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13 醤油と味噌、完成!
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そして――。
数日にわたる探索の末、俺はついに大豆によく似た栄養価の高い豆を発見した。
見た目も、少し齧ってみたときの風味も、前世の大豆にそっくりだ。
「やったぞ、モッキュ! これならいける!」
「もきゅきゅー!」
幸運なことに、その豆のさやには、白っぽいカビのようなものが付着していた。
もしかしたら、これが麹菌の代わりになるかもしれない。
俺は期待に胸を膨らませ、大量の豆とカビをアトリエに持ち帰った。
さっそく醤油と味噌の再現に挑戦する。
まずは豆を煮て、潰した。
そこに例のカビと塩を混ぜてみる。
「発酵には時間がかかるんだよな……。けど、錬金術でこのプロセスを無理やり短縮できるか」
俺は発酵を促すイメージで、ペースト状になった豆に魔力を注ぎ込んだ。
ごぽごぽ……。
目の前の樽の中で、ペーストが泡立ち始める。
「おお、いけるか……!」
次の瞬間、
ぷすん……。
嫌な音を立てて、樽から強烈な悪臭が立ち上った。
それは、生ゴミを一か月くらい放置したような激烈な匂いだった。
「ぐほっ!」
俺は思わず呻き、鼻と口を押さえた。
「もぎゅっ!?」
隣にいたモッキュも悲鳴のような鳴き声を上げ、揃ってアトリエから転がるように逃げ出した。
「ぜーはーぜーはー」
「もーきゅーもーきゅー」
俺たちは外の新鮮な空気を吸い込み、なんとか呼吸を整える。
「よし、仕切り直しだ。プロセスを短縮しようとしたのが裏目に出た。今度はもうちょっと丁寧にいくぞ」
俺はモッキュと一緒にアトリエに戻った(先に錬金術でマスクを作り、換気をしたのだ)
前世の知識をもう一度しっかりと思い出す。
確か、温度と湿度の管理が重要だったはずだ。
俺は錬金術で、内部の温度と湿度を一定に保つことができる、専用の発酵用の木樽を錬成した。
そして、もう一度最初からやり直す。
丁寧に豆を煮て、潰し、カビと塩を混ぜて樽に仕込む。
あとは、ひたすら待つだけだ。
数週間、俺は毎日樽の様子をうかがった。
焦る気持ちを抑え、じっくりと熟成させる。
そして――ついにその日は来た。
アトリエに入ると、以前のような悪臭はしない。
代わりに、どこか懐かしいような、食欲をそそる香りがかすかに漂っている。
「頼むぞ、今度こそ!」
祈るような気持ちで蓋を開けた。
「おおっ……!」
これまでとは違う、香ばしく、豊かな香りがふわりと広がった。
それは、間違いなく醤油と味噌が混ざったような、故郷の香りだった。
「もきゅー!」
モッキュも祝福するように鳴いてくれた。
俺は震える手で、完成した黒い液体――醤油もどきを小皿に注ぐ。
そして、たった今火で炙っただけの、シンプルな森のキノコにそれを少しだけ垂らした。
どきどき……期待を込めて口に運ぶ。
「……っ!」
口の中に広がる塩味と、豊かな旨味と香り。
それは正真正銘、俺が求めていた味だった。
「う、う、うまー!」
思わず叫んでいた。
塩辛いだけじゃない。
深いコクと旨味が、キノコの味を何倍にも引き立てている。
「やっぱり醤油はいいなぁ。故郷の味っていいなぁ」
料理でここまで感動することがあるのか、っていうくらい感動していた。
単に美味しいからだけじゃない。
試行錯誤してここまでたどり着いたからこその感動なんだ。
「もっきゅもっきゅ」
その様子を見上げた足元のモッキュが、俺を祝福するように何度も鳴いていた。
「お前もありがとうな、モッキュ」
俺はにっこり笑ってモッキュを撫でてやった。
もふもふが、気持ちよかった。
その後、味噌も完成させることに成功し、俺の食事のメニューには晴れて味噌汁が加わった。
