錬金チート開拓記 ~国に捨てられた俺、前世の知識と万能の錬金術で自由気ままな辺境暮らしを楽しむ~

六志麻あさ

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12 醤油と味噌がほしい!

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 城での生活は最高だった。

 ログハウス風に錬成したキッチンは使いやすく、窓から差し込む朝日が気持ちいい。

 そして夜には露天風呂がある。

 住環境は完璧だ。

 そして、癒やしもある。

「もきゅきゅ……」

 俺の足元では、相棒のモッキュが丸くなって気持ちよさそうに眠っている。

 このモフモフとした存在が、俺の心をどれだけ満たしてくれていることか。

「だけど……」

 俺は腕を組み、深刻な顔で唸った。

「うーん……」

 何かが足りない。

 決定的に、何かが。

 隣で寝ていたモッキュが、俺の唸り声に気づいて目を覚ました。

 くりっとした瞳で俺の顔を見上げている。

「もきゅ?」
「心配してくれるのか、モッキュ。優しいな」

 俺はモッキュの頭を撫でた。

 それから、あらためて考える。

 何が足りないんだろう。

 森の幸を使った料理は本当に美味しい。

 新鮮なキノコのソテーも、木の実を練り込んだパンも、鳥のハーブ焼きも、どれも絶品だ。

 ゴーレムに作らせた石窯の性能も素晴らしい。

 だけど、違うんだ。

「確かに美味いんだが……。何かこう、足りない……!」

 腹の底から湧き上がる、この渇望は一体何なんだ。

 考えたところで、ふと思いついた。

「そうだ……日本人としての俺の原点が……あの味にある!」

 脳裏に前世の食卓が鮮やかに浮かび上がった。

 炊き立ても熱い白米。

 豆腐とワカメが浮かんだ、心に染み渡る味噌汁。

 そして――焼き魚や煮物などあらゆる料理のベースとなる、あの黒くて香ばしい液体。

 あれがなければ、日本の食は始まらない。

「醤油と味噌だ! あれがないと、俺の食生活は完成しない!」

 決意を固めた俺は、椅子から勢いよく立ち上がった。

「行くぞ、モッキュ!」
「もきゅ!」

 俺の決意が伝わったのか、モッキュも元気よく鳴いた。

 目標は、醤油と味噌の原料となる『大豆』によく似た豆。

 この広大な森なら、きっと見つかるはずだ。

 俺はモッキュを肩に乗せ、森の探索に出た。

 森を歩きながら、前世のうろ覚えの知識を必死で思い出す。

「大豆と麹菌と塩で作る、だったか……? 塩は錬金術で海水から作るとして……問題は麹菌だ」

 見たこともない菌を、この森から見つけ出すのは不可能に近い。

「いや、待てよ」

 そこで俺は閃いた。

「錬金術なら、概念からそれっぽい菌を錬成できるか?」

 考えてみれば、俺は生命の創造さえやってのけたんだ。

「菌くらい、どうにかなる……か?」

 手のひらに魔力を集中させた。

 頭の中に『発酵を促し、旨味を生み出す都合のいい菌』を思い描く。

 ヴ……ンッ。

 魔力が形を成し、麹菌(的なもの)が生み出される――。

 と、そこで上手く形成されず、魔力が霧散してしまった。

「あれ? だめか」

 錬成によって生まれるものは、術者の『想像力』に大きく左右される。

 様々なものを作りだせる反面、素材なしに一から作る場合、どうしても『正確性』や『再現度』といったものに欠けてしまう。

 麹菌なんて、どんな形をしているのかも知らない。

 俺の想像力だけで正確な形を思い描くのは難しい、ということだろうか。

 やっぱり――思い描いたものをより正確に造りたいなら『素材』が必須ということだな。

「うーん、現物を探すしかないのか……」
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