの『ナメラカーン』は美肌効果。

 向こうに生えている『ミャクウッチー』には血行促進効果があるはずだ。

「よし、これを錬金術で全部凝縮して温泉成分として加えよう」

 つまり、温泉に入るだけでリラックスできて肌も綺麗になって、血行も促進される――いいぞいいぞ。

 俺はそれらの薬草を摘み取り、魔力を込めた。

 ヴ……ンッ。

 低い音と共に薬草が輝き、やがて有効成分だけが抽出されたオーブへと変化する。

「こいつを温泉の中心に設置すれば、少しずつ成分が溶け出して温泉全体に行き渡るはずだ。後は、定期的にこいつを作って入れ替えればいい」

 俺は満足してうなずいた。

 さっそく、さっき造ったばかりの温泉に持っていき、中心部にオーブを沈める。

 それから、成分が少しずつ溶け出すように錬金術で調整した。

 すると――、

「おおっ!」

 透明だった湯が薄緑色に変わっていく。

 硫黄の匂いに薬草の香りが混じり、温泉独特の雰囲気がさらに増した。



 その後、こまごまとした作業を終えると、すっかり日も暮れていた。

 空には満天の星が輝いている。

 都会では見ることのできない、今にも降ってきそうな迫力さえ伴った壮観な星空――。

「この空の下で露天風呂に入るっていうのは、最高の贅沢だよな」

 俺はニヤリとして服を脱いだ。

 掛け湯をした後、完成したばかりの温泉にゆっくりと体を沈める。

「あぁ~……!」

 魂が洗われるような心地と共に、俺は声を上げた。

 ちょうどよい湯音と森のひんやりした空気、満天の星空――最高の露天風呂だ。

 今までの疲れのすべてが、この薄緑色の湯に溶けていくようだった。

 はあ~、極楽極楽。
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