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恋愛編① 冬ごもり
セシル、バレる
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オールポート領の屋敷で、初冬の日差しを浴びてポカポカと……現実逃避中の白豚です。
ヴァゼーレでの魔獣騒ぎも無事に収束し、宝石が採れなくった三つの鉱山には新しく魔石が採掘できるようになっていて、万々歳。王家には兄上とシャーロットちゃんで諸々報告済で、無事にオールポート領の魔石鉱山として登録された。今後はその魔石の質と現在の埋蔵量の調査があり、その調査は俺の実家であるハーディング侯爵家の協力で順調に行われるはずだ。
なんと! 父上が既に専門家たちを連れてヴァゼーレに出発している。今ごろは現地でハーディング家の騎士であるブランドンたちと再会しているだろう。
そう、ヴァゼーレにはハーディング家の騎士たちが駐屯しています。オールポート家の騎士たちは人数が少なかったし、職務怠慢であったが騎士団長のハリソンは俺の護衛騎士なので! あいつは、狩りをして酒を飲んでるだけだったが、一応主人である俺の護衛騎士なので! 俺と離れてヴァゼーレに置いていくにはいかず、結局ヴァゼーレにはブランドンたちに残ってもらったんだ。
冬を前にしてヴァゼーレの住民たちは、田舎に帰ったり、出稼ぎに旅立つなど移動をし始めていて、残っている住民は減っていたから、そんなに問題は起きないと思うけど……。ほら、ヴァゼーレを牛耳っていたレナードたちをこっちに連れて来ちゃったからね? その代わりにブランドンたちを置いてきたってわけ。
レナードたち元傭兵集団は、今は楽しそうにハリソンたちと訓練をしています。そう……騎士たちに交って剣術訓練中なのだ!
俺は、今後のヴァゼーレに必要な常駐の騎士……はムリでも兵士を配置しようと思って、レナードたちを勧誘したんだ。元々傭兵だったから腕に自信はあるだろうし、レナードをトップにまとまっているから、こちらの指導教育の手間が減るというメリットがあった。
レナードはともかく、その部下たちは命を懸けたその日暮らしの傭兵稼業から離れて、鉱山夫として地に足をつけた生活をしていく内に考えを変えた者も多かった。ここで住み慣れたヴァゼーレを守る兵士として雇用されれば、もっと生活に余裕が出るし、所帯を持つことも可能かもしれない……と欲も出た。
こうして、俺の姦計と部下たちの懇願もあり、自由を愛するレナードが落ちた。
ハリソンも全力でやり合える相手がいて満足だろう。だがしかし、ヴァゼーレで護衛対象の俺を放置した罪は罰せられる。しばらく禁酒と肉なし食事で反省しなさい!
王都で見事伯爵代理の努めを果たしたシャーロットちゃんは、まだ兄上と一緒に王都で足止めである。父上からの魔石調査報告が王家に提出され正式に採掘許可が出れば、戻ってこれるだろうと……。ええ、大丈夫? 冬の間、別々に暮らすなんてお父様は耐えられません! 寂しいし、別の理由があるからねぇ。
「セシル。そろそろ執務に戻ろう」
「キュウン」
……ほら、頭の痛い問題がやってきた。
果たして……なぜ、王国騎士団の副団長で多忙のはずのルーカス・ウェントブルックがオールポートの屋敷に滞在しているのか? 俺の記憶喪失の件は優秀でハイパー伯爵様である俺が見事に誤魔化しているのか? そう、疑問を持つことだろう。
……ちっくしょうううううううぅぅぅぅぅっ! バレたよっ。すぐにバレたよ! ものすっごく、単純なことでバレたよっ。
そもそも、ヴァゼーレから帰る俺たちの馬車の護衛という名目で、こいつが同行すると言い張ったときから、イヤな予感はしていた。そりゃ、もうビシバシと感じていた。断固拒否したかったし、していたんだが……。
「でも、その仔狼は一応、魔獣ですから。俺が同行し安全を確認します。もし……同行を拒否するなら仕方ありません。後顧の憂いは絶っておきましょう」
笑顔で魔獣用の武器、剣を鞘からスラリと抜きやがったんだよっ。かわいそうだろう? タロウたちから託された仔狼なんだぞ? しかも、傷つけたらタロウとハナコに報復されるだろうがっ。
渋々、俺の帰途の護衛を許し、なるべく接触しないよう大人しくして……、まぁ馬車の中で仔狼と戯れてはいたが……。明日には屋敷に帰れるヒャッホーと浮かれて、町の宿屋の夕飯に舌鼓を打っていたときに事件は起きた!
「あれ? セシル……それ食べれるようになったの?」
超ウルトラ美形の男があざとくコテンと首を傾げるんじゃねぇ、と怒鳴ってやりたいが、その気持ちをゴックンと飲み込んだ俺は眉を顰めて問うた。
「俺は、食い物に好き嫌いはないぞ」
モグモグとよく噛んで食べている。ここ最近の運動不足でダイエットが中断されているからな。食事はバランスよく、ゆっくりとよく噛んで食べているが、好き嫌いはないぞ?
「……そう」
ルーカス副団長はそのときは深く突っ込んではこなかった。周りにディーンやラスキン博士たちがいたからだと思う。でも単純な俺は、ルーカスが何か勘違いしていたんだろうと、楽観的に考えていたのだ。あ~バカ、バカ。俺のおバカさん。
そして、その日の夜。逃げ場のない宿屋の一室で壁際に追い込まれる白豚が一匹。ブヒブヒ。
「さて、教えてくれるか? あんなに苦手で一生口にしないと誓ったイチゴを美味しそうに食べていた理由を?」
へ? イチゴ?
