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16 主なき地
しおりを挟むそれから一週間、ミルは俺に多くの知識を与えてくれた。
だが、俺はミルの滞在が長引くにつれ、彼女の真意がどこにあるのか気になり始めた。
俺が疑問に思っていると、ミルは真剣な顔で俺を見つめた。
「ナッシュよ……お主がエンシェントドラゴンを倒したという話は、本当なのじゃな?」
俺はうなずいた。
「本当だ。あれは俺が作った【超魔導爆弾】で倒した」
「そうか……」
ミルは悲しそうな顔でうつむいた。
「お主のその力は、あまりにも危険じゃ」
「……俺は【超魔導爆弾】で誰かを傷つけるつもりはないよ」
「お主自身はそうじゃろう」
ミルが俺を見つめる。
「だが――王国はお主のその力を欲しがるはず。もしお主が生きていると知れば、な。そして、ふたたび道具として利用しようとするじゃろう」
「っ……!」
ミルの言葉に俺は絶句した。
「それは……」
意図的に考えないようにしていたことだ。
確かに、王国は俺の力をよく知っている。
エンシェントドラゴンを撃破するほどの力を持つ兵器を開発した俺を――奴らが放っておくわけがない。
「わらわは、お主の力を心配しておる。じゃが……お主の進むべき道は、お主自身が決めることじゃ」
ミルはそう言って、俺の背中に手を置いた。
「俺は――俺の力を平和に、穏やかに暮らすために使いたい」
「わらわに協力できることはする。ただ、王国の連中に見つからんよう心がけることだ」
「……ああ、分かった」
城の周りには、広大な森が広がっている。
俺は今日も、城の改修作業に没頭していた。
ミルの助言を受けて、錬金術で新しい設備を作り出す。
自由なスローライフの日々を、俺は心底楽しんでいた。
だけど――その平穏な日々は、突然の来訪者によって破られた。
「おい、あれを見ろ!」
「こんな辺境に、まさか城があるなんて……!」
声と共に、森の中から二つの人影が現れるのが見えた。
一人は剣を背負った男で、もう一人はローブを着た女だ。
二人とも冒険者ギルドのペンダントを下げている。
「誰だ、あいつらは……」
俺は警戒した。
彼らは数十メートル先からこっちに歩いてくるところだ。
この城を見つけられたのは予想外だった。
――お主の存在を王国に知られるな。
この間のミルの言葉が脳裏によみがえる。
と、
「俺たちは冒険者ギルドの者だ。別に怪しい者じゃない」
「あなた、もしかして、この城の主?」
二人は俺に話しかけてきた。
彼らの顔には敵意や悪意は感じられず、好奇心が強く出ていた。
警戒は解かずに、俺は彼らに歩み寄る。
「ああ、俺がこの城の主だ。どうした?」
男が驚きに目を見開く。
「まさか、本当に人が住んでいるなんて……」
男の冒険者が驚いた顔をしている。
「俺たちはこの森の調査をしていたんだ。そしたら、遠くに城が見えて……」
「そう、それで興味本位で来てみたの。まさか、本当に誰かいるとは思わなくて」
女の冒険者も同じく驚いている。
「俺はナッシュ。ただの放浪の魔術師だ。この場所が気に入って、ここに住み着いたんだ」
さすがに王国を追われたことを話すわけにはいかないので、当たり障りのない範囲で説明する。
「放浪の魔術師が、こんな城を……?」
「すごいわ……。あなたは、相当な魔力を持っているのね」
二人の表情が驚きから簡単に変わる。
「少し変わった錬金術が使えるだけさ」
俺は曖昧に誤魔化しておいた。
「ただ、誰にも邪魔されない場所が欲しかったんだ。自分の好きなように、自由に生きたくて」
と、城を作った理由も簡単に説明しておく。
「わかるよ」
男が微笑んだ。
「俺たちも冒険者として自由に生きている。けど、この仕事にもやっぱりしがらみがあるからな」
「案外、自由じゃないのよね」
女もうなずく。
「この辺りには、他に誰もいないのかしら?」
女がたずねると俺は首を振った。
「ああ。俺一人だ。少し前までは誰もいなかった」
「じゃあ、今はあんたが主だな」
男が言った。
「えっ?」
「この土地は誰の土地でもない、『主なき地』だからな」
「主なき……地?」
俺の問いに男がうなずいた。
「ああ。この広大な土地は、どこの国にも属していない『主なき地』と呼ばれている。ここに建物を建てれば、その土地の所有権を主張できるんだ」
「えっ、そうなの?」
女も驚いた顔だ。
男はうなずき、
「確かこの周辺は法でそう制定されているはず……それを知って城を建てたんじゃないのか?」
「いや、なんとなくなんだ……」
俺は苦笑しつつも、驚きを隠せなかった。
『主なき地』。
そして、土地の所有権。
俺は流れで行動しただけだったけど、結果的にこの場所に安住の地を見つけることができたのかもしれない。
俺の心に、新しい希望が芽生えた。
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