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第5章 勇者の試練
5 ふたたび扉へ
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ヴン……!
神の兵士──神操兵たちの仮面じみた顔に、赤い眼光が宿った。
「雫たちは絶対に守る」
その眼光を真っ向から受け止め、俺は剣を手に突進する。
目の前の彼女たちは、本物じゃない。
夜天が俺の記憶から作り出したかりそめの世界の住人。
幻みたいなものだ。
だけど、彼女たちと同じ姿をした存在が襲われようとしているのを、黙って見過ごすことなんてできなかった。
──そんな俺の気持ちの高ぶりさえも、夜天の試練の範疇なのか。
「ぎぎ……ぎ……排除、する……」
機械のように抑揚のない声で告げる神操兵たち。
奴らが持つ剣が、槍が、斧が、俺に殺到した。
夜天は『訓練』という言葉を使っていたが、神操兵たちの攻撃は鋭い。
気を抜けば、命を落とすレベルだ。
──集中を切らすな。
俺は自身に言い聞かせ、ひたすら夜天を振るった。
次々に迫る敵の得物を、聖剣を旋回させて弾き返す。
刀身から吹き出す黄金のオーラ──『聖なるエネルギー』が強烈な圧力を伴い、神操兵たちをたじろがせた。
奴らの体勢が崩れ、隊列が乱れたのを、俺は見逃さない。
雄叫びとともに突進した。
「おおおおおっ!」
正面の敵を斬る。
左右の敵を斬る。
飛びかかってくる敵を斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬り続けるほどに、全身の感覚が研ぎ澄まされていく。
そう、これだ。
魔王軍との戦いの旅路で──。
俺はこうやって、来る日も来る日も剣を振っていた。
異世界で戦っていたときの感覚が鮮やかによみがえってくる。
体が、心が、どんどん研ぎ澄まされていく。
「これで──最後だ!」
残り一体を斬り伏せ、俺は大きく息を吐き出した。
気がつけば、数十体の神操兵が残骸となって周囲に転がっていた。
ばちっ、ばちっ、とその体から火花が散っている。
見かけどおり、こいつらは機械製だったらしい。
「……すまなかったな。お前の大切なものを危機に陥らせるような光景を見せて」
聖剣から夜天の謝罪の言葉が響いた。
「試練なんだろ、これは。ま、しょうがないよ」
「──そう言ってもらえると助かる」
「正直、ちょっとムカつく気持ちもあるが」
「……すまん」
「いや、いいよ。で、結果はどうだった?」
俺は苦笑した。
「存分に見せてもらった。お前の心と魂。その深淵を」
と、夜天。
「いつもお前は、他者を守るために剣を振っていた──」
謳うように、告げる。
「魔王を倒した後、自分の身を守るためや怒り、憎しみのために振るう剣は不本意だったろう」
「……ああ」
「大切なものを守るために力を振るう──それはかつてのお前も、今のお前も変わらない。揺るがず、惑わず、お前の魂はそう在り続ける」
夜天が言った。
「その魂が変わらぬかぎり、私も変わらずお前に力を貸そう」
同時に、周囲の景色が切り替わった。
聖剣が安置されていた部屋の中だ。
「ここは──」
どうやら戻ってきたらしい。
「どうやら聖剣に認められたようですね」
女神様が歩いてきた。
うっすらと微笑みを浮かべている。
いつからいたのだろうか。
俺と神操兵たちの戦いに気付いていたんだろうか。
「時空の乱れも収まりました。これからあなたを元の世界に戻しましょう」
「……ありがとうございます」
「お前の記憶で見た世界に、実際に行けるのか。楽しみだな」
剣から夜天の声が響く。
こいつ、もしかして観光気分なんじゃないか……?
そして──俺は女神様の力で扉の向こうに戻ることができた。
「ここが俺の住む世界だ」
俺は手にした聖剣『夜天』に言った。
このまま持ってたら銃刀法違反とかに引っかかるよな……。
とりあえず、家の中にでも隠しておくか。
けど、その前に扉をなんとかしないとな。
俺の前の扉は大きな亀裂が走っている。
災禍級魔獣──スラッシャーFの触手がつけた傷だ。
「これ、封印できないかな?」
「今までは【空間封印】のスキルをかけていたのか?」
「ああ」
夜天の問いにうなずく俺。
「だけど、災禍級魔獣が出てきて、そいつの攻撃で扉自体がかなり壊れてしまった」
「ふむ……お前の【空間封印】を聖剣を通して放てば、【聖封印】という上級スキルに変化するぞ。それならどうだ?」
「聖剣って、そんなこともできるのか?」
『一周目』と違って、聖剣と意思疎通できると色々と教えてもらえそうだ。
「じゃあ、さっそく──」
俺は聖剣『夜天』を振りかぶる。
るおおおおおおおおおんっ!