セシルくーんっ! 君は天使みたいな愛くるしい容貌でイチゴが嫌いって、おかしいでしょーがーっ!
ヴァゼーレでの魔獣騒ぎも無事に収束し、宝石が採れなくった三つの鉱山には新しく魔石が採掘できるようになっていて、万々歳。王家には兄上とシャーロットちゃんで諸々報告済で、無事にオールポート領の魔石鉱山として登録された。今後はその魔石の質と現在の埋蔵量の調査があり、その調査は俺の実家であるハーディング侯爵家の協力で順調に行われるはずだ。
なんと! 父上が既に専門家たちを連れてヴァゼーレに出発している。今ごろは現地でハーディング家の騎士であるブランドンたちと再会しているだろう。
そう、ヴァゼーレにはハーディング家の騎士たちが駐屯しています。オールポート家の騎士たちは人数が少なかったし、職務怠慢であったが騎士団長のハリソンは俺の護衛騎士なので! あいつは、狩りをして酒を飲んでるだけだったが、一応主人である俺の護衛騎士なので! 俺と離れてヴァゼーレに置いていくにはいかず、結局ヴァゼーレにはブランドンたちに残ってもらったんだ。
冬を前にしてヴァゼーレの住民たちは、田舎に帰ったり、出稼ぎに旅立つなど移動をし始めていて、残っている住民は減っていたから、そんなに問題は起きないと思うけど……。ほら、ヴァゼーレを牛耳っていたレナードたちをこっちに連れて来ちゃったからね? その代わりにブランドンたちを置いてきたってわけ。
レナードたち元傭兵集団は、今は楽しそうにハリソンたちと訓練をしています。そう……騎士たちに交って剣術訓練中なのだ!
俺は、今後のヴァゼーレに必要な常駐の騎士……はムリでも兵士を配置しようと思って、レナードたちを勧誘したんだ。元々傭兵だったから腕に自信はあるだろうし、レナードをトップにまとまっているから、こちらの指導教育の手間が減るというメリットがあった。
レナードはともかく、その部下たちは命を懸けたその日暮らしの傭兵稼業から離れて、鉱山夫として地に足をつけた生活をしていく内に考えを変えた者も多かった。ここで住み慣れたヴァゼーレを守る兵士として雇用されれば、もっと生活に余裕が出るし、所帯を持つことも可能かもしれない……と欲も出た。
こうして、俺の姦計と部下たちの懇願もあり、自由を愛するレナードが落ちた。
ハリソンも全力でやり合える相手がいて満足だろう。だがしかし、ヴァゼーレで護衛対象の俺を放置した罪は罰せられる。しばらく禁酒と肉なし食事で反省しなさい!
王都で見事伯爵代理の努めを果たしたシャーロットちゃんは、まだ兄上と一緒に王都で足止めである。父上からの魔石調査報告が王家に提出され正式に採掘許可が出れば、戻ってこれるだろうと……。ええ、大丈夫? 冬の間、別々に暮らすなんてお父様は耐えられません! 寂しいし、別の理由があるからねぇ。
「セシル。そろそろ執務に戻ろう」
「キュウン」
……ほら、頭の痛い問題がやってきた。
果たして……なぜ、王国騎士団の副団長で多忙のはずのルーカス・ウェントブルックがオールポートの屋敷に滞在しているのか? 俺の記憶喪失の件は優秀でハイパー伯爵様である俺が見事に誤魔化しているのか? そう、疑問を持つことだろう。
……ちっくしょうううううううぅぅぅぅぅっ! バレたよっ。すぐにバレたよ! ものすっごく、単純なことでバレたよっ。
そもそも、ヴァゼーレから帰る俺たちの馬車の護衛という名目で、こいつが同行すると言い張ったときから、イヤな予感はしていた。そりゃ、もうビシバシと感じていた。断固拒否したかったし、していたんだが……。
「でも、その仔狼は一応、魔獣ですから。俺が同行し安全を確認します。もし……同行を拒否するなら仕方ありません。後顧の憂いは絶っておきましょう」
笑顔で魔獣用の武器、剣を鞘からスラリと抜きやがったんだよっ。かわいそうだろう? タロウたちから託された仔狼なんだぞ? しかも、傷つけたらタロウとハナコに報復されるだろうがっ。
渋々、俺の帰途の護衛を許し、なるべく接触しないよう大人しくして……、まぁ馬車の中で仔狼と戯れてはいたが……。明日には屋敷に帰れるヒャッホーと浮かれて、町の宿屋の夕飯に舌鼓を打っていたときに事件は起きた!
「あれ? セシル……それ食べれるようになったの?」
超ウルトラ美形の男があざとくコテンと首を傾げるんじゃねぇ、と怒鳴ってやりたいが、その気持ちをゴックンと飲み込んだ俺は眉を顰めて問うた。
「俺は、食い物に好き嫌いはないぞ」
モグモグとよく噛んで食べている。ここ最近の運動不足でダイエットが中断されているからな。食事はバランスよく、ゆっくりとよく噛んで食べているが、好き嫌いはないぞ?
「……そう」
ルーカス副団長はそのときは深く突っ込んではこなかった。周りにディーンやラスキン博士たちがいたからだと思う。でも単純な俺は、ルーカスが何か勘違いしていたんだろうと、楽観的に考えていたのだ。あ~バカ、バカ。俺のおバカさん。
そして、その日の夜。逃げ場のない宿屋の一室で壁際に追い込まれる白豚が一匹。ブヒブヒ。
「さて、教えてくれるか? あんなに苦手で一生口にしないと誓ったイチゴを美味しそうに食べていた理由を?」
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