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領地経営編①
領主、領地の危機を知る
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無言でただ時間だけが過ぎる。
クラークの秘書的な仕事を担っている女性職員、名前はケイシーが早口で捲し立てたオールポート伯爵家のゴシップに、思わず無言だよ。
唇をキュッと噛んでしまう。
役所の職員や、たぶん町の者たちが噂していた「悪役令嬢」「甘やかされた娘」とは……リトルトン侯爵家に引き取られたニセ乳ではなくて、かわいいシャーロットちゃんのことでした。
あんの野郎どもは、律儀に領都中にシャーロットちゃんの悪評をバラ撒いていたのだ!
まず金遣いが荒い、これは下品ママやニセ乳が購入したあれやこれやをシャーロットちゃんの名前で購入していたから。
気に入らない使用人をすぐクビにする、これはもちろんコーディ一味とは違い善良な使用人たちのことだ。
シャーロットちゃんの立場に異を唱えた者がシャーロットちゃんの悪口を広めるワケがない。
これは、使用人たちをクビにしたあと、領都にはいられないように追い出し、コーディたちがシャーロットちゃんが理不尽な理由でクビにしたと吹聴していた。
あとは、貴族子女のお茶会でトラブルを起こした、これはまんまニセ乳の仕業。
婚約者がいるのに他の貴族子息に色目を使った、これもニセ乳があちこちで男性に絡んで迷惑がられていただけ。
……全部、あいつらのせいじゃないか!
俺が「うがーっ」と心の中で黒い感情に藻掻いている間に、クラークたちにはベンジャミンから丁寧に説明がされていた。
「ま、信じていませんでしたけどね。ベンおじさんが庇うならシャーロット嬢は被害者ですな」
クラークはふぅっと息を吐いて、ソファーに深く座る。
「悪役令嬢」呼ばわりした秘書のケイシーは目を真ん丸にして、居心地が悪そうにモジモジしていた。
「ベンおじさん?」
オールポート伯爵家に仕える執事長ベンジャミンを親し気に「ベンおじさん」と呼ぶとは?
「私とベンおじさんは知り合いです。ベンおじさんの息子、ディーンとは友人なんです」
なんと! あのディーンと友人? それだけでグッとこの男に対する信用度が下がる。
だって、あのちょっとチャラいディーンの友達だぞ?
俺が真意を窺う視線をベンジャミンに向けると、渋面のベンジャミンが頷いて答えた。
「……領地経営の立て直しと併せて、シャーロットちゃんのイメージアップ作戦も行わないと。シャーロットちゃんが可哀想過ぎる」
クッと目を強く閉じ、ぎゅっと右手を握りこむ俺の苦悩の姿に、後ろに立って控えていたおじさん、クラークの副官でずっと役所で頑張ってきたいい人、チャールズが恐る恐る発言する。
「失礼ですが、そらちは本当にオールポート伯爵セシル様ですか?」
「……そう……だよな?」
俺はセシル・オールポートであるはずだが、なんせ中身が異世界産の魂なので、つい後ろを向いてベンジャミンに確認してしまった。
「当たり前です。何を言っているのですか? チャールズ殿、以前と姿がものすごく変わっているかもしれませんが、この方はセシル・オールポート伯爵様です。あと、少し領地のことやご家族のことに関心を持つようになりましたので、フォローをお願いします。
……なんか、ディスってない? ベンジャミンは俺のこと大嫌いなの?
少し、しょんぼりとした気持ちで俺からも誠意をみせないと、とペコリと頭を下げてみせた。
「すまないが、よろしく頼む」
周りがざわっとしたが、無視する。
とにかく税率の問題と、領地の把握、シャーロットちゃんの悪評の払拭……自分のダイエットとやることが本当に山積みだよ。
トホホ。
その後は、ビジネスモードに入りテキパキと問題提起とこれからの政策の方向性、インフラ設備など多方面に渡って有効なディスカッションができた。
話し合いの間にチクチクと嫌味を言われた気はするが、しょうがない。
意外にもクラークは理想高い青年らしい考え方で、副官のチャールズは狸な腹黒で狡猾さがあり合理的な思考の持ち主だった。
うむ、バランスの良い人材で、バッチリと俺の周りを固めてほしいものである。
「最後に……こちらが一番近々の問題なのですが……」
「なんだ?」
「この、領都の急激な過疎化です」
「かそ……か?」
それは急に領都、いわゆるこの領地の中心地から領民が大量にいなくなったってこと?
「そのほとんどが例のコーディたちの仲間や何かの利益供給を受けていた輩なので、出ていったことは喜ばしいのですが、一気に町のメインストリートの店が閉じてしまい……困ったことに」
俺が馬車の中で「シャッター商店街」と評したのは、正しい状態だったらしい。
でも、悪い奴らがいなくなったのだから、そこはもっと良心的な商売をする人たちが新しく営んでいけばよいのではないのか?
幸いにも、人手はなくなったが、店や宿屋などの建物は残っているんだし?
「もうすぐ、王都へと向かう地方貴族がオールポート伯爵領へと参ります。そのときに提供する商品や娯楽、宿がないと……次回からはオールポート伯爵領の通行を避けるかもしれません。いわゆる、その貴族たちが落としていくお金が次回からゼロになる危険性があるのです」
な、なんだってーっ!
