不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第1章 勇者の帰還

14 二度目の選択2

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 その日の夜。

「カナタ……聞こえますか、カナタ……?」

 気が付くと、俺は真っ白な空間の中に浮いていた。

「ここは──」

 覚えがある。

 そう、かつて異世界に召喚されたときにこんな場所を通ったっけ。

 目の前には、すらりとした女性がたたずんでいた。
 薄桃色の髪を長く伸ばした、白い衣の美女。

 俺を召喚し、勇者としての力を与えてくれた女神さまだった。

「魔王が復活しようとしています」
「ん?」

 それって──俺が以前に召喚されたときと同じパターンだな。

「あなたは勇者として召喚され、魔王と戦う運命に──」
「お断りします」

 俺は即答した。

「せっかく生まれ変わって、また異世界のために命がけで戦ったあげくに、その異世界の連中に追い立てられるなんてごめんだ。俺は、絶対に嫌です」
「……そう言うと思いました」

 女神さまがうつむいた。

「悪いけど、あいつらの世界はあいつらが自力でなんとかすればいい。俺はもうかかわりません」
「分かりました。あなたを無理に誘ったり、召喚することはいたしません」

 うなずく女神さま。

「……女神さまは、それでいいんですか?」
「私は彼らの行いを見てきましたから。一度目の召喚のときは、もしかしたらカナタを受け入れてくれるのでは……と期待しましたが、それは裏切られました」

 女神さまが悲しそうに告げた。

「彼らにとって異世界人であるカナタは、たとえ勇者であっても同胞とは認められない存在……その認識は、残念ながら変わらなかったようです」

 俺の脳裏に、彼らから糾弾されたときの光景がよみがえる。

 魔王との戦いでは俺を勇者としてもてはやし。
 魔王が倒れたとたん、俺を異分子として追い立てた。
 自分たちの地位をおびやかす者として、迫害した。

 彼らの、悪鬼のような顔を。

「彼らに関しては、これ以上期待することはありません。かつて自分たちの世界を救ってくれた勇者を、自分たちの権勢のためにないがしろにした──その報いを受けるべきだと思います」

 と、女神さま。

「カナタ、新たな人生はどうですか?」
「とりあえず、楽しいです。友だちもできたし」
「それはよかったです。あなたの一度目の人生に関しては、詫びても詫びきれません。ですが──二度目の人生に幸があるのなら、私としてもこれほど嬉しいことはありません」
「もともと女神さまにはなんの恨みもないですから。俺を生き返らせてくれて、感謝しています」
「神としての、せめてもの償いです」

 女神さまが微笑んだ。

「では、私はそろそろ行きますね。これでもう会う機会はないかもしれません。どうか、よき人生を──カナタ」
「ありがとうございます、女神さま」

 そして──俺は、目を覚ました。
 アパートにある俺の自室だ。

 夢だったのか、あるいは──。

「まあ、どっちでもいいか」

 俺はもうあの世界とは縁を切った。

 これからは、この世界で生きていくんだ。
 友だちもできたし、今度こそ人生を楽しまなきゃな。
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