冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ

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第1章 呪われた村

23 俺の進む道

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 俺は懐かしい面子を見つめた。

 精悍な顔立ちをした二十代の青年──戦士バリオス。
 飄々とした印象の三十絡みの男──魔法使いシーガー。
 派手な美貌に肉感的な体つきをした女──弓術士ジュリア。
 小柄な体格の中年男──精霊使いテレンス。

 かつて俺が所属したパーティだ。

「し、しばらくだな、カイル」

 バリオスが俺から目を逸らし気味に挨拶した。

「……なんの用だ?」

 俺の方は表情が硬くなってしまう。

「いや、旧交を温めるってやつさ。ちょっと前にAランク冒険者ジェイムズのパーティがこの村で強い冒険者に助けられた、って王都で噂になって」
「そうそう、それが俺たちの仲間だったカイルだって話だったから」
「聞いたわよ。SSSランクのモンスターを倒したんだって?」
「すごいじゃないか、カイルくん」

 シーガーとジュリア、テレンスも愛想笑いを浮かべながら、俺に語りかける。
 みんなして、どうしたんだ?

「最近、クエストで失敗続きなんだよ。新しく入った仲間も、すぐに辞めちゃったし……」

 バリオスが頭をかく。

「で、もしよかったら……戻ってきてくれないか、カイル?」
「えっ?」

 突然の勧誘に、俺は驚いた。

「お前って本当は強かったんだろ? 俺たちと一緒にいたときに、どうしてその力を出してくれなかったんだ? 人が悪いぜ、まったく」

 バリオスはへらへらと笑いながらたずねる。

「とにかく、何年も一緒にやって来た仲間だろ? ちょっと、その……すれ違いがあってケンカしちまったけど、また仲直りしたいんだよ」

 都合のいいときだけ『仲間』か。
 嫌な気分が込み上げる。

「前はあんなこと言ったけど、いなくなって分かったんだ。やっぱり俺たちは大事な仲間だったんだって」
「そ、そうそう、ずっと後悔してたよ」
「あたしも、もう一度あなたと一緒にパーティを組みたいって、ずっと思ってた」
「うむ、わしもわしも」

 追従するシーガーとジュリア、テレンス。

「……悪いけど、俺はもう冒険者はやってないんだ。今はこの村のことで色々と働いていて」

 スキルのことは一応伏せて、俺はそう説明した。

「おいおい、俺たちの誘いを断るのか? 仲間じゃないのかよ!」

 今度は逆ギレときた。

「俺には俺のやるべきことがある」

 わずかに顔をしかめたバリオスに、俺は言った。

「やりたいこともある。だから仲間が欲しいなら、他を当たってくれ」

 あいつらに追放されたとはいえ、やっぱり数年来の仲間だったことは事実で……複雑な思いがある。
 怒りや憎しみだけで接する、というのは難しい。

 ただ──今の俺にとって大切だといえるのは、この村の生活だ。
 だから、彼らの元へは戻れない。

「……そ、そうか。残念だ」

 バリオスは頭をかいた。

「悪かったな、カイル。つい声を荒げちまって……許してくれ。俺たちはこの近隣でクエストがあるから、それをこなしてくるよ。じゃあな」

 言って、彼らは去っていった──。

    ※

 そこには、どこまでも闇が広がっていた。
 いっさいの光が差さない、無明の空間。

煉獄れんごく騎士きしが死んだ」

 巨大な影がうごめいた。
 周囲がざわめく。

「邪神様の最上位配下を倒す者が、人間どもの中にいるとは……?」
「噂に聞くSSSランク──勇者級とやらか」
「煉獄騎士は確かに強いが、最上位配下は他にもいる。うろたえる必要はない」
「だが人間どもに侮れぬ力があることも事実……」

