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領地経営編②
領主、イメージ戦略に戸惑う
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こうして領都クレモナのメインストリート、プリマヴェーラ通りに新しくお洒落なお店が開店することになった。
店主のライオネルは、まあ、からかいがいがある好人物ではある。あと、シャーロットちゃんのことを褒めて褒めて褒めまくる、いい奴だ。
ちょっと騙されやすいから、そこはケイシーさんがしっかりと面倒をみてもらいたい。君もクリモナ担当で大変だろうけど、どうせライオネルにワンピースとか頼んでるんでしょ? ちゃんと賄賂分は働いてね。
「や、やっぱりシャーロット様は肌の色が白いですから、濃い色もお似合いです」
「そ、そうですか?」
テレテレしているシャーロットちゃん、ゲキカワッ!
「お~い、ライオネル。シャーロットちゃんに似合う靴や帽子とかも選んでくれー」
「は、はいいいぃぃぃぃっ」
なんで俺には緊張するかね? ただの白豚よ? 伯爵権限で何かしようにも、お前のバックにはイライアス様がいるだろうがっ。
「セシル様……あの人大丈夫ですかね?」
ライオネルのビビり具合にちょっと腰が引けていたディーンが、こそっと俺の耳に囁く。……が、そんなことは知らん。
「大丈夫じゃないか? 針子の腕はたしかだし、デザイナーとしてもイライアス様は太鼓判を押していたからな。だいたい大丈夫じゃないと、これからサレルノの事業にも協力してもらうのに、困るだろう」
「……別に、もう男の恰好でもいいのでは?」
「落ち着くんだってよ。まぁ、似合っているからいいじゃん」
俺がドレス着ているわけでもないし、ライオネルはちょっと猫背だがセンスはいいからな。ドレス姿もよく似合っていると思うぞ。
ディーンは首を捻りながらもその後は黙っていた。
大丈夫だって、お前たちにまでドレス姿を強要することはない……たぶんな。
無事に店の確認と買い物を終え、ケイシーさんと別れトビーの店まで歩いてきた。
まだトビーの店は完成していないが、厨房を使うには問題がないのでトビーたちはここでしこたま菓子を作り屋台を出して売っている。
俺の目論見通りプリンが爆発的に売れているらしい、ふふふ。
「いらっしゃいませ!」
リタの元気な声で迎えられて、俺たちは二階の客席へと移動した。
俺も白豚の体でありながら危なげなく階段を華麗に上って見せる。
ブヒブヒ。息が上がるのは許せ。
俺とシャーロットちゃん……で座るのはまだ会話が途切れてしまうから、シャーロットちゃんとマリーで座ってもらい、俺はディーンと顔を突き合わせる。ちっ。
「こちらパンケーキです!」
リタが運んできたパンケーキはふっくらと厚く膨らみボリューミー。真っ白いお皿にデデーンと乗せて生クリームとイチゴが飾られ、たっぷりと蜂蜜がかかっている。
「おおーっ、キレイじゃないか!」
トビーたちもなんとかデコレーションに慣れてきたみたいだな……って、オイッ!
目の前でパンケーキの皿がスーッとディーンの前に置かれる。
俺のは?
「セシル様には、こちらです」
トンっておかれた白くてもったりとした……これ、ヨーグルトか……。飾りでイチゴが乗っているけど……蜂蜜すらもかかってない。
しょぼーん。
「セシル様。ダイエット中でしょ? そろそろ停滞期? なんだか厄介な時期になるって嘆いていたでしょ。油断しちゃダメですよ」
ディーンがニヤニヤしながらパンケーキを口に運ぶのが憎らしい。
キーッ! 食い物の恨みは恐ろしいんだからなっ。覚えておけよ!
「あのぅ……セシル様?」
「ああ? あ、すまん。なんだ、リタ」
「ちょっと、お耳を……」
うん? なんだ、なんだ? え? ええーっ、それは一大事だっ!
