転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

文字の大きさ
17 / 234
婚約破棄編

白豚、謝罪とダイエット宣言

しおりを挟む
俺の指示とは、捕まった使用人のうち軽い罪の者の再雇用は考えない、つまり雇わないということ。
これに不満を持つ、今後の使用人不足で過重労働になりそうなディーンたちがギロリと俺を睨んでいた。

「あのね? ここで働いていた人たちって、あの陰険執事のコーディたちの言葉を聞いていたんでしょ? 直接指示を受ける立場じゃなくても、聞いていたはずだよ。この屋敷の主人である俺やシャーロットちゃんを軽んずる言葉をね」

一同、ハッと気づく。
そう、例え俺に直接会ったことのない使用人でも、コーディや下品ママの話を耳にしたことがあれば、こちらを侮ってくる。

俺はまだいいが、正統な跡継ぎであるシャーロットちゃんに対して使用人が敬意を払えないのではダメだ。
実際はそういう家もあるだろうが、あいつらのせいで自尊心がバキバキに折られているシャーロットちゃんには、誠心誠意尽くしてくれる使用人が必要なんだ。

「使用人の採用については、俺とシャーロットちゃんも面談する。いいな」

「……はい」

ベンジャミンも、シャーロットちゃんのためだと悟ったのか俺の命令に反対せず了承してくれた。

他にもいろいろと話し合いたいこともあるが、今日一日で人生が巡るましく変わったシャーロットちゃんの心労を思うと、早く休ませてあげたい。
チラチラとシャーロットちゃんを盗み見る俺の態度にピーンと来たのか、ライラがシャーロットちゃんを促してソファーから立たせた。

「だん……セシル様。シャーロット様は部屋に下がらせてもらいますね」

「ああ。疲れただろう、ゆっくり休むように……って、部屋ってちゃんとした部屋?」

俺、いやだよ。
ドアマットヒロインにありがちな使用人部屋とか、屋根裏部屋とかが伯爵令嬢の部屋ですってオチ。

「ええ。今頃マリーとメイが頑張って整えています。ただ……元々お嬢様の部屋だった場所はモニカが占有していましたから、当分は客間になりますが」

「……すごく内装が改造されていそうだな。いいよ、元の部屋をシャーロットちゃんが過ごしやすい部屋に変えてくれ。他の部屋がいいなら好きにしてくれてかまわない」

俺がそんなに自分を気遣うと思っていなかったのか、シャーロットちゃんは目をまん丸にしていた。
ライラにその細い肩を抱きしめられてゆっくりと部屋を出ていくシャーロットちゃんの背中に、俺はどうしても我慢できずに言葉を漏らした。

「……いままで、ごめんね」

俺が謝ってもシャーロットちゃんの傷ついた心は癒されないし、中身が俺のこの白豚ダメパパが許されるわけでもない。
そもそも、俺はシャーロットちゃんを娘だとまだ自覚できていないし、この白豚が彼女をどう思っていたのかもわからない。

それでもさ、女の子があんなに痩せて虐げられて、じっと我慢してきた少女に、このときまで助けの手を差し伸べられなかった大人として、謝罪するべきだと思った。
わかっているよ、自分の気持ちを軽くしたいだけの偽善的な行動だって。

でも、閉じられる扉の向こうから、胸が締め付けられる嗚咽が聞こえてきて……守ってあげなきゃって思ったよ。
記憶がなくても、今の俺の体はシャーロットちゃんの父親なんだから!

















「それでは、使用人の補充以外の問題ですが……」

部屋に残ったベンジャミンとディーンと俺で今後の確認です。
ベンジャミンがお茶を淹れてくれたので、和やかに話し合いを進めよう。

「まずはハーディング侯爵様にお礼の手紙と人員の貸し出しを依頼してください」

「あ~、使用人ね」

「はい、使用人もそうですが、たぶんコーディの仲間が領都の役所からいなくなっていると考えられますので、文官の手も足りません」

……はい? 役所があるの? 領都に役所があるの?

「ええ。代官もおります。コーディがのさばっている間に元の代官は罷免され、賄賂大好きな代官と悪事が得意な文官が横行していました」

「わおっ」

貴族社会のことを知らい小悪党と思っていたけど、それなりにオールポート伯爵家を食い物にしていたんだな。

「代官を始めとして足りない文官をハーディング侯爵家から工面してほしいのです。ここには禄な人材は残っていません」

「まあね。上がポンコツならまだしも、悪人となったら真っ当な人間は逃げ出すわな」

ちなみにコーディの仲間の役所の役員は逃げ出す前にハーディング侯爵家の騎士たちに捕縛されたそうです。
うむ、罪を償ってくれ。
できれば、うちのお金を返してほしいなぁ。

「ううむ、あいつらがガンガン上げていた税金のこととか着手したいことはいっぱいあるんだが……代官が決まってから動いたほうがいいかな?」

腕を組んで悩む俺にベンジャミンとディーンはちょっと居たたまれない表情。

「……旦那さ……コホン、セシル様。実はオールポート伯爵領地の経営に難があるのはコーディたちが屋敷に入り込む前からです」

「へ?」

そ、それは、元の白豚が既に何かやらかした後だったとか?

「亡くなった奥様の時代から経営はめちゃくちゃでして。何度も諫めようとしたのですが、精神的にバランスの崩れやすい方で、難しく」

俺はベンジャミンの眉間に刻まれた深いシワに同情した。

「結婚した俺はポンコツだったと……そりゃ、ずいぶんと世話をかけたな、申し訳ない」

だったら、このオールポート伯爵領地はどこから手を付ければいいんだか……途方に暮れるな。

「とりあえず……俺は……ダイエットをするよ」

白豚から人間へと進化してみせるぜ。

しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

森で助けた記憶喪失の青年は、実は敵国の王子様だった!? 身分に引き裂かれた運命の番が、王宮の陰謀を乗り越え再会するまで

水凪しおん
BL
記憶を失った王子×森の奥で暮らす薬師。 身分違いの二人が織りなす、切なくも温かい再会と愛の物語。 人里離れた深い森の奥、ひっそりと暮らす薬師のフィンは、ある嵐の夜、傷つき倒れていた赤髪の青年を助ける。 記憶を失っていた彼に「アッシュ」と名付け、共に暮らすうちに、二人は互いになくてはならない存在となり、心を通わせていく。 しかし、幸せな日々は突如として終わりを告げた。 彼は隣国ヴァレンティスの第一王子、アシュレイだったのだ。 記憶を取り戻し、王宮へと連れ戻されるアッシュ。残されたフィン。 身分という巨大な壁と、王宮に渦巻く陰謀が二人を引き裂く。 それでも、運命の番(つがい)の魂は、呼び合うことをやめなかった――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

処理中です...