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第3章 勇者の仲間

6 強化2

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 そして、もう一つ──他にやらなきゃいけないことがある。

 フィーラは倒したが、まだベルクがいる。
 俺を殺さないかぎり、新たな勇者の素質者が現れないなら、奴も俺の命を狙ってくるかもしれない。

 それに──。

「他にも異世界から誰かが来るかもしれないな」

 ベルクやフィーラがこっちに来た以上、かつての仲間たちや他の連中が来ない保証はない。

 ──異世界からこの世界への移動は簡単にはできない。
 俺はかつて召喚されたときに、そう聞いていた。

 貴重な素材を大量に使い、さらに神々の力を借りた大がかりな儀式が必要なんだそうだ。
 そもそも簡単に行き来できるなら、俺は異世界で迫害されたときに、こっちの世界に帰ってきている。

 だから、異世界人がこっちに次から次に訪れる──という事態は考えにくい。

 だけど実際には、すでにベルクとフィーラの二人が来ている。
 他にも来ている者がいるかもしれない。

 だとすれば、そいつらに立ち向かうためにも、まずスキルを強化する必要があるだろう。
 少なくとも、ベルクに立ち向かえるだけの力は手に入れておきたい。

 奴に対抗できそうなスキルといえば、手持ちの中では【武器格闘】や【狙撃】だろうか。
 他にも【ジャンプ】や【破砕拳】なんかは使いどころがありそうだ。

 逆に【気配遮断】辺りは、騎士ジョブを持っているベルクの【気配察知】と相性が悪い。
 おそらく不意打ちには使えないだろう。

 俺は取得可能なスキルリストを引っ張り出し、候補の選定を始めた。
 自分自身の身を守るためにも、雫たちに危害が及ぶのを防ぐためにも。

 俺は、もっと強くなる──。



 翌朝、通学路で雫に会った。

「おはようございます、彼方くん」
「おはよう」
「……目の下にクマができてますよ。寝不足ですか」

 雫が心配そうな顔をする。

「ん、ちょっと……な」

 俺はあいまいに言葉を濁した。

 どのスキルを取得するか、どの系統を成長させていくか──なんてのを、スキルリストやスキルツリーを見ながら考えていたら、寝るのが夜の二時くらいになってしまったのだ。

「そういえば、昨日の事件、自殺だったそうです」
「えっ」

 スマホでニュースサイトをチェックする。

 フィーラの事件は自殺だ、と警察が発表したようだ。

「いやいや、自殺って……?」

 俺は呆然とつぶやく。

 どう考えても、自殺ではありえない死に方なんだが。

 どういうことだ──。
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