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婚約破棄編
白豚、謝罪とダイエット宣言
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俺の指示とは、捕まった使用人のうち軽い罪の者の再雇用は考えない、つまり雇わないということ。
これに不満を持つ、今後の使用人不足で過重労働になりそうなディーンたちがギロリと俺を睨んでいた。
「あのね? ここで働いていた人たちって、あの陰険執事のコーディたちの言葉を聞いていたんでしょ? 直接指示を受ける立場じゃなくても、聞いていたはずだよ。この屋敷の主人である俺やシャーロットちゃんを軽んずる言葉をね」
一同、ハッと気づく。
そう、例え俺に直接会ったことのない使用人でも、コーディや下品ママの話を耳にしたことがあれば、こちらを侮ってくる。
俺はまだいいが、正統な跡継ぎであるシャーロットちゃんに対して使用人が敬意を払えないのではダメだ。
実際はそういう家もあるだろうが、あいつらのせいで自尊心がバキバキに折られているシャーロットちゃんには、誠心誠意尽くしてくれる使用人が必要なんだ。
「使用人の採用については、俺とシャーロットちゃんも面談する。いいな」
「……はい」
ベンジャミンも、シャーロットちゃんのためだと悟ったのか俺の命令に反対せず了承してくれた。
他にもいろいろと話し合いたいこともあるが、今日一日で人生が巡るましく変わったシャーロットちゃんの心労を思うと、早く休ませてあげたい。
チラチラとシャーロットちゃんを盗み見る俺の態度にピーンと来たのか、ライラがシャーロットちゃんを促してソファーから立たせた。
「だん……セシル様。シャーロット様は部屋に下がらせてもらいますね」
「ああ。疲れただろう、ゆっくり休むように……って、部屋ってちゃんとした部屋?」
俺、いやだよ。
ドアマットヒロインにありがちな使用人部屋とか、屋根裏部屋とかが伯爵令嬢の部屋ですってオチ。
「ええ。今頃マリーとメイが頑張って整えています。ただ……元々お嬢様の部屋だった場所はモニカが占有していましたから、当分は客間になりますが」
「……すごく内装が改造されていそうだな。いいよ、元の部屋をシャーロットちゃんが過ごしやすい部屋に変えてくれ。他の部屋がいいなら好きにしてくれてかまわない」
俺がそんなに自分を気遣うと思っていなかったのか、シャーロットちゃんは目をまん丸にしていた。
ライラにその細い肩を抱きしめられてゆっくりと部屋を出ていくシャーロットちゃんの背中に、俺はどうしても我慢できずに言葉を漏らした。
「……いままで、ごめんね」
俺が謝ってもシャーロットちゃんの傷ついた心は癒されないし、中身が俺のこの白豚ダメパパが許されるわけでもない。
そもそも、俺はシャーロットちゃんを娘だとまだ自覚できていないし、この白豚が彼女をどう思っていたのかもわからない。
それでもさ、女の子があんなに痩せて虐げられて、じっと我慢してきた少女に、このときまで助けの手を差し伸べられなかった大人として、謝罪するべきだと思った。
わかっているよ、自分の気持ちを軽くしたいだけの偽善的な行動だって。
でも、閉じられる扉の向こうから、胸が締め付けられる嗚咽が聞こえてきて……守ってあげなきゃって思ったよ。
記憶がなくても、今の俺の体はシャーロットちゃんの父親なんだから!
「それでは、使用人の補充以外の問題ですが……」
部屋に残ったベンジャミンとディーンと俺で今後の確認です。
ベンジャミンがお茶を淹れてくれたので、和やかに話し合いを進めよう。
「まずはハーディング侯爵様にお礼の手紙と人員の貸し出しを依頼してください」
「あ~、使用人ね」
「はい、使用人もそうですが、たぶんコーディの仲間が領都の役所からいなくなっていると考えられますので、文官の手も足りません」
……はい? 役所があるの? 領都に役所があるの?
「ええ。代官もおります。コーディがのさばっている間に元の代官は罷免され、賄賂大好きな代官と悪事が得意な文官が横行していました」
「わおっ」
貴族社会のことを知らい小悪党と思っていたけど、それなりにオールポート伯爵家を食い物にしていたんだな。
「代官を始めとして足りない文官をハーディング侯爵家から工面してほしいのです。ここには禄な人材は残っていません」
「まあね。上がポンコツならまだしも、悪人となったら真っ当な人間は逃げ出すわな」
ちなみにコーディの仲間の役所の役員は逃げ出す前にハーディング侯爵家の騎士たちに捕縛されたそうです。
うむ、罪を償ってくれ。
できれば、うちのお金を返してほしいなぁ。
「ううむ、あいつらがガンガン上げていた税金のこととか着手したいことはいっぱいあるんだが……代官が決まってから動いたほうがいいかな?」
腕を組んで悩む俺にベンジャミンとディーンはちょっと居たたまれない表情。
「……旦那さ……コホン、セシル様。実はオールポート伯爵領地の経営に難があるのはコーディたちが屋敷に入り込む前からです」
「へ?」
そ、それは、元の白豚が既に何かやらかした後だったとか?
