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第2章 守りたい場所
9 SSSランク冒険者たち
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サーシャはジュデッカ村での戦いについて報告するために、王都のギルドまで戻った。
「戻ったか、竜騎士サーシャ」
前方から三つの人影が近づいてくる。
いずれも、周囲の空気がぴりぴりと帯電するほどの強烈なプレッシャーを放っていた。
並の冒険者ではない。
いや、並どころか──。
「ひさしぶりだね、三人とも」
サーシャはにっこりと笑った。
彼らはいずれも数年来の戦友だ。そして自分と同格であり、ギルド最強と謳われるSSSランクの冒険者たちでもある。
「ほう、邪神の最上位配下と渡り合うとは……辺境の村にそんな猛者がいるのか」
全身を漆黒のフルプレートメイルで覆った騎士がうなった。
「いずれ手合わせしたいものだな。SSSランクモンスターすら一撃で屠るこの俺の剣と、そいつの武具──果たしてどちらが勝つか、くくく」
がつん、と胸の前で両拳をぶつけ、笑う。
「カイル……? 聞いたことがない名前ですね」
黄金の装身具と紫のローブで身を包んだ妙齢の魔法使い美女がつぶやいた。
「……年齢はいくつかしら? イケメンだった? っていうか、イケメンだった?」
と、サーシャの耳元にささやきかけてくる。
「私の保有データによると、Eランク冒険者のようですね。冒険者歴は5年2カ月と12日。Cランク冒険者バリオスのパーティに所属」
すらすらと説明したのは、秀麗な顔立ちの少年僧侶だ。
「──いえ、すでにパーティから除名されていますね。達成クエストは821。元のパーティでのクエスト成功率は57パーセント。平凡……というか、落ちこぼれの成績ですね」
眼鏡のブリッジを指先でクイッと押し上げながら、つぶやく。
「会ってみたくなったぞ。ジュデッカ村というところにいるんだな?」
「SSSランクすら超える堕天使を調伏できるなんて。素晴らしい魔法の奥義を持っているはず……あたしも会ってみたいですね。イケメンならなおよし」
「実に興味深いです……私のデータを総合すると、彼は少なくともSSランク。いや、おそらくはSSSランクに匹敵するはず。少なくとも、堕天使戦に勝利したのは、マグレなどではない──」
彼らは、最底辺ともいえるカイルに注視しているようだった。
いや、彼らだけではない。
サーシャ自身も、興味を引かれているのは同じだ。
カイルの驚くべき能力を目の当たりにしたし、おそらくまだ彼は己の底を見せていない。
そんな強者がノエルの元にいてくれるのは安心だった。
なんといっても、ジュデッカといえば『呪われた村』。
邪神の手下が定期的に襲ってくるという危険中の危険地帯である。
サーシャも、カイルの能力を目にしていなければ、一分一秒たりとも村を離れることはなかっただろう。
「興味があるなら、いつでも紹介するね」
サーシャがにっこり笑った。
彼らはいずれも清く正しい心根を持っている。
そんな強さと人格を併せ持った者が、ノエルの元に一人でも増えれば──。
きっと、あの方も安心して過ごせるだろう。
「いずれ……な」
彼らは楽しげな顔で去っていった。
黒騎士は、巨竜退治に。
魔法使いは、高レベル魔法書の解読要請に。
僧侶は、太古のダンジョン探索に。
いずれも超難度のクエストを抱えているのだ。
「うん、私もクエストがあるから行くね」
そしてサーシャも、また。
※
「そういえば、前々から疑問だったんだけど」
俺はノエルやクラウディアと話していた。
「他の国はここを守るために何かしてくれないのか? この村が滅んだら、封印が弱まるんだよな? もし邪神軍団が世界中に現れたら、全人類規模の問題になるだろうに」
「まあ、そうなのだが……」
クラウディアが顔を曇らせた。
「他の国はここを守るための兵を送ったりはしない」