クラークの秘書的な仕事を担っている女性職員、名前はケイシーが早口で捲し立てたオールポート伯爵家のゴシップに、思わず無言だよ。
唇をキュッと噛んでしまう。
役所の職員や、たぶん町の者たちが噂していた「悪役令嬢」「甘やかされた娘」とは……リトルトン侯爵家に引き取られたニセ乳ではなくて、かわいいシャーロットちゃんのことでした。
あんの野郎どもは、律儀に領都中にシャーロットちゃんの悪評をバラ撒いていたのだ!
まず金遣いが荒い、これは下品ママやニセ乳が購入したあれやこれやをシャーロットちゃんの名前で購入していたから。
気に入らない使用人をすぐクビにする、これはもちろんコーディ一味とは違い善良な使用人たちのことだ。
シャーロットちゃんの立場に異を唱えた者がシャーロットちゃんの悪口を広めるワケがない。
これは、使用人たちをクビにしたあと、領都にはいられないように追い出し、コーディたちがシャーロットちゃんが理不尽な理由でクビにしたと吹聴していた。
あとは、貴族子女のお茶会でトラブルを起こした、これはまんまニセ乳の仕業。
婚約者がいるのに他の貴族子息に色目を使った、これもニセ乳があちこちで男性に絡んで迷惑がられていただけ。
……全部、あいつらのせいじゃないか!
俺が「うがーっ」と心の中で黒い感情に藻掻いている間に、クラークたちにはベンジャミンから丁寧に説明がされていた。
「ま、信じていませんでしたけどね。ベンおじさんが庇うならシャーロット嬢は被害者ですな」
クラークはふぅっと息を吐いて、ソファーに深く座る。
「悪役令嬢」呼ばわりした秘書のケイシーは目を真ん丸にして、居心地が悪そうにモジモジしていた。
「ベンおじさん?」
オールポート伯爵家に仕える執事長ベンジャミンを親し気に「ベンおじさん」と呼ぶとは?
「私とベンおじさんは知り合いです。ベンおじさんの息子、ディーンとは友人なんです」
なんと! あのディーンと友人? それだけでグッとこの男に対する信用度が下がる。
だって、あのちょっとチャラいディーンの友達だぞ?
俺が真意を窺う視線をベンジャミンに向けると、渋面のベンジャミンが頷いて答えた。
「……領地経営の立て直しと併せて、シャーロットちゃんのイメージアップ作戦も行わないと。シャーロットちゃんが可哀想過ぎる」
クッと目を強く閉じ、ぎゅっと右手を握りこむ俺の苦悩の姿に、後ろに立って控えていたおじさん、クラークの副官でずっと役所で頑張ってきたいい人、チャールズが恐る恐る発言する。
「失礼ですが、そらちは本当にオールポート伯爵セシル様ですか?」
「……そう……だよな?」
俺はセシル・オールポートであるはずだが、なんせ中身が異世界産の魂なので、つい後ろを向いてベンジャミンに確認してしまった。
「当たり前です。何を言っているのですか? チャールズ殿、以前と姿がものすごく変わっているかもしれませんが、この方はセシル・オールポート伯爵様です。あと、少し領地のことやご家族のことに関心を持つようになりましたので、フォローをお願いします。
……なんか、ディスってない? ベンジャミンは俺のこと大嫌いなの?
少し、しょんぼりとした気持ちで俺からも誠意をみせないと、とペコリと頭を下げてみせた。
「すまないが、よろしく頼む」
周りがざわっとしたが、無視する。
とにかく税率の問題と、領地の把握、シャーロットちゃんの悪評の払拭……自分のダイエットとやることが本当に山積みだよ。
トホホ。
その後は、ビジネスモードに入りテキパキと問題提起とこれからの政策の方向性、インフラ設備など多方面に渡って有効なディスカッションができた。
話し合いの間にチクチクと嫌味を言われた気はするが、しょうがない。
意外にもクラークは理想高い青年らしい考え方で、副官のチャールズは狸な腹黒で狡猾さがあり合理的な思考の持ち主だった。
うむ、バランスの良い人材で、バッチリと俺の周りを固めてほしいものである。
「最後に……こちらが一番近々の問題なのですが……」
「なんだ?」
「この、領都の急激な過疎化です」
「かそ……か?」
それは急に領都、いわゆるこの領地の中心地から領民が大量にいなくなったってこと?
「そのほとんどが例のコーディたちの仲間や何かの利益供給を受けていた輩なので、出ていったことは喜ばしいのですが、一気に町のメインストリートの店が閉じてしまい……困ったことに」
俺が馬車の中で「シャッター商店街」と評したのは、正しい状態だったらしい。
でも、悪い奴らがいなくなったのだから、そこはもっと良心的な商売をする人たちが新しく営んでいけばよいのではないのか?
幸いにも、人手はなくなったが、店や宿屋などの建物は残っているんだし?
「もうすぐ、王都へと向かう地方貴族がオールポート伯爵領へと参ります。そのときに提供する商品や娯楽、宿がないと……次回からはオールポート伯爵領の通行を避けるかもしれません。いわゆる、その貴族たちが落としていくお金が次回からゼロになる危険性があるのです」
な、なんだってーっ!
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