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陰謀編 プレイステッド領
人質、共犯者を推理する
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爆弾発言をしたラファエルは誰かに呼ばれて部屋を出て行ってしまった。
一人、狭い部屋に残された俺は、ラファエルの残した言葉を反芻する。黒蛇ちゃんが捕まえたいのはルーカスだ。その目的は、無理やり押しかけ女房になるなんてピンク色の欲望ではなく、ルーカスにウェントブルック辺境伯を継がせるため。しかし、現ウェントブルック辺境伯はルーカスの兄であるルイス殿で、あれは殺しても死なない人物だ。もちろん、病気にも罹ってない。だったらどうやって辺境伯の爵位をルーカスが継げるのか?
「まさか、ルイス殿の暗殺を企ててるわけじゃないよな?」
下手したら王宮よりも堅固な守りのウェントブルック辺境伯家の主を暗殺できるのか? そんなことになったらプレイステッド家との全面対決で、この国は滅亡するのでは? だって王家は弱っちいし。もっと穏便にコトを進めるには……ルイス殿に何か瑕疵ができること?
「あ、あの馬騒ぎがそうか!」
ウェントブルック辺境伯領の森で突如発生した馬の魔獣の大量出現。しかも、その森には元々野生の馬など生息していないときた。転移の魔道具を悪用してプレイステッド辺境伯領から馬が放たれたと推測していたが、目的が不明だった。しかし、もしあの馬の魔獣が森を守る騎士たちを突破し町に溢れていたら。プレイステッド家が馬の魔獣騒ぎが有効な手だとわかって、続々と馬を放っていたら。ウェントブルック辺境伯領は未曾有の大混乱になっていたかも。
「その責任問題をぶち上げて、ルイス殿を辺境伯の座からひきずり下ろすつもりだったのか?」
幸か不幸か、その作戦はルーカスの手によって粉砕されてしまったけど。成功していたら、ウェントブルック辺境伯家の名誉も誇りも地に落ちていただろう。そして、ルイス殿の報復が恐ろしすぎて想像もしたくない。確実に黒蛇ちゃんは喧嘩を売る相手を間違えている。アレはダメだ、アレは。
「しかし、作戦としては甘いよなぁ」
馬の魔獣騒ぎも緻密な計算つーよりも、思いついたからやってみましたというノリだ。長年計画していたぜ、フワハハハ、という深さもない。ここで考えたいのは、この企みに関わっている人はどこまでか? ってこと。ラファエルだけなのか、プレイステッド家全体か、プレイステッド辺境伯の寄子貴族も協力しているのか、王族は? ということを把握しておきたい。
俺は助けが来るまで、ここを出られることはない。外部からの接触待ちだ。んで、俺ができることはない。こんなことなら、影の軍団とか諜報部隊とか作っておけばよかったけど、領地経営に邁進し金儲けにフルスロットルしていたので、そっちまで手が回らなかった。困ったらハーディング侯爵家の人材を利用すればいいやと思ってたし。
なので、せめて内部からの情報収集ぐらいは頑張りましょう。
まず、考えたいのは俺の移動方法だよ。
目が覚めたときにも考えたけど、今回はもっと真剣に考えてみよう。
オールポート伯爵領の南側、リグーリの麦畑の端に植えてある果樹の木陰からハリソンの手刀によって意識をサクッと刈り取られて、ここまで運ばれてきた。それは、馬車で何日もかけて運ばれたのではなく、長くても一日、下手すれば数時間だ。だって、叩かれた首の後ろがズキズキと痛かったし。
ここで重要なのは、俺が閉じ込められているこの部屋、たぶん黒蛇ちゃんの持っている屋敷の一つだろうけど、それがプレイステッド辺境伯領だということ。嵌め殺しの窓から眺められるのは、屋敷の裏庭らしくただの芝が広がっているだけだが、潮の香りはしっかりと漂っているので、俺はここがプレイステッド辺境伯領だと確信している。
……そんなところまで瞬間移動できないでしょ? でもできる。それが転移の魔道具だ。オールポート領で俺を拉致し、一旦王都まで行き転移の魔道具でプレイステッド辺境伯領へ移動する。これなら、俺が一日で長距離を移動できる。できるんだけど……、黒蛇ちゃんはどこまで権力が振るえるのか? プレイステッド辺境伯領にある転移の魔道具はそれなりに操作できそうだが、王都の転移の魔道具は無理でしょ? つまり、王族がこの企みに一枚噛んでいるとなると、ややこしいことになってしまう。
俺のツテは、あのおっさん王子だけだからなぁ。あいつ……いつもフラフラしてそうだし、俺とくだらない文通しているぐらいだし……王族だけど、なんの力もなさそう。顔はイケメンだけど。こんなことなら、おっさん王子に転移の魔道具が使えるのは誰か確認しておけばよかった。
しかも、ラファエルは、俺の誘拐に魔道具を使うなんて秘密裡に行動しているはず。転移の魔道具は使用記録は残していると聞いたから、それさえも無視できる権力が……ああ、おっさん王子は無理だな。除外、除外。
……このまま、部屋で踏み台昇降に精を出していてもしょうがない。黒蛇ちゃんに訴えてヒマつぶしを持ってきてもらったが、こちらを警戒して紙やペン、本などは却下された。なんか知恵の輪みたいな木製の玩具を渡されたけど……いや、やるよ? ヒマだから、やるけど……。他にも要求したいことがあるし……暴れてもいいかな? 暴れるなんて簡単簡単! この脂肪を蓄えたボディで激しく部屋の中を走り回ればいいのさ! ダイエットもできて一石二鳥だーっ!
