転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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陰謀編 プレイステッド領

人質、悪玉と遭遇してしまう

騒ぎが大きくなる屋敷の状況に、タラリと冷や汗を垂らしつつ使用人用の通用口をそろりそろりと開ける。右見て、左見て……よし、誰もいないな。

「よし、俺に続け」

そばかす騎士とリヒトにカッコよく命令をして、細く開けた扉から体をスルリと……スルリと……、ちぃぃぃぃっ、まだこの体では半開きの扉からの出入りは無理だったかーっ。諦めて、扉を全開にして堂々と屋敷を出る俺。これはこれで大物感があってよろしい。むふん。

「もうちょっと痩せたほうがいいっすよ」

うるさい、黙れ。わかっとるわ、それぐらい。そばかす騎士のいらん一言にプリプリと腹を立てたが、ちょっと待て。屋敷を出たあとはハリソンを探すだけだが、あいつってば、どこにいんだよ。

「おい、ハリソンがどこにいるか知らないか?」

そばかす騎士に尋ねると、奴はコテンと首を傾げて能天気に返事した。

「知らないっす。ハリソンさんって俺たちとは別行動なので。いつも一人でいます」

「お前ら騎士が行きそうな場所に心当たりは?」

屋敷の中にいるかもしれんが、せっかく外に出たから屋敷には戻りたくない。

「ん~、酒場か娼館っす」

ゴツン。俺は握った拳をそばかす騎士の脳天に振り下ろした。本当にもう! もう! お前たちは何かつーと娼館に行きやがって。ヴァゼーレには他に娯楽場所がなかったからしょうがないけど、プレイステッド辺境伯領に来てまで娼館通いをするなっ。レナードめ~、お前の監督不行き届きだからな!

「ハリソンを探すのに手間がかかりそうだな」

困ったな。俺はさっくりと転移の魔道具で王都まで戻りたいのだが……。そのためにはハリソンが必要なのにぃ。とにかく屋敷の周りをさりげなくハリソンを探しながら、町の方へ足を向けてみよう。騎士たちに見つからないようにして……、ああ、そうだ密偵くんたちにも見つからないようにしなければ!

「え? こっそり移動する? でも……この屋敷には他にも味方がいるって、かしらが……」

「しーっ。しーっ。いいから、密偵くんたちはいいから。俺は正規のルートを通って帰るつもりはないの。バビュンと一瞬で帰りたいの!」

俺の主張にそばかす騎士はポカンと間抜け面を晒している。いいか、ヴァスコの密偵やイライアス様の密偵に保護されちゃうと、バカ正直に馬車でもってオールポート領へ帰ろうとするでしょう? そんなのんびり帰りたくないの! 転移の魔道具で王都に戻るには、ハリソンを脅して魔道具のあるところまで案内させ、魔道具を操作させるんだい。

俺の話に納得はしていないが、俺を説得できる頭も語彙力もないそばかす騎士は、頬を膨らませながらもハリソン探しに付き合ってくれるそうだ。よろしい。

裏庭のよく刈られた芝ではなく、その周りの背の高い草に隠れるように移動、移動。リヒトが必死に俺のズボンの裾を噛んで止めようとするけど、ダメです。お前は、俺の安全第一で密偵くんとの合流を企んでいるんだろう? 俺はイヤなの。文句言わずにほら、行こうぜ。

リヒトを抱っこしてサクサクと足を運ぶ俺は、つい余所見してドンッと誰かとぶつかってしまった、
イタタタ。
あ、そばかす騎士は俺の護衛なんだから、俺の前を歩けよ。なんで俺が先頭で進んでるんだよ。こんちくしょう。

「すいませ……ん。ん? んん? うわああぁぁぁっ!」

俺がぶつかったのは、く、くくくく、黒蛇ちゃんだああぁぁぁぁっ!


























俺は屋敷のほうを振り返りつつ草を払い退け進み、黒蛇ちゃんは普段なら絶対に足を踏み入れないところを歩くのに苦心していたところ、お互いに前を見ておらず正面衝突ってとこか……。

ダイエットで多少運動をしていた俺のほうが体幹が鍛えられていたから転ぶことはなかったので……俺は尻もちついて呆然としている黒蛇ちゃんをチロリと見下ろしてから踵を返す。

「野郎ども、逃げるぞーっ」

わあーっと走り出す。何のことだが把握できていないそばかす騎士も、キョロキョロしながら俺のあとをついてきた。な、なんでこんなところで黒蛇ちゃんと会っちゃうかなぁ、俺ってば。運がなさすぎでしょう?
とにかく、捕まるわけにはいかないので、ダッシュです。びゅーと走って逃げます。リヒトを抱えてはいるが、運動をしたこともなさそうな黒蛇ちゃんとやや年配の使用人が相手なら、逃げ切れる!

「ひぃぃぃっ。走れー、走れーっ」

見知らぬ土地のどこへ逃げればいいのかわからんが、捕まるわけにはいかん! しかし、必死に右足左足を動かす俺の足元をヒュルルルと飛んできたロープが絡まり、ズベェーッと頭からダイブしてすっ転んだ。

「ぶふふふふっ。いてぇーっ」

なんじゃこりゃ。足にロープが絡まっている。誰だ、こんな危ないことをするのは! 抱いていたリヒトも衝撃で放り投げてしまったし、並走していたそばかす騎士は俺の隣で転んだまま起き上がってこない。

「うえっ。こいつ……死んじゃった?」

なんで? 転んで打ったところが悪かったのか?

「大丈夫ですよ。最初から意識を刈り取るつもりで頭に石を投げましたから」

「なぁんだ、そっかぁ……って、危ないだろうがっ!」

当たりどころが悪かったら死ぬでしょうが! そもそも、裏切った主人といえども、ロープを投げて転ばすな! 打った顔がヒリヒリして痛いんだぞっ。

「ハリソン!」

「セシル様。すみません、あなたにはまだ逃げられたら困るのです」

背の高い草をかき分け姿を現したのは、げっそりとやつれたハリソンだった。
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