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隣国

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私は父の力を借りて隣国に来た。父の手配した貴族か富裕層向けの宿に宿泊した。費用が気になったが1年分が先払いされているということだった。

父に無事ついたことの報告と宿の費用について甘やかしすぎと伝えたら、すぐに返事がきて、ずっと独身で使うことがなかった金をようやく有意義に使えて嬉しいとあった。
有り難くララと一緒に泊まらせてもらった。

しばらくは心の傷を癒すことに専念した。近くに綺麗な海ある街で、ララと海岸を散歩しながら、師団長と副師団長のことが良い思い出になるようにポツリポツリと楽しかったことなどを話す。忘れることはできないし、それならば綺麗な思い出を宝物のようにして生きていこうとララと話したのだ。私達には時間が必要だった。

1カ月ぐらいそうしていたけど、身体が鈍りそうで訓練を開始する。痩せてしまって筋肉が落ちてしまったので一からトレーニングだ。
ララと海岸でトレーニングし、ララも氷魔法や火魔法を的に当てて訓練している。

それから徐々に辛い思い出も癒されてきて、そろそろ仕事を探そうかと思っていた時に宿に来客が来た。

宿の部屋の応接室に客を招きいれた。客はこの国の軍部の高位の人物で、父から私達について相談されていたそうだ。友好国とはいえ他国の騎士に軍部の中枢に関わらせることはできないが、今年3歳になる王女の側仕え兼護衛にならないかという話だった。
それこそ他国の私達が王女に仕えるなんて大丈夫なのかと聞いたら、父が私とララの保証人となっていて、それはこの国でも凄い効力をもつという。
父の抜け目ない手配に甘すぎと独りごちながら有り難く仕官させて頂くと伝えた。

王女のシャーロット様はとても愛らしく、ユーリ、ララと笑顔で呼ばれる。すぐに懐いてくださって、一時も離れることを許されないくらいだ。私達は侍女とも騎士とも違うので、制服を着ておらずシンプルでいて動きやすいドレスを着ている。王女にせがまれ抱っこすることもあるので、このドレスで助かっている。
この国の王と王妃はお若いが尊敬できる方だ。王妃はとても美しくお優しい方だ。公務に忙しく、シャーロット様になかなか会えないことに悩まれている。

シャーロット様には3歳上にアレックス様という王子がいらっしゃる。最近、アレックス様がシャーロット様のところに来られるのだが、シャーロット様は私とララがとられると思って、ちょっとご機嫌斜めになられるのだ。
アレックス様は小さい頃の師団長を思い浮かべてしまうような金髪碧眼の凄い美少年で、幼いのにご自分の立場を自覚されていて、勉学も剣や馬術の訓練も泣き言一つ言わずに受けられている。その姿を見て私だけは甘やかして差し上げたくて、私とララでちょっとしたゲームをしたり、冒険の絵本を読んだりしていたら懐かれてしまった。

その日も城の庭園でお茶の時間にアレックス様とシャーロット様に絵本を読んで差し上げていた。侍女が7名と護衛の騎士が4名配置されている。ララも一緒にテーブルについていて、シャーロット様のお世話をしている。

爽やかな天気でシャーロット様は眠たそうにしている。そろそろお昼寝の時間だろう。シャーロット様を抱き上げ、お昼寝しましょうねとお伝えするとまだ遊びたいのかイヤイヤとむずがられる。

その時、茂みから黒装束を着た男達が12人出てきた。護衛騎士がすぐさま抜剣する。
私はシャーロットを侍女に預け、アレックス様を背に守る。周りを敵に囲まれてしまった。ララも杖を持ち、詠唱に入る。私は剣の持ち手のみを左右に持ち、魔力を流す。身体能力向上の魔法もかける。この国に来てから魔獣との戦いのような長期戦はないのでこの魔法剣に変えた。これならドレスの下に隠してもおける。

敵の1人が襲いかかったのが戦いの始まりだった。
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