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領地経営編③
領主、神獣を崇める
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タロウとハナコが神獣……無理がある。あいつらはちょっと頭が良い狼が魔獣化したものである。たまたま狼の群れのリーダー夫妻が魔獣化したので、群れの子分狼がそのまま付き従っているけれども、タロウとハナコが体内に取り込んだ魔素に自我がやられていたら、もれなく子分狼どもも餌と認識されいたはず。
……って説明しても、こんな山ん中からさっさと王都へ帰りたい騎士たちには納得してもらえないんだろうなぁ。
「ふむ。セシル様のその推察、ワシは賛成じゃ。こいつらはとにかく通常の魔獣とは比べられんくらいに知能が発達しておる。ワシらと意思疎通ができるだけでなく、この山の脅威となる熊の魔獣の排除に動いた。しかも、子分狼どもをあちこち偵察に配することもできる。まさに神獣と崇めてもいい!」
崇めちゃダメでしょ? 魔獣は魔獣なんだから。
「ラスキン博士ですか? 王都学園で教鞭をとっていらした?」
おや? 王国騎士団の中でもラスキン博士を知っている奴がいたか。よかった、よかった。ラスキン博士が自称博士だったらどうしようと思ったよ。
「いかにも。ワシが王都学園で魔獣学、魔素哲学を教えていたラスキンじゃ。陛下から賜った勲章でも証拠に見せてやろうか?」
「はあああぁっ? 爺さん、そんなモノ持ってんの? 俺にも見せてくれたことないじゃんか」
おいおい、そんな大層なモノを持っているなら、まずは領主である俺に見せてよ! え? あとでじっくりと見せてやるって? ありがとう。わーい、ベンジャミンたちに帰ったら自慢しようっと!
「コホン。ラスキン博士が討伐をためらうのであれば、その狼たちには何かあるのでしょうけど、神獣というのは……」
「すぐに神獣認定はできん、だろう? そんなことはワシだってわかっておる。だから、ここヴァゼーレに魔獣研究所を設けタロウとハナコを観察すればいいのじゃ」
なに勝手に人の領地に研究所を作ろうと画策してやがる。しかも、ラスキン博士がここに常駐しちゃったら、今度はサレルノの開発が滞ってしまうでしょうが。
俺の非難がましい視線に、ラスキン博士は咳払いを一つして、話を続けた。
「ワシの知り合いや教え子にも声をかければ、研究所で働きたい者や出資者も集まるだろう。ワシはサレルノにいて、年に数回程度、研究所を訪れることにする」
「……決定事項かよ」
「ワシが声をかければ人材は集まってくる。ちょうど秋に王都へ行って旧交を暖めてきたしのぅ。研究所も陛下に強請れば用意してくるぞ」
爺さん……なんでそんな国家権力に影響力があるの? 俺が知らないだけでもしかして本当は凄い人だった?
「失礼ながら、その研究所について、我がウェントブルック家も是非協力したい」
静かに、じっと俺を見つめていたセシル君の元カレ。王国騎士団の副団長様がここにきて参戦。しかも、魔獣討伐反対派に味方するような発言。騎士団の面々は唖然茫然。
「ウェントブルック家も数々の魔獣に苦しめられてきました。ラスキン博士の魔獣学によって、効率よく討伐が進められるようになり、博士の学説に異を唱えることなどできません。セシルが……ラスキン博士があの魔獣を神獣だと仰るなら、ウェントブルック家も賛同いたします」
キリリと発言しているけど、お前はウェントブルック家から独立して騎士団に入ってるから、ウェントブルック家の後光は使えないのでは? 俺は兄上と父上の余りある愛があるから、ハーディング家の後光は使いまくるけど。
「……あのぅ、とりあえず、町まで帰りませんか?」
ハリーよ、お前の言う通りだ。
輿に乗せられて戻ってきました鉱山町の役所。熊の魔獣はどうすんのかな? と思っていたら騎士たちが運んで持ってきたよ。よくある話だけど魔獣化してあれこれ強化している爪とか牙とか毛皮とかは上等な素材として市場に売り渡されるらしい。もちろん、オールポート家の収入だ。さっきセシル君の元カレに売ったらから。高値で。ラスキン博士の査定ありで色を付けて売りました!
「あの熊は高く売れる。なにせ、ほとんどない二段階の魔獣化をした個体じゃ。学術的にも興味があるぞい」
なんでも、あの目が真っ赤になって角がニョッキリと生えたのは、魔獣化の二段階目として魔獣が命の危機を感じて変じる珍しい状態らしい。なので角もいい値段になりました。やったー!
で、いつもの役所の執務室に俺とディーン、ラスキン博士、ハリソンとレナード、ブランドン。王国騎士団のルーカス副団長とその補佐二人で会談中です。ああ……忘れてた。いや、忘れたかった。俺の隣でヘッヘッと舌を出してお座りしているタロウと、部屋の隅にクッションを敷き詰めた上にゴロリと横になり、四つの毛玉に授乳中のハナコ。それを見守り何かに目覚めたメイもいます。
なにこの、カオス! いやあああぁぁぁぁっ、現実逃避ぃぃぃぃぃ。俺は今すぐ現実から目を背けたいいいいぃぃぃぃぃっ。
「では、セシル様。今後のことを話し合いましょう」
「……はい」
ブランドンは中立の立場として、この会談を仕切ってもらいます。クラーク? あいつはこの面々を見て面倒ごとだと悟り、鉱山の採掘量と売買契約書の照合をすると言って部屋に籠ってしまった。
裏切り者めーっ!