うん、これぞ故郷の味――。
俺のスローライフはますます充実していくのだった。
数日にわたる探索の末、俺はついに大豆によく似た栄養価の高い豆を発見した。
見た目も、少し齧ってみたときの風味も、前世の大豆にそっくりだ。
「やったぞ、モッキュ! これならいける!」
「もきゅきゅー!」
幸運なことに、その豆のさやには、白っぽいカビのようなものが付着していた。
もしかしたら、これが麹菌の代わりになるかもしれない。
俺は期待に胸を膨らませ、大量の豆とカビをアトリエに持ち帰った。
さっそく醤油と味噌の再現に挑戦する。
まずは豆を煮て、潰した。
そこに例のカビと塩を混ぜてみる。
「発酵には時間がかかるんだよな……。けど、錬金術でこのプロセスを無理やり短縮できるか」
俺は発酵を促すイメージで、ペースト状になった豆に魔力を注ぎ込んだ。
ごぽごぽ……。
目の前の樽の中で、ペーストが泡立ち始める。
「おお、いけるか……!」
次の瞬間、
ぷすん……。
嫌な音を立てて、樽から強烈な悪臭が立ち上った。
それは、生ゴミを一か月くらい放置したような激烈な匂いだった。
「ぐほっ!」
俺は思わず呻き、鼻と口を押さえた。
「もぎゅっ!?」
隣にいたモッキュも悲鳴のような鳴き声を上げ、揃ってアトリエから転がるように逃げ出した。
「ぜーはーぜーはー」
「もーきゅーもーきゅー」
俺たちは外の新鮮な空気を吸い込み、なんとか呼吸を整える。
「よし、仕切り直しだ。プロセスを短縮しようとしたのが裏目に出た。今度はもうちょっと丁寧にいくぞ」
俺はモッキュと一緒にアトリエに戻った(先に錬金術でマスクを作り、換気をしたのだ)
前世の知識をもう一度しっかりと思い出す。
確か、温度と湿度の管理が重要だったはずだ。
俺は錬金術で、内部の温度と湿度を一定に保つことができる、専用の発酵用の木樽を錬成した。
そして、もう一度最初からやり直す。
丁寧に豆を煮て、潰し、カビと塩を混ぜて樽に仕込む。
あとは、ひたすら待つだけだ。
数週間、俺は毎日樽の様子をうかがった。
焦る気持ちを抑え、じっくりと熟成させる。
そして――ついにその日は来た。
アトリエに入ると、以前のような悪臭はしない。
代わりに、どこか懐かしいような、食欲をそそる香りがかすかに漂っている。
「頼むぞ、今度こそ!」
祈るような気持ちで蓋を開けた。
「おおっ……!」
これまでとは違う、香ばしく、豊かな香りがふわりと広がった。
それは、間違いなく醤油と味噌が混ざったような、故郷の香りだった。
「もきゅー!」
モッキュも祝福するように鳴いてくれた。
俺は震える手で、完成した黒い液体――醤油もどきを小皿に注ぐ。
そして、たった今火で炙っただけの、シンプルな森のキノコにそれを少しだけ垂らした。
どきどき……期待を込めて口に運ぶ。
「……っ!」
口の中に広がる塩味と、豊かな旨味と香り。
それは正真正銘、俺が求めていた味だった。
「う、う、うまー!」
思わず叫んでいた。
塩辛いだけじゃない。
深いコクと旨味が、キノコの味を何倍にも引き立てている。
「やっぱり醤油はいいなぁ。故郷の味っていいなぁ」
料理でここまで感動することがあるのか、っていうくらい感動していた。
単に美味しいからだけじゃない。
試行錯誤してここまでたどり着いたからこその感動なんだ。
「もっきゅもっきゅ」
その様子を見上げた足元のモッキュが、俺を祝福するように何度も鳴いていた。
「お前もありがとうな、モッキュ」
俺はにっこり笑ってモッキュを撫でてやった。
もふもふが、気持ちよかった。
その後、味噌も完成させることに成功し、俺の食事のメニューには晴れて味噌汁が加わった。
うん、これぞ故郷の味――。
俺のスローライフはますます充実していくのだった。
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