「ちょっ、ちょっと俺は席を外す。シャーロットちゃんたちはゆっくり食べてなさい!」
ガタガタと椅子から音を立てて立ち上がり、バタバタと階段を下りていく。階下には困った顔をしたトビーとヘクターとヘレン兄妹、そして暗い顔をしたクラークが立っていた。
「ど、どうして?」
「セシル様。正式に苦情が届きました。シャーロット様のことで……」
とにかく、シャーロットちゃんの耳に入らないように俺たちは足早にトビーの店から離れる。
「苦情って誰から?」
「それが……匿名です。ですが、正式な書式でもって持ち込まれた文書ですので、無碍にできません」
「うう~っ、いったいどこのどいつだ! シャーロットちゃんを悪役令嬢呼ばわりしているのは!」
ドスドスと俺の足音が響くと、何事かと店の改装工事をしている職人たちがひょっこりと顔を出す。
「とにかく、何か対策を講じなければ……王都でも噂になっていると聞きました」
「そうなんだよ。貴族間のことは兄上のパートナーであるイライアス様に頼もうと思っていたんだが……」
セシル君のせいで引きこもりだったシャーロットちゃんの人となりを知っている領民なんてほとんどいないし。春の社交シーズンで領都クレモナで開催したイベントも参加したのは下位貴族の子女がほとんどで、領民とシャーロットちゃんが交流することは皆無だったらしい。
とりあえず役所の中に入り応接室へと案内される。俺とクラークはともかく、流れでトビーたちも役所まで来てしまった。
「セシル様。とにかくシャーロット様のイメージを変えることが大事です」
「イメージ……」
「ええ。シャーロット様のご様子もだいぶ健康的になってきました。ここでもっと領民との交流をしていきましょう!」
交流って……どうすればいいの? 俺だって領民との交流なんてことしてないよ? そりゃサレルノの住民とはやりとりしているけど……クレモナの住民とはあんまりしてない。新しく店を開店する人たちとは接触はあるが……ほぼ外部からの移住組だもんな。
「はい!」
「ん? なんだヘレン。何かいい案でもあるのか?」
「はい。領主様と領民との交流……ってよくわからないんですけど、孤児院とか慰問はどうですか?」
ああーっ! それ、よく本とかであるよね? 貴族が教会に寄付したり孤児院に慰問したりとか……。
ふふふ、たしかに領民へのアピールにはいいかもしれないぞ。白豚の勘がピピーンと反応してるぜ。
店主のライオネルは、まあ、からかいがいがある好人物ではある。あと、シャーロットちゃんのことを褒めて褒めて褒めまくる、いい奴だ。
ちょっと騙されやすいから、そこはケイシーさんがしっかりと面倒をみてもらいたい。君もクリモナ担当で大変だろうけど、どうせライオネルにワンピースとか頼んでるんでしょ? ちゃんと賄賂分は働いてね。
「や、やっぱりシャーロット様は肌の色が白いですから、濃い色もお似合いです」
「そ、そうですか?」
テレテレしているシャーロットちゃん、ゲキカワッ!
「お~い、ライオネル。シャーロットちゃんに似合う靴や帽子とかも選んでくれー」
「は、はいいいぃぃぃぃっ」
なんで俺には緊張するかね? ただの白豚よ? 伯爵権限で何かしようにも、お前のバックにはイライアス様がいるだろうがっ。
「セシル様……あの人大丈夫ですかね?」
ライオネルのビビり具合にちょっと腰が引けていたディーンが、こそっと俺の耳に囁く。……が、そんなことは知らん。
「大丈夫じゃないか? 針子の腕はたしかだし、デザイナーとしてもイライアス様は太鼓判を押していたからな。だいたい大丈夫じゃないと、これからサレルノの事業にも協力してもらうのに、困るだろう」
「……別に、もう男の恰好でもいいのでは?」
「落ち着くんだってよ。まぁ、似合っているからいいじゃん」
俺がドレス着ているわけでもないし、ライオネルはちょっと猫背だがセンスはいいからな。ドレス姿もよく似合っていると思うぞ。
ディーンは首を捻りながらもその後は黙っていた。
大丈夫だって、お前たちにまでドレス姿を強要することはない……たぶんな。
無事に店の確認と買い物を終え、ケイシーさんと別れトビーの店まで歩いてきた。
まだトビーの店は完成していないが、厨房を使うには問題がないのでトビーたちはここでしこたま菓子を作り屋台を出して売っている。
俺の目論見通りプリンが爆発的に売れているらしい、ふふふ。
「いらっしゃいませ!」
リタの元気な声で迎えられて、俺たちは二階の客席へと移動した。
俺も白豚の体でありながら危なげなく階段を華麗に上って見せる。
ブヒブヒ。息が上がるのは許せ。
俺とシャーロットちゃん……で座るのはまだ会話が途切れてしまうから、シャーロットちゃんとマリーで座ってもらい、俺はディーンと顔を突き合わせる。ちっ。
「こちらパンケーキです!」
リタが運んできたパンケーキはふっくらと厚く膨らみボリューミー。真っ白いお皿にデデーンと乗せて生クリームとイチゴが飾られ、たっぷりと蜂蜜がかかっている。
「おおーっ、キレイじゃないか!」
トビーたちもなんとかデコレーションに慣れてきたみたいだな……って、オイッ!
