錬金チート開拓記 ~国に捨てられた俺、前世の知識と万能の錬金術で自由気ままな辺境暮らしを楽しむ~

六志麻あさ

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9 モフモフを錬成する

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 翌日――。

 城を建てたし、念願の露天風呂も作り上げた。

 俺は今、すごく満ち足りた気分でいた。

 ここは城の1階にあるリビングで、ログハウス風の空間にしてある。

 暖炉で薪が燃え、パチパチと心地よい音がした。

 俺はロッキングチェア――当然これも錬金術で作った――に座る。

 ゆらゆらと揺れながら炎をぼんやりと眺めた。

 家は完璧だ。

 風呂も最高だ。

 ゴーレムが見張りをしているから身の安全は確保されている。

 これ以上ない快適な環境がここにあった。

「最高に快適だな」

 前世は社畜だった。

 転生後は王国で兵器を作らされていた。

 どちらの人生でも考えられない、夢のような生活だった。

 けれど、満ち足りたこの空間でふと思った。

「……静かすぎる」

 ロッキングチェアが軋む音と暖炉の薪がはぜる音――それ以外は、完全な静寂だ。

 話し相手が欲しいわけではない。

 エルフの森に行けばミルやサーラがいる。

 孤独が苦しいわけでもない。

 でも――この気持ちはなんだろう?

「うーん……?」

 ロッキングチェアに揺られながら考える。

 そうだ……何かを愛でたいんだ、俺。

「前世はペット禁止のアパートだったよな……」

 かつての記憶がよみがえってきた。

 激務に疲れて家に帰った後、動画サイトを見る。

 画面の向こうでは犬が元気に駆け回るり、猫が気ままに喉を鳴らし、うさぎが小さな口をもぐもぐさせている。

 それらを見ることが俺の癒やしだった。

「ペットか……」

 この世界ならどんな動物でも飼えるだろう。

 世話は大変かもしれないけど、この広大な土地と錬金術があるから、なんとでもなるだろう。

「でも、仮に森で動物を捕まえたとしても、懐くかわからないな」

 俺には動物の専門知識がないし、捕まえ方さえ分からない。

「そうだ……無いのなら、作ればいいじゃないか」

 俺は、錬金術師なんだから。

「よし……!」

 俺はロッキングチェアから立ち上がった。

 生命の創造は神の領域であり、錬金術で最大の禁忌とされる。

 国や協会に見つかれば異端者として断罪されるだろう。

 火あぶりにされかねない大罪だ。

 だけど、今の俺を縛るものは何もない。

「ここは自由の森だ」

 俺はニヤリとした。

 誰にも咎められない。

 誰にも遠慮する必要はない。

 俺は、俺がやりたいことをやるんだ。

「どんな子にするかな……俺の理想を、全部詰め込んでやる」

 俺の心は創作意欲の炎で燃え上がっていた。



 俺はリビングを後にしてアトリエにやって来た。

 床にチョークで円を描く。

 巨大な円で、その内側に複雑な模様と術式を刻んでいく。

 生命を錬成するための特別な錬成陣だった。

「核は、これだな」

 俺はアイテムボックスから、さっき作ったばかりの魔石を取り出した。

 高純度の魔力の塊であるこれは、俺の魔力の八割ほどを注いで作ったもの。

 これだけの魔力を注ぐと、俺自身の魔力の回復までにしばらくかかるから、その間はあまり錬金術を使えない。

 けれど、惜しくはない。

 今からやる術式は、それだけ強大な魔力が必要だし、絶対に成し遂げたい術だからな。

 ただし、失敗して魔石を壊してしまうと、次に魔石を作れるだけの魔力が回復するまで数日から一週間はかかる。

 なるべく一発で成功させたいところだ。

 俺は魔石を錬成陣の中央に置いた。

 次に、森で集めた最高の素材を置いていく。

 月の光を浴びた金色の獣毛や純度100%の泉の水、花の蜜や新鮮な草花――。

 そのすべてが、俺の魔力を帯びた素材だった。

「コンセプトは『愛らしさ』と『癒やし』。そして『賢さ』だ」

 大きさは子犬くらいで、毛質はもちろんモフモフだ。

 俺は錬成陣の前に立って、両手をかざした。

「――【生命創造】」

 俺の体内から膨大な魔力が溢れ出す。

 それが錬成陣に置かれた各種素材と呼応し、陣の中の魔力が爆発的に高まっていく。

 こうっ……!

 陣から天井に向かって青い光の柱が立ち上った。

 アトリエが青一色に染まり、魔石が光の粒子になって溶けていく。

 その光の粒子が一点に収束すると、まぶしい輝きと共に弾けた。

「おお……」

 錬成陣の中央に、小さな毛玉が座っていた。

 真っ白で、ふわふわの毛並みだ。

 大きさは俺がイメージした通りの子犬サイズ。

 クリッとした二つの目がある。

「できた……のか?」

 俺はおそるおそる、その『毛玉』に手を伸ばした。

 すると、その子は俺に気づいたのか、大きな瞳で俺を見つめてきた。

「もきゅ?」

 と、小さな頭をこてんと傾げた。

 その愛らしい姿を見た瞬間、俺の理性は吹き飛んだ。

 きゃ……きゃわわわわわわぁぁぁっ!
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