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第8章 勇者の運命
5 一週間
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ナダレとの、そしてレグルドとの約束の期日──一週間後までは、あっという間に過ぎていった。
その間、新たな魔族が遺跡から出てくることはなかった。
あるいは、出てきた端からレグルドが始末していたんだろうか。
また、ナダレやアリアンが俺を襲うこともなかった。
双方に干渉されることなく、俺はどちらを選択するか、あるいはどちらも選択しないのかをひたすら考えた。
基本的にどちらに協力しても、こちら側の──人間界側のメリットはほぼ同じだ。
魔界との『扉』を閉じ、魔族や魔獣がこの世界に侵攻してこなくなる、ということ。
だから後は、どちらを信じるか……だろうか。
『一周目』のことを思うと、ナダレやアリアンを信じたいとは思えない。
信じられるわけがない。
だからといって、魔族を信じるというのは大胆すぎる。
あるいは、どちらとも手を組まず、俺独自に『扉』を閉ざす道を目指すか。
俺は、迷い続けた。
そういった迷いはあるものの、日々の生活自体は平穏だった。
俺は『二周目』の人生が始まって以来、もっとも平穏な日々を過ごせたかもしれない。
「よう、カナタ。今日も町を案内しやがれ」
「また来たのか」
「てめーも嬉しいだろ? 俺様と遊べて」
「……本当に魔族か、お前」
「まあ、俺様のノリは他の魔族とはちょっと違うってよく言われるな」
「ちょっとどころじゃないんだが……」
毎日のようにレグルドがやって来ては、街中を案内させられたのには、多少辟易したけれど。
……ただ、こいつと町を歩くのは、なかなか楽しかったのも事実だ。
『一周目』の人生では、こっちの世界には親しい友人なんていなかった。
ファルセリアに行ってからは戦いの日々で友人を作る余裕なんてなかった。
旅の仲間だったベルクのことを親友だと思っていた時期もあったけれど、結局は裏切られたわけだし。
だから──もしかしたら、今までの人生で一番親しくした同性の相手かもしれない。
気ままに町中を歩き、取り留めもないことを話し、食事をする。
悪くはない時間だった。
だけど、もうすぐ選ばなきゃいけない。
こんなふうに平和に暮らせるのは一時のこと。
一瞬の、こと。
それが過ぎれば、俺はレグルドと敵対することになるんだろうか。
あるいは──。
信じるのは『一周目』で俺を裏切ったかつての仲間たちか。
それとも魔族か。
一日、一日と時間が過ぎていく。
一週間なんてあっという間だ。
悩む暇すら十分に与えられない。
どうすればいい?
俺は、どっちを選べばいい?
「どっちも信用できないし、したくない……っていうのが本音だよな」
その日、俺はオカ研の部室でため息をついていた。
もう少しマシな二択はないものか。
残るは、一日。
「お悩みですか、彼方くん」
「うお、雫!?」
気が付けば眼前に彼女の顔があった。
ちょっと距離が近すぎだろう。
「あ、すみません……あまりにも何度もため息をつくので心配になって……」
言いながら、雫が顔を赤らめる。
「ち、ちょっと近づきすぎました……」
「雫がいきなり彼方の唇を奪うのかと期待したのに」
凪沙さんが、異様なほど残念そうな顔をしていた。
「何を期待してるんですか、まったく」
「く、くくくくくく唇ををををををっ!?」
苦笑する俺の隣で、雫が真っ赤になっていた。
いや、それは凪沙さんの冗談だからな、雫。
「ボクも、てっきりちゅーするものかとワクワクドキドキしたのに」
月子がにっこり笑顔で言った。
「も、もう、二人ともやめてください~」
雫はさらにさらに顔を赤らめる。
首筋とか腕とかまで全部赤だ。
よっぽど恥ずかしかったんだろう、
平和だなぁ、と俺は彼女たちを見て、微笑ましく思った。
そう、平和だ。
魔族が襲ってきたり、魔王が世界を征服しようとしたりするわけじゃない。
かつての仲間たちから世界の敵として糾弾され、命を狙われるわけでもない。
平和な時間のありがたみを、しみじみと噛みしめる。
だけど──明日には選ばなきゃいけない。
俺が選択を誤れば、あるいはこんな時間も壊れてしまうんだろうか。
俺は、どちらを選べばいいんだろう。
あるいは、やはり──、
「別の道を……第三の、道を」
もう考える時間は、あまり残されていない。
そしてついに。
選択の日は、やって来た。
その間、新たな魔族が遺跡から出てくることはなかった。
あるいは、出てきた端からレグルドが始末していたんだろうか。
また、ナダレやアリアンが俺を襲うこともなかった。
双方に干渉されることなく、俺はどちらを選択するか、あるいはどちらも選択しないのかをひたすら考えた。
基本的にどちらに協力しても、こちら側の──人間界側のメリットはほぼ同じだ。
魔界との『扉』を閉じ、魔族や魔獣がこの世界に侵攻してこなくなる、ということ。
だから後は、どちらを信じるか……だろうか。
『一周目』のことを思うと、ナダレやアリアンを信じたいとは思えない。
信じられるわけがない。
だからといって、魔族を信じるというのは大胆すぎる。
あるいは、どちらとも手を組まず、俺独自に『扉』を閉ざす道を目指すか。
俺は、迷い続けた。
そういった迷いはあるものの、日々の生活自体は平穏だった。
俺は『二周目』の人生が始まって以来、もっとも平穏な日々を過ごせたかもしれない。
「よう、カナタ。今日も町を案内しやがれ」
「また来たのか」
「てめーも嬉しいだろ? 俺様と遊べて」
「……本当に魔族か、お前」
「まあ、俺様のノリは他の魔族とはちょっと違うってよく言われるな」
「ちょっとどころじゃないんだが……」
毎日のようにレグルドがやって来ては、街中を案内させられたのには、多少辟易したけれど。
……ただ、こいつと町を歩くのは、なかなか楽しかったのも事実だ。
『一周目』の人生では、こっちの世界には親しい友人なんていなかった。
ファルセリアに行ってからは戦いの日々で友人を作る余裕なんてなかった。
旅の仲間だったベルクのことを親友だと思っていた時期もあったけれど、結局は裏切られたわけだし。
だから──もしかしたら、今までの人生で一番親しくした同性の相手かもしれない。
気ままに町中を歩き、取り留めもないことを話し、食事をする。
悪くはない時間だった。
だけど、もうすぐ選ばなきゃいけない。
こんなふうに平和に暮らせるのは一時のこと。
一瞬の、こと。
それが過ぎれば、俺はレグルドと敵対することになるんだろうか。
あるいは──。
信じるのは『一周目』で俺を裏切ったかつての仲間たちか。
それとも魔族か。
一日、一日と時間が過ぎていく。
一週間なんてあっという間だ。
悩む暇すら十分に与えられない。
どうすればいい?
俺は、どっちを選べばいい?
「どっちも信用できないし、したくない……っていうのが本音だよな」
その日、俺はオカ研の部室でため息をついていた。
もう少しマシな二択はないものか。
残るは、一日。
「お悩みですか、彼方くん」
「うお、雫!?」
気が付けば眼前に彼女の顔があった。
ちょっと距離が近すぎだろう。
「あ、すみません……あまりにも何度もため息をつくので心配になって……」
言いながら、雫が顔を赤らめる。
「ち、ちょっと近づきすぎました……」
「雫がいきなり彼方の唇を奪うのかと期待したのに」
凪沙さんが、異様なほど残念そうな顔をしていた。
「何を期待してるんですか、まったく」
「く、くくくくくく唇ををををををっ!?」
苦笑する俺の隣で、雫が真っ赤になっていた。
いや、それは凪沙さんの冗談だからな、雫。
「ボクも、てっきりちゅーするものかとワクワクドキドキしたのに」
月子がにっこり笑顔で言った。
「も、もう、二人ともやめてください~」
雫はさらにさらに顔を赤らめる。
首筋とか腕とかまで全部赤だ。
よっぽど恥ずかしかったんだろう、
平和だなぁ、と俺は彼女たちを見て、微笑ましく思った。
そう、平和だ。
魔族が襲ってきたり、魔王が世界を征服しようとしたりするわけじゃない。
かつての仲間たちから世界の敵として糾弾され、命を狙われるわけでもない。
平和な時間のありがたみを、しみじみと噛みしめる。
だけど──明日には選ばなきゃいけない。
俺が選択を誤れば、あるいはこんな時間も壊れてしまうんだろうか。
俺は、どちらを選べばいいんだろう。
あるいは、やはり──、
「別の道を……第三の、道を」
もう考える時間は、あまり残されていない。
そしてついに。
選択の日は、やって来た。
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