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第2章 勇者の選択
28 決別1
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「帰れですって? 冗談言わないで。あたしは退かないわ! 絶対に!」
フィーラが叫んだ。
まあ、これくらいで逃げ帰るような女じゃないことは知っているが……。
それでも『殺す』ではなく『諦めて帰れ』という言葉が、思わず口をついて出たのは、なぜなんだろう。
俺の中に、彼女を仲間だと思う気持ちがわずかに残っていたのか。
まだ、躊躇があるのか。
まだ、未練があるのか。
仲間だと思っていたのは、俺だけだったっていうのに。
あいつらは──魔王退治が終わったとたん、態度を変えたっていうのに。
俺を、殺そうとしたっていうのに……。
「魔王を倒すという目的のために、あたしはお前を殺す。どんな手段を使ってでも!」
「だったら──ここで終わらせる」
俺は殺意を込めて、フィーラに告げた。
──さあ、決別のときだ。
戦いが、再開された。
俺たちは五十メートル程度の距離を取りつつ、つかず離れず飛び道具で攻撃しあう。
──久しぶりだ、この感じ。
殺意を持った攻撃と向き合い、俺もまた殺意をもって相手と向かい合う。
極限の、命のやり取り。
俺はフィーラの魔法をことごとく避け、彼女もまた俺の投石を障壁で防ぐ
撃ち合いじゃ、らちが明かない。
俺は何十度目かの投石を放った。
「……?」
怪訝そうな顔をするフィーラ。
石の軌道は、彼女には向かっていない。
俺と彼女の中間地点の地面を直撃する。
大きめの石を全力で放ったため、盛大に土煙が上がった。
「目くらまし──こんな単純な手で!?」
フィーラがうめく。
一瞬でも意識を逸らせば──俺の勝ちだ。
どんっ!
全力で地を蹴った。
一瞬にしてフィーラとの間合いを詰める。
「聖騎士ベルクや武闘家ナダレと同等か、それ以上の運動能力……!」
うめきながら飛び下がるフィーラ。
「終わらせる──」
俺はさらに加速し、渾身のストレートを繰り出した。
「ひっ……」
フィーラは初めておびえたような顔を見せ、
「【マジックバリア】!」
悲鳴のような叫びとともに、魔力障壁を生み出した。
構わず拳を叩きつける。
ガシャン、とガラスが割れるような音とともに、障壁が粉々に砕け散った。
そのまま彼女のみぞおちに拳を打ちこむ。
「は……がぁ……っ!」
苦鳴とともに、十メートルほど吹っ飛ぶフィーラ。
フィーラが叫んだ。
まあ、これくらいで逃げ帰るような女じゃないことは知っているが……。
それでも『殺す』ではなく『諦めて帰れ』という言葉が、思わず口をついて出たのは、なぜなんだろう。
俺の中に、彼女を仲間だと思う気持ちがわずかに残っていたのか。
まだ、躊躇があるのか。
まだ、未練があるのか。
仲間だと思っていたのは、俺だけだったっていうのに。
あいつらは──魔王退治が終わったとたん、態度を変えたっていうのに。
俺を、殺そうとしたっていうのに……。
「魔王を倒すという目的のために、あたしはお前を殺す。どんな手段を使ってでも!」
「だったら──ここで終わらせる」
俺は殺意を込めて、フィーラに告げた。
──さあ、決別のときだ。
戦いが、再開された。
俺たちは五十メートル程度の距離を取りつつ、つかず離れず飛び道具で攻撃しあう。
──久しぶりだ、この感じ。
殺意を持った攻撃と向き合い、俺もまた殺意をもって相手と向かい合う。
極限の、命のやり取り。
俺はフィーラの魔法をことごとく避け、彼女もまた俺の投石を障壁で防ぐ
撃ち合いじゃ、らちが明かない。
俺は何十度目かの投石を放った。
「……?」
怪訝そうな顔をするフィーラ。
石の軌道は、彼女には向かっていない。
俺と彼女の中間地点の地面を直撃する。
大きめの石を全力で放ったため、盛大に土煙が上がった。
「目くらまし──こんな単純な手で!?」
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どんっ!
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苦鳴とともに、十メートルほど吹っ飛ぶフィーラ。
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