一人、狭い部屋に残された俺は、ラファエルの残した言葉を反芻する。黒蛇ちゃんが捕まえたいのはルーカスだ。その目的は、無理やり押しかけ女房になるなんてピンク色の欲望ではなく、ルーカスにウェントブルック辺境伯を継がせるため。しかし、現ウェントブルック辺境伯はルーカスの兄であるルイス殿で、あれは殺しても死なない人物だ。もちろん、病気にも罹ってない。だったらどうやって辺境伯の爵位をルーカスが継げるのか?
「まさか、ルイス殿の暗殺を企ててるわけじゃないよな?」
下手したら王宮よりも堅固な守りのウェントブルック辺境伯家の主を暗殺できるのか? そんなことになったらプレイステッド家との全面対決で、この国は滅亡するのでは? だって王家は弱っちいし。もっと穏便にコトを進めるには……ルイス殿に何か瑕疵ができること?
「あ、あの馬騒ぎがそうか!」
ウェントブルック辺境伯領の森で突如発生した馬の魔獣の大量出現。しかも、その森には元々野生の馬など生息していないときた。転移の魔道具を悪用してプレイステッド辺境伯領から馬が放たれたと推測していたが、目的が不明だった。しかし、もしあの馬の魔獣が森を守る騎士たちを突破し町に溢れていたら。プレイステッド家が馬の魔獣騒ぎが有効な手だとわかって、続々と馬を放っていたら。ウェントブルック辺境伯領は未曾有の大混乱になっていたかも。
「その責任問題をぶち上げて、ルイス殿を辺境伯の座からひきずり下ろすつもりだったのか?」
幸か不幸か、その作戦はルーカスの手によって粉砕されてしまったけど。成功していたら、ウェントブルック辺境伯家の名誉も誇りも地に落ちていただろう。そして、ルイス殿の報復が恐ろしすぎて想像もしたくない。確実に黒蛇ちゃんは喧嘩を売る相手を間違えている。アレはダメだ、アレは。
「しかし、作戦としては甘いよなぁ」
馬の魔獣騒ぎも緻密な計算つーよりも、思いついたからやってみましたというノリだ。長年計画していたぜ、フワハハハ、という深さもない。ここで考えたいのは、この企みに関わっている人はどこまでか? ってこと。ラファエルだけなのか、プレイステッド家全体か、プレイステッド辺境伯の寄子貴族も協力しているのか、王族は? ということを把握しておきたい。
俺は助けが来るまで、ここを出られることはない。外部からの接触待ちだ。んで、俺ができることはない。こんなことなら、影の軍団とか諜報部隊とか作っておけばよかったけど、領地経営に邁進し金儲けにフルスロットルしていたので、そっちまで手が回らなかった。困ったらハーディング侯爵家の人材を利用すればいいやと思ってたし。
なので、せめて内部からの情報収集ぐらいは頑張りましょう。
まず、考えたいのは俺の移動方法だよ。
目が覚めたときにも考えたけど、今回はもっと真剣に考えてみよう。
オールポート伯爵領の南側、リグーリの麦畑の端に植えてある果樹の木陰からハリソンの手刀によって意識をサクッと刈り取られて、ここまで運ばれてきた。それは、馬車で何日もかけて運ばれたのではなく、長くても一日、下手すれば数時間だ。だって、叩かれた首の後ろがズキズキと痛かったし。
ここで重要なのは、俺が閉じ込められているこの部屋、たぶん黒蛇ちゃんの持っている屋敷の一つだろうけど、それがプレイステッド辺境伯領だということ。嵌め殺しの窓から眺められるのは、屋敷の裏庭らしくただの芝が広がっているだけだが、潮の香りはしっかりと漂っているので、俺はここがプレイステッド辺境伯領だと確信している。
……そんなところまで瞬間移動できないでしょ? でもできる。それが転移の魔道具だ。オールポート領で俺を拉致し、一旦王都まで行き転移の魔道具でプレイステッド辺境伯領へ移動する。これなら、俺が一日で長距離を移動できる。できるんだけど……、黒蛇ちゃんはどこまで権力が振るえるのか? プレイステッド辺境伯領にある転移の魔道具はそれなりに操作できそうだが、王都の転移の魔道具は無理でしょ? つまり、王族がこの企みに一枚噛んでいるとなると、ややこしいことになってしまう。
俺のツテは、あのおっさん王子だけだからなぁ。あいつ……いつもフラフラしてそうだし、俺とくだらない文通しているぐらいだし……王族だけど、なんの力もなさそう。顔はイケメンだけど。こんなことなら、おっさん王子に転移の魔道具が使えるのは誰か確認しておけばよかった。
しかも、ラファエルは、俺の誘拐に魔道具を使うなんて秘密裡に行動しているはず。転移の魔道具は使用記録は残していると聞いたから、それさえも無視できる権力が……ああ、おっさん王子は無理だな。除外、除外。
……このまま、部屋で踏み台昇降に精を出していてもしょうがない。黒蛇ちゃんに訴えてヒマつぶしを持ってきてもらったが、こちらを警戒して紙やペン、本などは却下された。なんか知恵の輪みたいな木製の玩具を渡されたけど……いや、やるよ? ヒマだから、やるけど……。他にも要求したいことがあるし……暴れてもいいかな? 暴れるなんて簡単簡単! この脂肪を蓄えたボディで激しく部屋の中を走り回ればいいのさ! ダイエットもできて一石二鳥だーっ!
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