転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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陰謀編 プレイステッド領

人質、脱出はじめ!

窓から覗いているだけでは、突然現れた騎士と屋敷の使用人、たぶん黒蛇ちゃんに寄り添っているご高齢の執事さんとのやり取りを把握することはできない。

「う~ん、もしかしてどこかへ討伐しに行くから、ラファエルの助力がほしいっていう要請?」

あんな性格破綻者でもプレイステッド辺境伯家の一員だし、タダ飯食らいでは肩身も狭いだろうから、時々騎士団に協力しているとか? そんな俺の予想を鼻で笑うそばかす騎士くん。お前もレナードの教育が行き届いているのか、俺に対して態度が緩いなっ。

「だから、報告のメモ、ちゃんと目を通してくださいよ。ラファエルは騎士団に協力なんてしません。むしろ、剣も馬術もダメですし、足手まといっす」

「そうなんだ……。じゃあ、騎士たちはなんのためにここに来たんだ?」

このとき、俺はプレイステッド辺境伯家が国に内乱を齎せないよう、ラファエルを切ったことに気づかなかった。俺を助けに来るのは、ハーディング侯爵家かルーカスだと思っていたし。俺の救出でここに騎士たちが来るなら、それは王国騎士団だと思っていたからだ。

「ま、いっか。よし、このどさくさに紛れて屋敷から脱出しよう! あ……下働きくんとキッチンメイドさんはどうしよう」

ヴァスコの密偵とイライアス様の密偵だ。このまま屋敷に残していていいものか。でも……密偵するぐらい有能なら、臨機応変で行動できるよね? わざわざ俺が「これから脱出しま~す」と宣言しなくても、俺がいなくなったら彼らもこの屋敷から姿を消すだろう。うむ、俺はとにかく黒蛇ちゃんに見つからないようハリソンを取っ捕まえて転移だ、転移。

そばかす騎士を先頭に、リヒトを抱っこして再び裏口を目指す。覗き見していた部屋を出て廊下をグルッと回って、そばかす騎士が「使用人たちが使う階段で下に下りるっす」と案内するので、ちょこちょことついていく。

金糸で模様が入った壁紙、ツヤツヤする廊下、飾られた名画や花瓶から溢れる花々……もなく、ちょっと薄暗い廊下をひたひたと歩くと、ギシギシと音が鳴りそうな年季の入った階段が現れる。

「これ?」

「はいっす」

おおぉぉぉぉーいっ! 特権階級意識ーっ! なんじゃあ、この階段。元の俺、白豚様が足を踏み入れたら崩れそうなボロッちい階段! 俺はビクビクと怯えながら慎重に一段一段ゆっくりと下りるのだった。



























「なに?」

無表情で無口なルーカスと楽しくもない朝食を囲んでいた俺、この国の第二王子ダドリーは、慌てて走り込んできた騎士からの報告に驚いて立ち上がってしまった。

「なにをやってるんだ! セシルが囚われていると言っただろう」

ガンッとテーブルを拳で叩く俺の横を、スーッとルーカスが通り過ぎる。いや待て待て。何を単独行動しようとしている。待てって、俺の面子も考えろ、王国騎士団副団長ーっ。

「急いでいる」

「わかってる。俺も行くから。一人で行動するなっ。俺たちもラファエルの屋敷に急行する。全騎士に通達!」

俺の怒鳴り声に走ってきた騎士はピシッと直立すると、再びダァーッと走り去っていった。うう~ん、着替える余裕もないからそのまま鎧を身に着けて馬に乗るしかないか……。剣は持っていかないとな。

「それにしても、プレイステッド辺境伯家め。いくら焦ったからといって、俺たちを出し抜き騎士団を動かす奴があるか」

それとも、息子への情か? セシルを解放しラファエルを逃がすつもりか? だとしてもオールポート伯爵を誘拐した罪は消えない。下手にラファエルを庇い立てすれば、プレイステッド辺境伯家までもが罪に問われる。王家おれとしてはそこは避けたいとこなのだが……。

「……プレイステッド辺境伯は王家はともかく、ウェントブルック辺境伯家とハーディング侯爵家と敵対することを避けたかったんだろう。セシルの身を一日も早く保護して無傷で俺たちへと渡し、今回の件の情状酌量を狙っているんだ」

タカタカと早足で歩くルーカスのあとを小走りで追い駆けている俺は、ルーカスの言葉にふむと頷く。プレイステッド辺境伯家が今回の狼藉を知らぬ存ぜぬと、とぼけられないように王家とウェントブルック辺境伯家の権威をチラつかせたが、それが裏目に出たということか……。セシルにバレたら、俺は半殺しにあいそうだ。なんとか、あの面白い旧友を無事に助け出さなければならない。

「ということは、セシルの誘拐はラファエル一人の暴走で確定か。プレイステッド辺境伯もたいへんだ。あんな爆弾を抱えての領地運営は苦労も多いことだろう」

「自分の母親がしでかしたことだ。ウェントブルック辺境伯家は同じ不運に見舞われたが、こんなバカな騒ぎは起こしていないし、他領の人間を巻き込む愚行も犯していない」

二人で厩屋へと移動しながらも、鎧やら剣やらを持った従者や見習い騎士たちが俺たちに着付けていく。二人はほぼ立ち止まることなく支度を終えると、愛馬に跨った。

「ふうーっ。これからセシル・オールポート伯爵の救出へ出る。場所はラファエル・プレイステッドの私邸。先にプレイステッド辺境伯騎士団が動いているが、セシル・オールポート伯爵の身柄はこちらで保護する。我らの動きを邪魔する者は斬って捨ててもかまわん。いくぞーっ!」

「おーっ」という声が地響きとなって辺りに響くと、ダダダダッと軍馬たちの逞しく土を駆る音が残された。

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