「邪神の手下は並のモンスターをはるかに超える強さですから。兵士を常駐させても、いたずらに損耗させるだけ──と考えているようです」
と、ノエル。
「ジュデッカの近隣には六つの都市があって、もしこの村で大勢の人死にが出たときは、すぐに新たな住民がこちらに来るようになってるんです。要は『補充要員』ですね」
「……なんだよ、それ」
人を、封印システムを維持するための道具みたいに。
「まあ、世界平和に貢献しているわけですし。そう考えると、すごいことですよ。ねっ」
「ノエル……」
どうして彼女たちはこんなに明るく笑っていられるんだろう。
表面上は笑顔なだけで、本当は辛い思いをしているんだろうか。
だとしたら──。
俺は、彼女たちが心から笑えるような場所を作りたい。
俺のスキルなら、それができるかもしれない。
少なくとも、その土台作りくらいは。
「カイル様?」
「がんばろうな」
俺はにっこり微笑んだ。
「呪われた村じゃなく、ここが楽園だと言われるような──そんな場所になったらいいな」
「楽園ですか……素敵です!」
ノエルの顔がパッと輝く。
「案外、ジュデッカ村が観光名所になるかもしれないな」
クラウディアが真面目な顔で言った。
「邪神に会える村、みたいな」
「いや、さすがに邪神には会えないだろう」
ツッコむ俺。
「そもそも、邪神や手下にわざわざ会いたい人がいるとも思えないし」
「そんなことないですっ。邪神に会える里、いいと思いますっ」
ノエルが力説した。
「世の中にはさまざまなマニアがいるのです。きっと邪神マニアもいます。絶対」
「そ、そうかな……?」
「そういえば、王都で邪神軍完全名鑑という本が高値で売り買いされていた」
「邪神軍完全名鑑……?」
「ジュデッカにいれば、邪神の手下をたくさん見れますし、元邪神軍のアグエルさんもいますし。色々と情報を集めて、あたしたちでオリジナルの図鑑を作って売り出すというのはどうでしょう」
「採用だ、ノエル」
「わーい!」
クラウディアの言葉にはしゃぐノエル。
なんだか話が妙な方向に行っていた。
「……まあ、楽しそうだからいいか」
楽しいのが一番だよな、うん。
そして──三カ月の時が過ぎた。
「戻ったか、竜騎士サーシャ」
前方から三つの人影が近づいてくる。
いずれも、周囲の空気がぴりぴりと帯電するほどの強烈なプレッシャーを放っていた。
並の冒険者ではない。
いや、並どころか──。
「ひさしぶりだね、三人とも」
サーシャはにっこりと笑った。
彼らはいずれも数年来の戦友だ。そして自分と同格であり、ギルド最強と謳われるSSSランクの冒険者たちでもある。
「ほう、邪神の最上位配下と渡り合うとは……辺境の村にそんな猛者がいるのか」
全身を漆黒のフルプレートメイルで覆った騎士がうなった。
「いずれ手合わせしたいものだな。SSSランクモンスターすら一撃で屠るこの俺の剣と、そいつの武具──果たしてどちらが勝つか、くくく」
がつん、と胸の前で両拳をぶつけ、笑う。
「カイル……? 聞いたことがない名前ですね」
黄金の装身具と紫のローブで身を包んだ妙齢の魔法使い美女がつぶやいた。
「……年齢はいくつかしら? イケメンだった? っていうか、イケメンだった?」
と、サーシャの耳元にささやきかけてくる。
「私の保有データによると、Eランク冒険者のようですね。冒険者歴は5年2カ月と12日。Cランク冒険者バリオスのパーティに所属」
すらすらと説明したのは、秀麗な顔立ちの少年僧侶だ。
「──いえ、すでにパーティから除名されていますね。達成クエストは821。元のパーティでのクエスト成功率は57パーセント。平凡……というか、落ちこぼれの成績ですね」
眼鏡のブリッジを指先でクイッと押し上げながら、つぶやく。
「会ってみたくなったぞ。ジュデッカ村というところにいるんだな?」
「SSSランクすら超える堕天使を調伏できるなんて。素晴らしい魔法の奥義を持っているはず……あたしも会ってみたいですね。イケメンならなおよし」