禍々しい雄叫びが響いたのは、そのときだった。
神の兵士──神操兵たちの仮面じみた顔に、赤い眼光が宿った。
「雫たちは絶対に守る」
その眼光を真っ向から受け止め、俺は剣を手に突進する。
目の前の彼女たちは、本物じゃない。
夜天が俺の記憶から作り出したかりそめの世界の住人。
幻みたいなものだ。
だけど、彼女たちと同じ姿をした存在が襲われようとしているのを、黙って見過ごすことなんてできなかった。
──そんな俺の気持ちの高ぶりさえも、夜天の試練の範疇なのか。
「ぎぎ……ぎ……排除、する……」
機械のように抑揚のない声で告げる神操兵たち。
奴らが持つ剣が、槍が、斧が、俺に殺到した。
夜天は『訓練』という言葉を使っていたが、神操兵たちの攻撃は鋭い。
気を抜けば、命を落とすレベルだ。
──集中を切らすな。
俺は自身に言い聞かせ、ひたすら夜天を振るった。
次々に迫る敵の得物を、聖剣を旋回させて弾き返す。
刀身から吹き出す黄金のオーラ──『聖なるエネルギー』が強烈な圧力を伴い、神操兵たちをたじろがせた。
奴らの体勢が崩れ、隊列が乱れたのを、俺は見逃さない。
雄叫びとともに突進した。
「おおおおおっ!」
正面の敵を斬る。
左右の敵を斬る。
飛びかかってくる敵を斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬り続けるほどに、全身の感覚が研ぎ澄まされていく。
そう、これだ。
魔王軍との戦いの旅路で──。
俺はこうやって、来る日も来る日も剣を振っていた。
異世界で戦っていたときの感覚が鮮やかによみがえってくる。
体が、心が、どんどん研ぎ澄まされていく。
「これで──最後だ!」
残り一体を斬り伏せ、俺は大きく息を吐き出した。
気がつけば、数十体の神操兵が残骸となって周囲に転がっていた。
ばちっ、ばちっ、とその体から火花が散っている。
見かけどおり、こいつらは機械製だったらしい。
「……すまなかったな。お前の大切なものを危機に陥らせるような光景を見せて」
聖剣から夜天の謝罪の言葉が響いた。
「試練なんだろ、これは。ま、しょうがないよ」
「──そう言ってもらえると助かる」
「正直、ちょっとムカつく気持ちもあるが」
「……すまん」
「いや、いいよ。で、結果はどうだった?」
俺は苦笑した。
「存分に見せてもらった。お前の心と魂。その深淵を」
と、夜天。
「いつもお前は、他者を守るために剣を振っていた──」
謳うように、告げる。
「魔王を倒した後、自分の身を守るためや怒り、憎しみのために振るう剣は不本意だったろう」
「……ああ」
「大切なものを守るために力を振るう──それはかつてのお前も、今のお前も変わらない。揺るがず、惑わず、お前の魂はそう在り続ける」
夜天が言った。
「その魂が変わらぬかぎり、私も変わらずお前に力を貸そう」
同時に、周囲の景色が切り替わった。
聖剣が安置されていた部屋の中だ。
「ここは──」
どうやら戻ってきたらしい。
「どうやら聖剣に認められたようですね」
女神様が歩いてきた。
うっすらと微笑みを浮かべている。
いつからいたのだろうか。
俺と神操兵たちの戦いに気付いていたんだろうか。
「時空の乱れも収まりました。これからあなたを元の世界に戻しましょう」
「……ありがとうございます」
「お前の記憶で見た世界に、実際に行けるのか。楽しみだな」
剣から夜天の声が響く。
こいつ、もしかして観光気分なんじゃないか……?
そして──俺は女神様の力で扉の向こうに戻ることができた。
「ここが俺の住む世界だ」
俺は手にした聖剣『夜天』に言った。
このまま持ってたら銃刀法違反とかに引っかかるよな……。
とりあえず、家の中にでも隠しておくか。
けど、その前に扉をなんとかしないとな。
俺の前の扉は大きな亀裂が走っている。
災禍級魔獣──スラッシャーFの触手がつけた傷だ。
「これ、封印できないかな?」
「今までは【空間封印】のスキルをかけていたのか?」
「ああ」
夜天の問いにうなずく俺。
「だけど、災禍級魔獣が出てきて、そいつの攻撃で扉自体がかなり壊れてしまった」
「ふむ……お前の【空間封印】を聖剣を通して放てば、【聖封印】という上級スキルに変化するぞ。それならどうだ?」
「聖剣って、そんなこともできるのか?」
『一周目』と違って、聖剣と意思疎通できると色々と教えてもらえそうだ。
「じゃあ、さっそく──」
俺は聖剣『夜天』を振りかぶる。
るおおおおおおおおおんっ!
禍々しい雄叫びが響いたのは、そのときだった。
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