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オールポート家編
父親、未来予想図を描く
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ラスキン博士の案内で今度は畑へと足を向ける。
「お父様、わたくしここでカイコちゃんたちに餌をあげてますわ」
「ああ……うん、シャーロットちゃんがいいなら、いいよ。……マリーは無理せずに外で待ってなよ」
シャーロットちゃんが輝く笑顔でカイコのムニュムニュな頭部を撫でている。その姿を口を手で押さえて「うえっぷ」しながら見守るマリー……いやいや、苦手なんでしょ? あれ、ほぼ無害だけど魔虫だからね。
マリーはしょぼんと肩を落としてカイコの飼育小屋から出ていき、ニコニコシャーロットちゃんの傍には、レックス先生がつくことに。
よし、カイコの諸君。その男がシャーロットちゃんに不埒なことをしようとしたら、パクリ、ムシャムシャとしてしまえ。
俺は戒めの視線をレックス先生に飛ばし、ラスキン博士の説明を聞きながら畑を歩く。
うん、歩く。俺、歩けるようになったよおおぉぉぉっ!
ダイエット効果に嬉しくてスキップをしたくなるが、ここで無理をしたら速攻で呼吸困難に陥るから気をつけよう。
「セシル様が欲した綿花はこちらで栽培予定です。もうすぐ種まきですな」
「ここで栽培できそうか? もう少し暖かい地方で栽培されていると思うが……」
俺の疑問にラスキン博士は不思議そうな顔を向けた。
「確かに暖かい地方で栽培される綿花の品種もありますが、オールポート領でも栽培は可能です。やや小振りにはなりますが。ちなみに綿花から糸に撚るまでの作業は経験者がおりましたので安心してください」
「そりゃ、よかった」
カイコの繭から糸にするのも大変だが、綿花のコットンボールから糸にするのも大変そうだ。でも経験者がいるなら、技術者を増やすこともできそうだな。
「こちらには亜麻を、茎を繊維状にしてリネンにするのでしたな」
「ああ。リネンなら寝具や肌着など、用途が広いから重宝するだろう」
亜麻糸も紡ぐ技術が必要だが、残念ながら経験者はいないとのこと。これはクラークに頼んでまずはオールポートの領民から指導者を募ろう。
「こらちも、そろそろ種をまきます。連作障害を起こす危険性がある植物ですので、気をつけないといけません」
連作障害って、亜麻とかでも起きるのか……。てっきり野菜とか豆類だけだと思っていた。
「じゃあ輪作か……。サツマイモとかタマネギだったらこの土地でもできるかな?」
「……輪作?」
やべぇ、ラスキン博士の目がキラリンと光りやがった。
散々、連作障害と輪作の話を俺の頭の中から搾り取られて、俺の横では恨みがましい目でこちらを見ているディーンがせっせっと手を動かしていた。
しまった、これも商業ギルド案件だったか……。
「ところで、この整然と植えられた草はなんだったんだ?」
俺はてっきり綿花か亜麻だと思っていたんだけど。
「ああ……薬草です。ここいらの者は医者に罹ることはできませんし、売っている薬は高いですしな」
ラスキン博士の話では、熱さましや血止め、腹痛の薬草らしい。ふむ……薬草園が作れたらいいかもな。
俺たちはラスキン博士の小屋に戻り、シャーロットちゃんたちと合流して、一枚の大きな紙を広げた。
「これは……?」
「いや、それより、それは?」
明らかにカイコの小屋で見た道具より立派な糸車があった。
それ以外にもラスキン博士の小屋の中には、糸を紡いだりする道具が幾つか置かれていた。
「これは、ここの者で腕に覚えがある者が作った試作です。なかなかいいモノですぞ」
ふむ、素人目の俺では判断ができないが、細かいところも丁寧に作られていて、試してみたがスムーズに動くし、いいんじゃないか、これ。
「確かにいい腕だな」
カイコの小屋に置いてあったものよりも格段に作りがいいと思うぞ。
こんなにいい腕なら、普通に町で働けたんじゃないの? という俺の不思議顔を見たラスキン博士は苦笑する。
「こいつは足がダメでしてね。事故で一人立ちする前に片足が動きにくくなった。そこで勤めていた棟梁からクビになって食い詰めたんです」
「……。いやいや、ここまでできるなら手作業の仕事とかもあっただろう?」
家具や細工物作るとか、部品だけ作って誰かに組み立ててもらうとか、と言いたいが、また商業ギルド案件だと困るので口を噤む。
ラスキン博士曰く、一人立ちする前にクビになった職人は半人前。どこかに雇ってもらわないと仕事はできないのが常識だそうだ。
「もったいないなー、こんなに丁寧な仕事なのに」
俺はクルクルと糸車を回して口を尖らせた。
「それは、本人が聞いたら喜ぶでしょう」
ちょっと話が逸れちゃったけど、今日、ラスキン博士のところを訪れたのは、この西側領地サレルノの完成図を見せにきたのだ!