目の前でパンケーキの皿がスーッとディーンの前に置かれる。
俺のは?
「セシル様には、こちらです」
トンっておかれた白くてもったりとした……これ、ヨーグルトか……。飾りでイチゴが乗っているけど……蜂蜜すらもかかってない。
しょぼーん。
「セシル様。ダイエット中でしょ? そろそろ停滞期? なんだか厄介な時期になるって嘆いていたでしょ。油断しちゃダメですよ」
ディーンがニヤニヤしながらパンケーキを口に運ぶのが憎らしい。
キーッ! 食い物の恨みは恐ろしいんだからなっ。覚えておけよ!
「あのぅ……セシル様?」
「ああ? あ、すまん。なんだ、リタ」
「ちょっと、お耳を……」
うん? なんだ、なんだ? え? ええーっ、それは一大事だっ!
「ちょっ、ちょっと俺は席を外す。シャーロットちゃんたちはゆっくり食べてなさい!」
ガタガタと椅子から音を立てて立ち上がり、バタバタと階段を下りていく。階下には困った顔をしたトビーとヘクターとヘレン兄妹、そして暗い顔をしたクラークが立っていた。
「ど、どうして?」
「セシル様。正式に苦情が届きました。シャーロット様のことで……」
とにかく、シャーロットちゃんの耳に入らないように俺たちは足早にトビーの店から離れる。
「苦情って誰から?」
「それが……匿名です。ですが、正式な書式でもって持ち込まれた文書ですので、無碍にできません」
「うう~っ、いったいどこのどいつだ! シャーロットちゃんを悪役令嬢呼ばわりしているのは!」
ドスドスと俺の足音が響くと、何事かと店の改装工事をしている職人たちがひょっこりと顔を出す。
「とにかく、何か対策を講じなければ……王都でも噂になっていると聞きました」
「そうなんだよ。貴族間のことは兄上のパートナーであるイライアス様に頼もうと思っていたんだが……」
セシル君のせいで引きこもりだったシャーロットちゃんの人となりを知っている領民なんてほとんどいないし。春の社交シーズンで領都クレモナで開催したイベントも参加したのは下位貴族の子女がほとんどで、領民とシャーロットちゃんが交流することは皆無だったらしい。
とりあえず役所の中に入り応接室へと案内される。俺とクラークはともかく、流れでトビーたちも役所まで来てしまった。
「セシル様。とにかくシャーロット様のイメージを変えることが大事です」
「イメージ……」
「ええ。シャーロット様のご様子もだいぶ健康的になってきました。ここでもっと領民との交流をしていきましょう!」
交流って……どうすればいいの? 俺だって領民との交流なんてことしてないよ? そりゃサレルノの住民とはやりとりしているけど……クレモナの住民とはあんまりしてない。新しく店を開店する人たちとは接触はあるが……ほぼ外部からの移住組だもんな。
「はい!」
「ん? なんだヘレン。何かいい案でもあるのか?」
「はい。領主様と領民との交流……ってよくわからないんですけど、孤児院とか慰問はどうですか?」
ああーっ! それ、よく本とかであるよね? 貴族が教会に寄付したり孤児院に慰問したりとか……。
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