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第1章 勇者の帰還

13 二度目の選択1

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 俺は各運動部の勧誘から逃れ、どうにか校舎裏の中庭にやって来た。

「あー、びっくりした。まさか俺が運動部から引っ張りだこになるなんてな」

 異世界に行って勇者になる前は、とても考えられないような展開だ。

「おつかれさまです、彼方くん」

 黒髪セミロングの可愛らしい女子生徒が、花壇の前にちょこんと座っていた。
 雫だ。

「大人気ですね」
「途中からは運動部同士でケンカ同然の争奪戦になってたからな。別に俺は部活に興味ないのに……」
「さっき見てましたよ、ホームラン」

 雫が笑顔で言った。

「すごかったです」
「ま、まあ、その、マグレだ」

 雫に言われると、どうも照れてしまう。

「お前は何してるんだ、ここで?」
「花を見て、ボーっとしてました。ここにいると落ち着くんです」

 色とりどりの花に、爽やかな風。
 中庭をじっくり見たことなんてなかったけど、確かに気持ちが落ち着くような気がする。

 雫と一緒にいるからだろうか。

「そういえば、雫って部活やってるのか?」
「実はオカルト研究部というのに所属してまして……」
「そんな部活あったんだ」

 初めて聞いた。

「でも、二年生になってからは、ほとんど幽霊部員状態です。いじめられるようになって、顔を出さなくなって……その、部員にとばっちりがあると嫌だな、って」
「……そっか」
「ただ、彼方くんがいじめを解決してくれたので、行ってみるつもりです。今日は部の活動日じゃないので、明日にでも」
「そっか」

 よかった、雫にもそういう場所があるんだな。

「彼方くんには本当に感謝しています。私、このまま卒業まで部活に顔を出せないと思っていましたから……」

 雫は深々と頭を下げた。

「いいよ、あらたまって」

 照れくさくて、つい視線を逸らしてしまった。
 雫はふふっと微笑み、

「よかったら彼方くんも来ますか? 部員は私の他に二人だけなんですけど、楽しいですよ」
「へえ、いいかもな。行ってみるか」
「やったー! じゃあ、明日の放課後に待ち合わせですねっ」

 雫は嬉しそうに言った。
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