「実に興味深いです……私のデータを総合すると、彼は少なくともSSランク。いや、おそらくはSSSランクに匹敵するはず。少なくとも、堕天使戦に勝利したのは、マグレなどではない──」
彼らは、最底辺ともいえるカイルに注視しているようだった。
いや、彼らだけではない。
サーシャ自身も、興味を引かれているのは同じだ。
カイルの驚くべき能力を目の当たりにしたし、おそらくまだ彼は己の底を見せていない。
そんな強者がノエルの元にいてくれるのは安心だった。
なんといっても、ジュデッカといえば『呪われた村』。
邪神の手下が定期的に襲ってくるという危険中の危険地帯である。
サーシャも、カイルの能力を目にしていなければ、一分一秒たりとも村を離れることはなかっただろう。
「興味があるなら、いつでも紹介するね」
サーシャがにっこり笑った。
彼らはいずれも清く正しい心根を持っている。
そんな強さと人格を併せ持った者が、ノエルの元に一人でも増えれば──。
きっと、あの方も安心して過ごせるだろう。
「いずれ……な」
彼らは楽しげな顔で去っていった。
黒騎士は、巨竜退治に。
魔法使いは、高レベル魔法書の解読要請に。
僧侶は、太古のダンジョン探索に。
いずれも超難度のクエストを抱えているのだ。
「うん、私もクエストがあるから行くね」
そしてサーシャも、また。
※
「そういえば、前々から疑問だったんだけど」
俺はノエルやクラウディアと話していた。
「他の国はここを守るために何かしてくれないのか? この村が滅んだら、封印が弱まるんだよな? もし邪神軍団が世界中に現れたら、全人類規模の問題になるだろうに」
「まあ、そうなのだが……」
クラウディアが顔を曇らせた。
「他の国はここを守るための兵を送ったりはしない」
「邪神の手下は並のモンスターをはるかに超える強さですから。兵士を常駐させても、いたずらに損耗させるだけ──と考えているようです」
と、ノエル。
「ジュデッカの近隣には六つの都市があって、もしこの村で大勢の人死にが出たときは、すぐに新たな住民がこちらに来るようになってるんです。要は『補充要員』ですね」
「……なんだよ、それ」
人を、封印システムを維持するための道具みたいに。
「まあ、世界平和に貢献しているわけですし。そう考えると、すごいことですよ。ねっ」
「ノエル……」
どうして彼女たちはこんなに明るく笑っていられるんだろう。
表面上は笑顔なだけで、本当は辛い思いをしているんだろうか。
だとしたら──。
俺は、彼女たちが心から笑えるような場所を作りたい。
俺のスキルなら、それができるかもしれない。
少なくとも、その土台作りくらいは。
「カイル様?」
「がんばろうな」
俺はにっこり微笑んだ。
「呪われた村じゃなく、ここが楽園だと言われるような──そんな場所になったらいいな」
「楽園ですか……素敵です!」
ノエルの顔がパッと輝く。
「案外、ジュデッカ村が観光名所になるかもしれないな」
クラウディアが真面目な顔で言った。
「邪神に会える村、みたいな」
「いや、さすがに邪神には会えないだろう」
ツッコむ俺。
「そもそも、邪神や手下にわざわざ会いたい人がいるとも思えないし」
「そんなことないですっ。邪神に会える里、いいと思いますっ」
ノエルが力説した。
「世の中にはさまざまなマニアがいるのです。きっと邪神マニアもいます。絶対」
「そ、そうかな……?」
「そういえば、王都で邪神軍完全名鑑という本が高値で売り買いされていた」
「邪神軍完全名鑑……?」
「ジュデッカにいれば、邪神の手下をたくさん見れますし、元邪神軍のアグエルさんもいますし。色々と情報を集めて、あたしたちでオリジナルの図鑑を作って売り出すというのはどうでしょう」
「採用だ、ノエル」
「わーい!」
クラウディアの言葉にはしゃぐノエル。
なんだか話が妙な方向に行っていた。
「……まあ、楽しそうだからいいか」
楽しいのが一番だよな、うん。
そして──三カ月の時が過ぎた。
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