19 / 135
第1章 勇者の帰還
19 レベルアップへの道1
しおりを挟む
俺の一撃が、コンビニ強盗をぶっ飛ばした。
「ぐ……あ……」
うめいたまま、男は立ち上がれない。
完全KOだ。
──スキル【気配遮断】解除。
俺は姿を現し、倒れた男を見下ろした。
「お、お前、どこから出てきたんだ……!?」
ようやく俺の存在を認識したコンビに強盗が、驚いたようにうめく。
と、
「う……ぐ……」
突然、男の体から黒いモヤのようなものが出てきた。
「これは──」
俺は驚きの声を上げる。
まさか、と思った。
「……いや、間違いない」
首筋がチリチリすするような感覚。
腹の底がぞわりとするような悪寒。
このモヤは自然現象なんかじゃない。
もう一度目を凝らす俺。
まだ黒いモヤはかすかに残っていたが、少しずつ薄れ、やがて消えた。
「気のせい、なんてことはないよな……」
今、感じたのは『魔力』の気配だ。
おそらく、あれは──『魔法使い』ジョブのスキル【傀儡】。
対象の精神に作用し、その者を自分の意のままに操るスキルである。
だとしたら、コンビニ強盗は誰かに操られていた、ってことか?
どうして現代日本でそんな現象が──。
ほどなくして警察が来て、男は逮捕された。
俺がコンビニ強盗をKOしたのを見て、誰かが通報してくれたらしい。
「大丈夫でしたか、彼方くん」
雫が心配そうに声をかけてきた。
「ああ、問題ない」
俺は微笑みを返しておく。
さっきの【傀儡】らしき現象は気になるところだけど──。
「あっ、彼方くん、怪我してます!」
雫が悲鳴のような声を上げた。
「えっ?」
言われてみれば、指先が少し切れていた。
強盗のナイフを取り上げたときに切れたらしい。
勇者時代の俺なら考えられないミスだけど、今の俺はレベル一桁に戻ってしまってるからな。
「とりあえず応急手当てを……」
雫が鞄からバンソウコウを取り出し、俺の指に巻いてくれた。
「後でちゃんと消毒してくださいね」
「ありがとう。お前、バンソウコウなんて持ち歩いてるのか」
「ガーゼや包帯類、鎮痛薬なんかも一式持ってますよ」
微笑む雫。
こいつの性格から考えると、いざというときに自分だけじゃなく他人を手当てするためだろう、たぶん。
なんだか雫らしいな。
「ぐ……あ……」
うめいたまま、男は立ち上がれない。
完全KOだ。
──スキル【気配遮断】解除。
俺は姿を現し、倒れた男を見下ろした。
「お、お前、どこから出てきたんだ……!?」
ようやく俺の存在を認識したコンビに強盗が、驚いたようにうめく。
と、
「う……ぐ……」
突然、男の体から黒いモヤのようなものが出てきた。
「これは──」
俺は驚きの声を上げる。
まさか、と思った。
「……いや、間違いない」
首筋がチリチリすするような感覚。
腹の底がぞわりとするような悪寒。
このモヤは自然現象なんかじゃない。
もう一度目を凝らす俺。
まだ黒いモヤはかすかに残っていたが、少しずつ薄れ、やがて消えた。
「気のせい、なんてことはないよな……」
今、感じたのは『魔力』の気配だ。
おそらく、あれは──『魔法使い』ジョブのスキル【傀儡】。
対象の精神に作用し、その者を自分の意のままに操るスキルである。
だとしたら、コンビニ強盗は誰かに操られていた、ってことか?
どうして現代日本でそんな現象が──。
ほどなくして警察が来て、男は逮捕された。
俺がコンビニ強盗をKOしたのを見て、誰かが通報してくれたらしい。
「大丈夫でしたか、彼方くん」
雫が心配そうに声をかけてきた。
「ああ、問題ない」
俺は微笑みを返しておく。
さっきの【傀儡】らしき現象は気になるところだけど──。
「あっ、彼方くん、怪我してます!」
雫が悲鳴のような声を上げた。
「えっ?」
言われてみれば、指先が少し切れていた。
強盗のナイフを取り上げたときに切れたらしい。
勇者時代の俺なら考えられないミスだけど、今の俺はレベル一桁に戻ってしまってるからな。
「とりあえず応急手当てを……」
雫が鞄からバンソウコウを取り出し、俺の指に巻いてくれた。
「後でちゃんと消毒してくださいね」
「ありがとう。お前、バンソウコウなんて持ち歩いてるのか」
「ガーゼや包帯類、鎮痛薬なんかも一式持ってますよ」
微笑む雫。
こいつの性格から考えると、いざというときに自分だけじゃなく他人を手当てするためだろう、たぶん。
なんだか雫らしいな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,145
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる