ショートショートの海

猫ふくろう

文字の大きさ
3 / 6

滅亡記・前編

しおりを挟む
 およそ一ヶ月前、未知のウイルスが発見された。ほとんどの人は感染すると3日以内に死に至ってしまう。しかし、一部の人間には全く影響を受けなかった。その人数は少なく、私の周りには、私と友人1人しかいなかった。私達は他の生存者を探す旅に出ることにした。
 1日目
車で私達の住んでいる区域を探した。「探した」と言っても隅々まで探すことはできないため、スピーカーを使って区域を巡回するくらいのものだ。幸い私達は数学者であるため、最も効率の良い方法で巡回した。結果は誰も見つからなかった。私達の区域を巡回し終わったら明日の区域を決めて寝た。
 2日目
今日も誰も見つからなかった。多勢の生存者が見つかる事を期待して観光バスを選んだが全く意味なかったかも知れない。また明日に期待しよう。
 10日目
初めて私達の他に生存者が見つかった。10歳にも満たない子供だ。子供が見つかったことは良い事だ。教育をして文明をすぐにでも立て直していきたい。
 50日目
子供と出会ってから誰とも会っていない。食料はまだ余裕があり、数年は問題ないと思うが自給自足を考えるべきかも知れない。まだ人が少なすぎるため、探す以外の道はない。とにかく頑張ろう。
 70日目
初めて人間の死体を見た。ウイルス感染者は、生存者も死体も機械によって見つけられ、強制的に施設に運ばれるためウイルス感染者の死体が転がっているということはありえない。その死体には多数の病原菌がある恐れがあったため詳しいことは調べなかったが、痩せこけていたことから餓死だと思う。私たちも注意していかなければならない。
 136日目
予想以上に食料問題は激しかった。早急に対処すべきだろう。水道があるのは幸運だ。私達の文明の建物は特別素材で造られていて、半永久的に今の姿でいることができる。さらに発電所と水道施設は全て機械が操作しているため人類がいなくても動き続ける。本当に幸運だ。
 142日目
そろそろダメかもしれない。食料も減ってきた。人間にも会わない。
 143日目
食料が見つかった。しかし量は少ない。2人ならだいぶ楽になるが3人では1日に必要なエネルギーを補給できない。
 183日目
友人が死んだ。目がさめると車の中にいなかったため、探しに行くと近くの木で首を吊っていた。足下には尿などで濡れた遺書があった。子供には見せるべきかどうか悩んだが、体を洗って服を着替えさせてなるべく化粧をして顔色や紐の後を隠した。その後は子供と一緒に土を掘って埋めた。
 184日目
すごく静かになってしまった。
 185日目
私があの立場だったら、私は楽だっただろう。友人が羨ましい。
 186日目
これから先を考えると闇しかない。どうしたら良いだろう。友人はこの状況から逃げ出した。憎い。
 193日目
今日は移動せず、これからの食料調達のためのサバイバル知識を集めた。ついでに民家で寝ることにした。幸い鍵の開いている家があったのだ。大きな図書館にも行った。サバイバル本をできるだけ多く車に積んだ。ついでに子供の好きな本も何冊か積んだ。その後、夕暮れまで食べられる野草を探して歩いたのだが、久しぶりに歩くのは良い。明日から日課にするのも良いかもしれない。
 193日目
サバイバル本を買ったのは正解だった。食料に困ることは今後ないと言っていいだろう。
 241日目
最近気分が明るい気がする。散歩する習慣のおかげで日光を浴びるようになったからだろうか。前は自殺した友人が羨ましかったり憎かったりしたが、今はどうして友人が自殺の道を選んだのか分かる。あの時、あのままだと3人とも餓死していただろう。友人は私に未来を託したのだ、人類の未来を。それなら私は応えなければならない。私の生きる意味は友人の生きた意味を受け継いで達成すること。一刻も早く成し遂げてみせる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...