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第2章 勇者の選択

24 迫る戦い1

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「妙な噂?」
「ハンターです」

 俺の問いに答える彼。

「ハンター?」
「とんでもなく強くて好戦的な奴らしいんです。なんでも強い者を片っ端から狩っている奴がいるとか」
「あっという間に現れて、全員ぶちのめして去っていく黒ずくめの人物……顔も素性もわからないらしいっす」

 彼らは口々に言って、震え上がった。

「通り魔みたいな?」
「近いですね。最初は俺たちを狙ってきたんですけど、もう暴走とか暴力はやってない、って言ったら『強い者がいる場所を教えろ』って」
「で、今度は武道全般を狙うようになったようです」

 そいつは、県内の空手や柔道、剣道、ボクシングなど様々な道場、ジムに現れては、一番強い奴を指名して倒しているそうだ。
 まるで道場破りだった。

 しかも、かなり徹底的に叩きのめすらしく、県内の格闘関係者が震えあがっているという。

「まさか……ベルクか」

 目的は分からないけど、明らかにやりすぎだ。

 止めないと、な。
 たぶん、それができるのは俺だけだろう。



 五百十五……五百十六……!

 俺は無人の公園で一心に素振りをする。
 スキル【武器格闘】を発動させながら。

 スキルレベルを上げるには、経験値ポイントを振り分ける以外に、スキル自体を使って『習熟度』というポイントを上げることでも可能だ。
 俺が今やっているのは後者である。

 ただ……俺の固有スキル【経験値効率・極大】はスキルの習熟度まで効率極大になるわけじゃない。
 素振り程度じゃなかなかレベルが上がらない。

「やっぱり経験値を稼いだ方が早いか」

 よし、明日になったらまた剣道部に行ってみよう。

 月子の道場は徒手空拳だろうし、とりあえず剣道部でスキルを使いつつ、経験値も稼いでいくのが一番手っ取り早いだろう。



 翌朝、一階のところで雫に会ったので、今日はオカ研じゃなく剣道部に行くことを伝えた。

「えっ、今日も剣道部に行くんですか?」

 雫は驚いたような顔でたずねる。

「もしかして……剣道を本格的に始めるんでしょうか?」
「ちょっと興味があるだけだよ。俺はあくまでもオカ研部員だから」
「……よかった」

 雫が心底ほっとしたような顔になった。

「あ、でも、彼方くんが本当にやりたいことを別に見つけたのなら、もちろん応援しますっ。もしもオカ研をやめてしまうのなら寂しいですけど」
「剣道にも興味はあるけど、オカ研はやめないよ」

 俺はにっこりと言った。

「じ、じゃあ、これからも一緒ですねっ」

 雫が嬉しそうに笑った。

「よかったです……!」
「あいかわらず熱々」

 背後で声が響いた。
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