「こ、これは!」
「ふふん。すごいだろう。クラークたちの承認も得ているし、資金は隣のハーディング侯爵様が援助してくれる。どうせ何年後には大儲けするんだ、ケチケチしないで、パァーッと派手に作ってやろうぜ!」
西側領地サレルノ。
広大な畑には綿花と亜麻。輪作用の芋などの野菜を栽培。ついでに薬草園も作る。
カイコの飼育場、餌のクワの林。ほかにも果樹などを植えるつもりだ。
ハーディング侯爵領とオールポート領を結ぶ街道インヴェルノの街道沿いには四季それぞれに咲く花を植える。
建物は製糸工場、製布工場、染色工場がある。これは前の世界のなんちゃら遺産に認定された工場をモデルにする。レンガ造りの建物だ。
んで、働く人の住む場所は独り者用の寮、アパート、家族用の一軒家タイプと取りそろえる。
高齢者が住む場所には集会所と子どもを預かる保育所を併設させ、見守り環境を整える。
ここが我が領の一大産業となるので、騎士たちの駐屯所も建てておく。騎士を常在させ治安の悪化を防ぐ。
あ、クラークに頼んで役所の出張所も建てておこう。
「そのほか、生活に必要なものは揃えるつもりだ。医者も必要だし、人が増えれば食料や生活用品を売る店や飲食店などもほしいだろう?」
ラスキン博士の目が大きくかっ開いて図面を持つ手がブルブルと震えている。
楽しかったよなーっ、この予定図作るの。むふふふ。
「お父様、わたくしここでカイコちゃんたちに餌をあげてますわ」
「ああ……うん、シャーロットちゃんがいいなら、いいよ。……マリーは無理せずに外で待ってなよ」
シャーロットちゃんが輝く笑顔でカイコのムニュムニュな頭部を撫でている。その姿を口を手で押さえて「うえっぷ」しながら見守るマリー……いやいや、苦手なんでしょ? あれ、ほぼ無害だけど魔虫だからね。
マリーはしょぼんと肩を落としてカイコの飼育小屋から出ていき、ニコニコシャーロットちゃんの傍には、レックス先生がつくことに。
よし、カイコの諸君。その男がシャーロットちゃんに不埒なことをしようとしたら、パクリ、ムシャムシャとしてしまえ。
俺は戒めの視線をレックス先生に飛ばし、ラスキン博士の説明を聞きながら畑を歩く。
うん、歩く。俺、歩けるようになったよおおぉぉぉっ!
