錬金チート開拓記 ~国に捨てられた俺、前世の知識と万能の錬金術で自由気ままな辺境暮らしを楽しむ~

六志麻あさ

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14 氷に閉じ込められたもの

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 秋風が吹き始め、少しずつ肌寒くなってきた。

 俺は城のテラスから森を眺めていた。

 木々は黄色や赤に色づき、美しいグラデーションを描いている。

 この世界の四季は豊かだ。

 もうしばらくしれば、厳しい冬が来るはずだった。

「今のうちに冬に備えなくちゃな」

 俺は城の冬支度を始めることにした。

 まずは食料の確保だ。

 錬金術は食材を新鮮なまま保存することができる。

 俺は森の恵みを収穫し、片っ端から錬成していった。

 木の実、キノコ、薬草。

 それらを乾燥させたり塩漬けにしたりして、長期保存が可能なように加工する。

「よし、これで当分は食いっぱぐれないな」

 俺は城の食料庫にそれらを入れて、満足げにうなずいた。

「もきゅ?」

 隣でモッキュが首をかしげる。

「冬の準備だよ。たくさん食料を貯めておかないと、寒くて外に出られなくなるからな」

 モッキュは理解したように「もきゅ!」と鳴いた。



 次に、俺は暖房の準備に取り掛かった。

 俺はゴーレムを十体ほど作り出した。

「お前たち、森に行って薪を集めてきてくれ」

 命令に従い、ゴーレムたちは一斉に森へと向かっていった。

 薪集めはゴーレムに任せ、俺は暖炉の強化に乗り出した。

 錬金術で暖炉の内部に熱を効率的に循環させる術式を刻む。

 さらに、熱を長く保持できる石材に錬成し、城全体が温かくなるように改良を加えていった。

「よし、テストしてみよう」

 暖炉に火をくべると、部屋全体がじんわりと温かくなる。

 これで冬も安心だな。



 毎日のんびり暮らしつつも、冬に対する備えをしていく。

 ゴーレムたちは今日もせっせと薪を集めているので、そっちは完全にお任せだ。

 そんなある日のことだった。

 暖炉で温まった部屋の中央でロッキングチェアに揺られながらリラックスしていると、

「……ん?」

 森の奥から、かすかに光が見えた。

「なんだ、あれは?」

 ちかっ、ちかっ。

 何度か瞬き、その光は強まったり弱まったりする。

「ちょっと気になるな。見てくるか。いくぞ、モッキュ」
「もきゅ!」

 俺はモッキュを肩に乗せ、光の場所へと向かった。



 森の中を進んでいくと、光はどんどん強くなる。

 同時に、あたりがだんだんと冷たい空気に満ちていった。

「この冷気……なんかおかしいな」

 普段の森ではあり得ないほどの冷気だ。

 光の元にたどり着くと、地面に大きな氷の塊があった。

 その中には、淡く光る何かが閉じ込められている。

「なんだ、これ……?」

 目を凝らすと、それは手のひらほどの大きさの光の粒だった。

「もきゅもきゅ?」

 モッキュが俺の肩の上で不思議そうに頭を傾げる。

「大丈夫だ、モッキュ。前に魔法書で見たことがある――たぶん、こいつ精霊だ」

 つぶやくと、氷の中に閉じ込められた光の粒がかすかに明滅した。

 この光の強弱はそのまま精霊の生命力を示している――はずだ。

 だいぶ前に読んだ魔法書の記述だから、記憶があいまいだけど。

 とにかく、この精霊はかなり弱っているみたいだ。

「ここから出してやったほうがいいか……?」

 俺は手を伸ばして氷に触れてみた。

「すごい冷気だ……精霊はこの寒さでダメージを受けてるってことか……?」

 なら、やっぱりここから出してやるべきだろう。

 まず、氷を溶かす方法を考えた。

 火の魔法で溶かすのは簡単だけど、精霊を傷つけてしまうかもしれない。

「別の方法を試すか」

 俺は氷の塊に向かって手をかざした。

 氷の構成物質を変化させる術式を試してみる。

 これなら熱を発生させずに済むからな。

 ヴ……ンッ。

 俺の魔力が氷に浸透していく。

 ――しかし、氷はびくともしなかった。

「うーん……ダメか」

 氷の冷気と精霊の魔力が混ざり合い、別の物質と化しているらしく、簡単に構成を変えられない。

 と、そのとき、氷の中の精霊が小さく明滅した。

「ん……?」

 俺の中で声が聞こえる。

『助けて……お願い……』

 通話魔法らしい。

 か細い声で、やっぱり精霊は相当弱っているみたいだった。

「お前……俺と話せるのか?」
『……はい……私は、この森の精霊です……』

 精霊はそう言って、ふたたび光を揺らした。

「もきゅ……」

 モッキュが俺の肩の上で、心配そうに精霊を見つめている。

「大丈夫だ、俺が助ける」

 モッキュと精霊の両方に言い聞かせ、もう一度氷に手をかざした。

 今度は氷を溶かすのではなく、精霊自身に力を与えるイメージで魔力を流し込む。

 イメージを、強く――。

 俺は自分自身に言い聞かせる。

 もっと、鮮明なイメージだ。

 もっと、もっと鮮明な。

 精霊自身が温かい光を放ち、氷を内側から溶かす。

 そのイメージを、もっと鮮明に――!

 氷が溶け始める。

 精霊の光が、どんどん強くなっていく。

「いけるぞ……!」

 俺はさらに魔力を注ぎ込み、氷を完全に溶かしきった。

 精霊は氷から解放されると、俺の周りをくるくると回り始めた。

『……ありがとうございます!』

 精霊は嬉しそうに、何度も俺に感謝の気持ちを伝えてきた。

「よかったな。これで冬を乗り切れるんじゃないか?」

 俺は安堵と喜びの笑みを漏らした。

 本当に上手くいって良かった。

『はい、ナッシュ様からいただいた温かい魔力のおかげです……!』

 光の粒は氷から出ると、光の玉――野球のボールくらいの大きさだ――へと変化した。

 さらに、そこから小さな光の粒が俺の方に向かって来る。

「ん……?」

 光の粒はそのまま俺の中に吸い込まれた。

 同時に温かな力が体の中に満ちていくのを感じる。

「これは――」
『お礼です。精霊魔法の源をあなたにお送りしました』

 光の精霊が嬉しそうに言った。

『あなたは錬金術師のようですから、精霊魔法を加えることで、より多彩な術を使えるようになると思いますよ?』

 そう言うと、光の玉はユラユラと揺れながら飛び去っていった。

「ありがとう、精霊」

 俺は去っていく光の玉に手を振って見送る。

「もっきゅもっきゅ~」

 モッキュも精霊に礼を言っているようだ。

「いいことをした後は気分がいいな、モッキュ」
「もきゅ!」
「帰るか」
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