そして、前を見ればニコリと微笑む美麗な騎士様。ふええええぇっ、俺、この人に記憶がないことバレたらダメなんだよなぁ?
……って説明しても、こんな山ん中からさっさと王都へ帰りたい騎士たちには納得してもらえないんだろうなぁ。
「ふむ。セシル様のその推察、ワシは賛成じゃ。こいつらはとにかく通常の魔獣とは比べられんくらいに知能が発達しておる。ワシらと意思疎通ができるだけでなく、この山の脅威となる熊の魔獣の排除に動いた。しかも、子分狼どもをあちこち偵察に配することもできる。まさに神獣と崇めてもいい!」
崇めちゃダメでしょ? 魔獣は魔獣なんだから。
「ラスキン博士ですか? 王都学園で教鞭をとっていらした?」
おや? 王国騎士団の中でもラスキン博士を知っている奴がいたか。よかった、よかった。ラスキン博士が自称博士だったらどうしようと思ったよ。
「いかにも。ワシが王都学園で魔獣学、魔素哲学を教えていたラスキンじゃ。陛下から賜った勲章でも証拠に見せてやろうか?」
「はあああぁっ? 爺さん、そんなモノ持ってんの? 俺にも見せてくれたことないじゃんか」
おいおい、そんな大層なモノを持っているなら、まずは領主である俺に見せてよ! え? あとでじっくりと見せてやるって? ありがとう。わーい、ベンジャミンたちに帰ったら自慢しようっと!
「コホン。ラスキン博士が討伐をためらうのであれば、その狼たちには何かあるのでしょうけど、神獣というのは……」
「すぐに神獣認定はできん、だろう? そんなことはワシだってわかっておる。だから、ここヴァゼーレに魔獣研究所を設けタロウとハナコを観察すればいいのじゃ」
なに勝手に人の領地に研究所を作ろうと画策してやがる。しかも、ラスキン博士がここに常駐しちゃったら、今度はサレルノの開発が滞ってしまうでしょうが。
俺の非難がましい視線に、ラスキン博士は咳払いを一つして、話を続けた。
「ワシの知り合いや教え子にも声をかければ、研究所で働きたい者や出資者も集まるだろう。ワシはサレルノにいて、年に数回程度、研究所を訪れることにする」
「……決定事項かよ」
「ワシが声をかければ人材は集まってくる。ちょうど秋に王都へ行って旧交を暖めてきたしのぅ。研究所も陛下に強請れば用意してくるぞ」
爺さん……なんでそんな国家権力に影響力があるの? 俺が知らないだけでもしかして本当は凄い人だった?
「失礼ながら、その研究所について、我がウェントブルック家も是非協力したい」
静かに、じっと俺を見つめていたセシル君の元カレ。王国騎士団の副団長様がここにきて参戦。しかも、魔獣討伐反対派に味方するような発言。騎士団の面々は唖然茫然。
「ウェントブルック家も数々の魔獣に苦しめられてきました。ラスキン博士の魔獣学によって、効率よく討伐が進められるようになり、博士の学説に異を唱えることなどできません。セシルが……ラスキン博士があの魔獣を神獣だと仰るなら、ウェントブルック家も賛同いたします」
キリリと発言しているけど、お前はウェントブルック家から独立して騎士団に入ってるから、ウェントブルック家の後光は使えないのでは? 俺は兄上と父上の余りある愛があるから、ハーディング家の後光は使いまくるけど。
「……あのぅ、とりあえず、町まで帰りませんか?」
ハリーよ、お前の言う通りだ。
輿に乗せられて戻ってきました鉱山町の役所。熊の魔獣はどうすんのかな? と思っていたら騎士たちが運んで持ってきたよ。よくある話だけど魔獣化してあれこれ強化している爪とか牙とか毛皮とかは上等な素材として市場に売り渡されるらしい。もちろん、オールポート家の収入だ。さっきセシル君の元カレに売ったらから。高値で。ラスキン博士の査定ありで色を付けて売りました!
「あの熊は高く売れる。なにせ、ほとんどない二段階の魔獣化をした個体じゃ。学術的にも興味があるぞい」
なんでも、あの目が真っ赤になって角がニョッキリと生えたのは、魔獣化の二段階目として魔獣が命の危機を感じて変じる珍しい状態らしい。なので角もいい値段になりました。やったー!
で、いつもの役所の執務室に俺とディーン、ラスキン博士、ハリソンとレナード、ブランドン。王国騎士団のルーカス副団長とその補佐二人で会談中です。ああ……忘れてた。いや、忘れたかった。俺の隣でヘッヘッと舌を出してお座りしているタロウと、部屋の隅にクッションを敷き詰めた上にゴロリと横になり、四つの毛玉に授乳中のハナコ。それを見守り何かに目覚めたメイもいます。
なにこの、カオス! いやあああぁぁぁぁっ、現実逃避ぃぃぃぃぃ。俺は今すぐ現実から目を背けたいいいいぃぃぃぃぃっ。
「では、セシル様。今後のことを話し合いましょう」
「……はい」
ブランドンは中立の立場として、この会談を仕切ってもらいます。クラーク? あいつはこの面々を見て面倒ごとだと悟り、鉱山の採掘量と売買契約書の照合をすると言って部屋に籠ってしまった。
裏切り者めーっ!
そして、前を見ればニコリと微笑む美麗な騎士様。ふええええぇっ、俺、この人に記憶がないことバレたらダメなんだよなぁ?
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