ダイエット効果に嬉しくてスキップをしたくなるが、ここで無理をしたら速攻で呼吸困難に陥るから気をつけよう。
「セシル様が欲した綿花はこちらで栽培予定です。もうすぐ種まきですな」
「ここで栽培できそうか? もう少し暖かい地方で栽培されていると思うが……」
俺の疑問にラスキン博士は不思議そうな顔を向けた。
「確かに暖かい地方で栽培される綿花の品種もありますが、オールポート領でも栽培は可能です。やや小振りにはなりますが。ちなみに綿花から糸に撚るまでの作業は経験者がおりましたので安心してください」
「そりゃ、よかった」
カイコの繭から糸にするのも大変だが、綿花のコットンボールから糸にするのも大変そうだ。でも経験者がいるなら、技術者を増やすこともできそうだな。
「こちらには亜麻を、茎を繊維状にしてリネンにするのでしたな」
「ああ。リネンなら寝具や肌着など、用途が広いから重宝するだろう」
亜麻糸も紡ぐ技術が必要だが、残念ながら経験者はいないとのこと。これはクラークに頼んでまずはオールポートの領民から指導者を募ろう。
「こらちも、そろそろ種をまきます。連作障害を起こす危険性がある植物ですので、気をつけないといけません」
連作障害って、亜麻とかでも起きるのか……。てっきり野菜とか豆類だけだと思っていた。
「じゃあ輪作か……。サツマイモとかタマネギだったらこの土地でもできるかな?」
「……輪作?」
やべぇ、ラスキン博士の目がキラリンと光りやがった。
散々、連作障害と輪作の話を俺の頭の中から搾り取られて、俺の横では恨みがましい目でこちらを見ているディーンがせっせっと手を動かしていた。
しまった、これも商業ギルド案件だったか……。
「ところで、この整然と植えられた草はなんだったんだ?」
俺はてっきり綿花か亜麻だと思っていたんだけど。
「ああ……薬草です。ここいらの者は医者に罹ることはできませんし、売っている薬は高いですしな」
ラスキン博士の話では、熱さましや血止め、腹痛の薬草らしい。ふむ……薬草園が作れたらいいかもな。
俺たちはラスキン博士の小屋に戻り、シャーロットちゃんたちと合流して、一枚の大きな紙を広げた。
「これは……?」
「いや、それより、それは?」
明らかにカイコの小屋で見た道具より立派な糸車があった。
それ以外にもラスキン博士の小屋の中には、糸を紡いだりする道具が幾つか置かれていた。
「これは、ここの者で腕に覚えがある者が作った試作です。なかなかいいモノですぞ」
ふむ、素人目の俺では判断ができないが、細かいところも丁寧に作られていて、試してみたがスムーズに動くし、いいんじゃないか、これ。
「確かにいい腕だな」
カイコの小屋に置いてあったものよりも格段に作りがいいと思うぞ。
こんなにいい腕なら、普通に町で働けたんじゃないの? という俺の不思議顔を見たラスキン博士は苦笑する。
「こいつは足がダメでしてね。事故で一人立ちする前に片足が動きにくくなった。そこで勤めていた棟梁からクビになって食い詰めたんです」
「……。いやいや、ここまでできるなら手作業の仕事とかもあっただろう?」
家具や細工物作るとか、部品だけ作って誰かに組み立ててもらうとか、と言いたいが、また商業ギルド案件だと困るので口を噤む。
ラスキン博士曰く、一人立ちする前にクビになった職人は半人前。どこかに雇ってもらわないと仕事はできないのが常識だそうだ。
「もったいないなー、こんなに丁寧な仕事なのに」
俺はクルクルと糸車を回して口を尖らせた。
「それは、本人が聞いたら喜ぶでしょう」
ちょっと話が逸れちゃったけど、今日、ラスキン博士のところを訪れたのは、この西側領地サレルノの完成図を見せにきたのだ!
「こ、これは!」
「ふふん。すごいだろう。クラークたちの承認も得ているし、資金は隣のハーディング侯爵様が援助してくれる。どうせ何年後には大儲けするんだ、ケチケチしないで、パァーッと派手に作ってやろうぜ!」
西側領地サレルノ。
広大な畑には綿花と亜麻。輪作用の芋などの野菜を栽培。ついでに薬草園も作る。
カイコの飼育場、餌のクワの林。ほかにも果樹などを植えるつもりだ。
ハーディング侯爵領とオールポート領を結ぶ街道インヴェルノの街道沿いには四季それぞれに咲く花を植える。
建物は製糸工場、製布工場、染色工場がある。これは前の世界のなんちゃら遺産に認定された工場をモデルにする。レンガ造りの建物だ。
んで、働く人の住む場所は独り者用の寮、アパート、家族用の一軒家タイプと取りそろえる。
高齢者が住む場所には集会所と子どもを預かる保育所を併設させ、見守り環境を整える。
ここが我が領の一大産業となるので、騎士たちの駐屯所も建てておく。騎士を常在させ治安の悪化を防ぐ。
あ、クラークに頼んで役所の出張所も建てておこう。
「そのほか、生活に必要なものは揃えるつもりだ。医者も必要だし、人が増えれば食料や生活用品を売る店や飲食店などもほしいだろう?」
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楽しかったよなーっ、この予定図作るの。むふふふ。
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