 おびえる者、警戒する者、闘志を猛らせる者。

 反応は様々だ。
 彼らを見据え、影は──世界の破壊者である『邪神』は静かに告げた。

「消せ」

 周囲のざわめきが大きくなる。

「我が側近の一人を殺した者を。相手は煉獄騎士を倒すほどの猛者。勝つ自信があれば、だが」

 邪神は、あえて挑発的に言ってのけた。

 たちまち、場に緊迫した空気が満ちる。
 最上位の配下たちのプライドを刺激したのだろう。

「恐れながら──我らも同じ目に遭う、と? 我が主よ」

 闇の一角が揺らめいた。

 堕天使が。
 竜が。
 不定形の怪物が。
 巨大な眼球が。
 三面六臂の戦士が。

 邪神の軍団の中で、最強を誇る配下たちがいっせいにこちらを見ていた。

 いずれの者にも不安や恐怖は感じられない。

 あるのは、闘志。
 たとえ煉獄騎士が破れても、俺ならばその人間を倒してみせる──という絶対的な自信。

「それでこそ、我が配下の最上位に位置する者たちだ」

 彼らの頼もしさに、邪神は深く満足した。

「ですが、結界の揺らぎは不規則です……」
「我ら最上位配下が出撃できるほどの『穴』が開くのは、いつになるか……」
「出撃したいのはやまやまなのですが……」

 と、悔しげな配下たち。

 邪神とその眷属は、かつての神との戦いに敗れ、封印空間に閉じこめられていた。
 普段は外界と行き来がまったくできない。

 天界に攻め入ることはもちろん、人間界に行くことすら不可能だった。
 ただ、封印は二、三日に一度の周期で小さな綻びを生じるため、そこを通れば人間界へ行くことはできる。

 綻びはしばらくすると閉じてしまうことなどもあり、あまり長時間、人間の世界にとどまることはできないが。

 また、人間界のとある村は神の封印の補助装置としての役割を果たしているらしい。
 それを破壊すれば、封印は弱まるはずだ。

 だから邪神の眷属は封印が緩むたびに、その村を滅ぼそうとするのだが──今のところ上手くいっていなかった。

 何しろ人間どもはすぐに逃げてしまうし、数も多い。
 封印の効力は『村の中に一定数の人間がいること』で発揮される。
 手下たちが人間を多少殺したところで、近隣から『補充』の人員が村に住みつき、すぐに封印の補助装置を維持してしまうのだった。

 いずれ必ず──この封印から抜け出してみせる。
 邪神はそう目論んでいるが、未だ果たせずといったところだった。

 とはいえ、封印のことよりも、今はその不遜な人間の対処が先だ。

「二週間だ」

 邪神は告げた。

「私が力を集中すれば、一時的に穴を広げることができる。多大な消耗を招くゆえ、乱発はできぬが……今は、その人間を狩ることこそ急務」

 ゆっくりと立ち上がる。

 邪神は、全長数百メートルはあろうかという巨体だった。

 その全身から赤紫色の稲妻が弾ける。
 上空高くにまでほとばしった稲妻が、そこで一際激しく輝いた。
 バチッ、バチッ、と神が作った結界と、邪神の力が衝突する。

 じわり、じわり、と闇が光を侵食し、穴を少しずつ広げていく。

「誰か一人くらいなら通ることができよう。二週間後に──お前たちの誰かが行ってくるのだ。そして、その者の首を持ち帰れ」

 邪神は冷徹に告げた。

「しかる後、結界の要たる『村』を破壊せよ」

    ※

 さらに二週間が経った。

 善行を積み重ねてのポイント入手やちょくちょく現れるモンスターの撃退でポイントが貯まっていき、村の防衛に『イージスガード』と『マナバリアシステム』を追加することができた。

『イージスガード』を作った際、前に説明で見た『EXポイント』というのが手に入った。

 けど、これは何に使うのか分からない。
 念じても説明が出てこなかった。
 ……まあ、分からないものはしょうがない。

 ともあれ、村の防衛には東西南北の魔導砲塔Ⅲに、二重の障壁が加わった。
 さらに警報装置も設置し、万が一この防衛網が突破されたときは村中に警報が鳴るようにしておいた。

 同時に、そんな超強力モンスターが現れたときのために、村人のための避難用シェルターも作った。

 ……かなりポイントを消費したけどな。

 俺が初めて村に来たころに比べ、格段に安全になったはずだ──。
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