「亡くなった奥様の時代から経営はめちゃくちゃでして。何度も諫めようとしたのですが、精神的にバランスの崩れやすい方で、難しく」
俺はベンジャミンの眉間に刻まれた深いシワに同情した。
「結婚した俺はポンコツだったと……そりゃ、ずいぶんと世話をかけたな、申し訳ない」
だったら、このオールポート伯爵領地はどこから手を付ければいいんだか……途方に暮れるな。
「とりあえず……俺は……ダイエットをするよ」
白豚から人間へと進化してみせるぜ。
これに不満を持つ、今後の使用人不足で過重労働になりそうなディーンたちがギロリと俺を睨んでいた。
「あのね? ここで働いていた人たちって、あの陰険執事のコーディたちの言葉を聞いていたんでしょ? 直接指示を受ける立場じゃなくても、聞いていたはずだよ。この屋敷の主人である俺やシャーロットちゃんを軽んずる言葉をね」
一同、ハッと気づく。
そう、例え俺に直接会ったことのない使用人でも、コーディや下品ママの話を耳にしたことがあれば、こちらを侮ってくる。
俺はまだいいが、正統な跡継ぎであるシャーロットちゃんに対して使用人が敬意を払えないのではダメだ。
実際はそういう家もあるだろうが、あいつらのせいで自尊心がバキバキに折られているシャーロットちゃんには、誠心誠意尽くしてくれる使用人が必要なんだ。
「使用人の採用については、俺とシャーロットちゃんも面談する。いいな」
「……はい」
ベンジャミンも、シャーロットちゃんのためだと悟ったのか俺の命令に反対せず了承してくれた。
他にもいろいろと話し合いたいこともあるが、今日一日で人生が巡るましく変わったシャーロットちゃんの心労を思うと、早く休ませてあげたい。
チラチラとシャーロットちゃんを盗み見る俺の態度にピーンと来たのか、ライラがシャーロットちゃんを促してソファーから立たせた。
「だん……セシル様。シャーロット様は部屋に下がらせてもらいますね」
「ああ。疲れただろう、ゆっくり休むように……って、部屋ってちゃんとした部屋?」
俺、いやだよ。
ドアマットヒロインにありがちな使用人部屋とか、屋根裏部屋とかが伯爵令嬢の部屋ですってオチ。
「ええ。今頃マリーとメイが頑張って整えています。ただ……元々お嬢様の部屋だった場所はモニカが占有していましたから、当分は客間になりますが」
「……すごく内装が改造されていそうだな。いいよ、元の部屋をシャーロットちゃんが過ごしやすい部屋に変えてくれ。他の部屋がいいなら好きにしてくれてかまわない」
俺がそんなに自分を気遣うと思っていなかったのか、シャーロットちゃんは目をまん丸にしていた。
ライラにその細い肩を抱きしめられてゆっくりと部屋を出ていくシャーロットちゃんの背中に、俺はどうしても我慢できずに言葉を漏らした。
「……いままで、ごめんね」
俺が謝ってもシャーロットちゃんの傷ついた心は癒されないし、中身が俺のこの白豚ダメパパが許されるわけでもない。
そもそも、俺はシャーロットちゃんを娘だとまだ自覚できていないし、この白豚が彼女をどう思っていたのかもわからない。
それでもさ、女の子があんなに痩せて虐げられて、じっと我慢してきた少女に、このときまで助けの手を差し伸べられなかった大人として、謝罪するべきだと思った。
わかっているよ、自分の気持ちを軽くしたいだけの偽善的な行動だって。
でも、閉じられる扉の向こうから、胸が締め付けられる嗚咽が聞こえてきて……守ってあげなきゃって思ったよ。
記憶がなくても、今の俺の体はシャーロットちゃんの父親なんだから!
「それでは、使用人の補充以外の問題ですが……」
部屋に残ったベンジャミンとディーンと俺で今後の確認です。
ベンジャミンがお茶を淹れてくれたので、和やかに話し合いを進めよう。
「まずはハーディング侯爵様にお礼の手紙と人員の貸し出しを依頼してください」
「あ~、使用人ね」
「はい、使用人もそうですが、たぶんコーディの仲間が領都の役所からいなくなっていると考えられますので、文官の手も足りません」
……はい? 役所があるの? 領都に役所があるの?
「ええ。代官もおります。コーディがのさばっている間に元の代官は罷免され、賄賂大好きな代官と悪事が得意な文官が横行していました」
「わおっ」
貴族社会のことを知らい小悪党と思っていたけど、それなりにオールポート伯爵家を食い物にしていたんだな。
「代官を始めとして足りない文官をハーディング侯爵家から工面してほしいのです。ここには禄な人材は残っていません」
「まあね。上がポンコツならまだしも、悪人となったら真っ当な人間は逃げ出すわな」
ちなみにコーディの仲間の役所の役員は逃げ出す前にハーディング侯爵家の騎士たちに捕縛されたそうです。
うむ、罪を償ってくれ。
できれば、うちのお金を返してほしいなぁ。
「ううむ、あいつらがガンガン上げていた税金のこととか着手したいことはいっぱいあるんだが……代官が決まってから動いたほうがいいかな?」
腕を組んで悩む俺にベンジャミンとディーンはちょっと居たたまれない表情。
「……旦那さ……コホン、セシル様。実はオールポート伯爵領地の経営に難があるのはコーディたちが屋敷に入り込む前からです」
「へ?」
そ、それは、元の白豚が既に何かやらかした後だったとか?
「亡くなった奥様の時代から経営はめちゃくちゃでして。何度も諫めようとしたのですが、精神的にバランスの崩れやすい方で、難しく」
俺はベンジャミンの眉間に刻まれた深いシワに同情した。
「結婚した俺はポンコツだったと……そりゃ、ずいぶんと世話をかけたな、申し訳ない」
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