癒しの力が優遇されるこの世界で.〜エリート騎士に溺愛されてます。

み空色

文字の大きさ
7 / 21

幸せと陰

しおりを挟む
それからの私は幸せだった。ララに内緒にしていたことも無くなり、憧れていた師団長と信じられないことに思いが通じ合って、師団の中では今までどおり、話すこともないけど、目が合うことが増えた。

1週間に1度くらいの頻度で師団長の自宅に伺って、私のたわいも無い話しを優しい目で聞いてくださって、キスをして抱きしめられた。
時々、夜も泊まったけど、抱きしめられるだけで先に進む気配はない。きっとゆっくり進めてくださるのだと思っていた。

私は浮かれて幸せに終わりがあるのに気づけなかった。

1年たって私は21歳になっていた。
公爵家の18歳の令嬢に莫大な癒しの力が覚醒したと王都で話題となった。公爵家令嬢であれば働く必要も無く、働くとしても王宮で王族専門のヒーラーとして存在するのだと思っていた。

「えっ、あの噂の公爵家のヒーラーが第7師団に入られるのですか?」

「えぇ、ご令嬢たってのご希望だそうよ」

イザベル先輩達から話しを聞き、不安になる。

「いつからですか?」

「近日中らしいわよ。師団長も副師団長も調整で忙しくて、全然見かけないでしょ。」

最近、師団長に連絡が取れていない。イヤーカフに今日は会えますかと問いかけてもnoの返信ばかりだった。
寂しくて辛い。

ララと2人で訓練施設から管理棟に歩いているとき、師団長がヒーラーの方と歩いているのが見えた。笑顔で彼女を見ている。
あれが公爵家令嬢。18歳の彼女は綺麗なストロベリーブロンドの髪を靡かせて、オパールの瞳の大人っぽい、師団長と2人並ぶと一枚の絵画のようにお似合いの女性だった。

それからも、自宅に伺っても良いかイヤーカフで聞いてもnoの返事が続く。
そのうち王都で師団長と公爵令嬢のエリザベス様が交際しているとゴシップ誌に報じられた。

毎日が不安で仕方ない。私が連絡をとるのを辞めたら全てが終わりそうで、断られても断られても連絡を取り続けた。

遠征があり、コカトリスが出現したとのことで、今回はエリザベス様も同行されることとなった。ヒーラーの寝所の警備の為にテントの前で椅子に座っていたところに、エリザベス様が来て、私に声をかけられた。

「ねぇ、お前。シグルドが好きなんでしょ。」

「‥尊敬しております。」

「嫌だわ、誰も彼もシグルドが好きなんだもの。でも残念ね、彼は私が好きなの。信じられないなら、この遠征の後の祝勝会で、王宮のローズの間にいらっしゃい、クローゼットルームに隠れているといいわ、彼の本音を聞かせてあげる」

心が軋む。行かない方がいい、まだ夢を見ておきたいと自分の心が叫ぶ。
その後の遠征はどのように過ごしたのか記憶にない。

祝勝会の日、第7師団は前と同じく王前に並んでいた。そこにエリザベス様をエスコートする師団長とアンナさんをエスコートする副師団長が現れた。

ララと目を合わせて、きっと何かの間違い、きっと王か上官に言われての業務の一貫と思いこもうとした。だけど、一度も師団長と目が合わないことから察することができた。

もう、ローズの間には行かないようにしようと思っていたが、気になって近くまで来てしまった。向こうから師団長とエリザベス様が来るのが見えて、結局クローゼットルームに隠れることになってしまった。

エリザベス様は師団長に私のことを話していた。

「シグルド、あなたがユーリを好きなんじゃないかと噂があるの」
「彼女とは用が無ければ話していない。今日の祝勝会も今までの祝勝会もだ」
「でもあなたの目がユーリを追っているっていう人もいたわ」

師団長はため息をついて
「‥上から面倒をみるように頼まれていただけだよ」
と言った。
私は今、心が壊れる音を聞いたと思った。

「ユーリよりも私が好き?」

師団長は何も答えず、エリザベス様の唇にキスをして
「もう何も言うな」と言った。

カタカタと小刻みに震える身体を自分の腕で抱きしめ、嗚咽が出ないように気をつける。

2人が部屋を出るときにエリザベス様がこちらをみて、フッと笑っていた。

今日、やっと理解できた。
あの優しい眼差しも、愛してるの言葉もキスもこれからはエリザベス様のものだと。

2人が出て行ってから祝勝会の会場をひっそりと出た。夜に父に連絡をとって会った。

「お父さん、私のことを師団長に頼んだの?」

「あぁ、余計なことだったんだな」

「そうじゃないの、ありがとう」

「お前に幸せになってほしかったんだ。事情があってあの時
父になれなかったから。私は君がお母さんのお腹に宿った時、本当は嬉しかったんだ。でも取り巻く環境が素直に喜べなくて.何度後悔したことか‥」

「お父さん、私、この国から逃げたいの、いい?」

「私がお前の頼みを断ることはないよ」

父に抱きついて今まで辛かった分泣いた。

宿舎に戻って、エントランスを通るとき、アンナさんとレイシアさんを囲んでいる騎士達に会った。いつものように、ユーリとナナは女に見えないとの揶揄いに顔が強張って冗談で返せなかった。急いで部屋に戻って、もう無理だと呟いた。

次の日、様子のおかしかった私を心配してくれてララが部屋に来てくれた。昨日のことを話すと一緒に泣いてくれた。

「私は自業自得なんだけどね。」
ララも一緒に国を出たいと言うので理由を聞いたら、やはり、副師団長と連絡が取れなかったらしく、ララは副師団長が1人になる瞬間に業務連絡の振りをして突撃したそう。そして、仕事が落ち着いたら、またお泊まりをして、その時に一つになりたいと思いきって告げたところ、顔をゆがめてとても嫌そうにされたらしい。自分をそういう対象として見ていなかったのにはしたなく誘って引かれたみたいと弱々しく俯くララを抱きしめた。それからずっと避けられているらしい。

私は父にララと2人で国外に行くと伝えた。父は2週間後に隣国に行けるよう手配してくれた。

それからはララも私も淡々と日々を過ごした。イヤーカフも外して、私達が国外に出た後、師団長達に返してもらうように頼んだ。

出発の日は雨だった。思いが通じ合った幸せだった日を思い出して少し泣けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~

柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。 そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。 クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。 さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

慈悲深い天使のテーゼ~侯爵令嬢は我が道を征くつもりだ

あとさん♪
恋愛
王太子の婚約者候補に名を連ねながら、政権争いに敗れ、正式任命されなかった侯爵令嬢パトリシア。 彼女には辺境伯家との縁組が命じられた。辺境伯は毛むくじゃらの天をつくような大男で、粗野で野蛮人だと王都では噂されている。さらに独立して敵国に寝返るかもしれないと噂される辺境伯家に嫁いだら、いったいどうなるの? いいえ、今まで被り慣れた巨大な猫を、この際、盛大に開放させましょう。 わたくしは過去の自分を捨て、本来のわたくしに戻り、思うまま生きてやります! 設定はゆるんゆるん。なんちゃって異世界。 令嬢視点と辺境伯視点の2話構成。 『小話』は、2人のその後。主に新婚さんの甘々な日常。 小説家になろうにも掲載しております。

虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい

隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫 ◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。 ◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。 ◼︎超高速展開、サクッと読めます。

処理中です...