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領地経営編③
理人、さらばその愛……?
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俺が死んでから……そろそろ一年が経とうとしている。
時間が経つのは早いなぁ。家族も少しずつ俺の不在に慣れ、姉ちゃんは結婚が決まった。あれだけハイスペを捕まえると豪語していたのに、蓋を開けてみれば高校の同級生というベタな展開だったけど、俺はその人、いいと思う。サムズアップをしておきます。家族には見えないだろうけどね。
俺を階段から突き落とした元カノは、罪としては軽いと思うけど社会的には抹殺されたも同然……らしい。元同僚たちの給湯室トークで知った。引っ越ししても、養子縁組で名前を変えても、必ず俺への悪行がバレるらしく、生活もままならない状態だと。
ん? 誰かの仕業か? それとも自業自得なのか? ま、いいか。
俺も生まれ変わって白豚として健気に頑張っているけれど、時々こうして前世の夢を見る。夢だよ? 夢、夢。夢にしておかないと、俺の親友の気持ちが重すぎて嫌だ。
俺の親友であり、この世の才能という才能、美という美に恵まれた、ちょっと恵まれすぎて自分と比べる気もおきないという、グローバル企業の創業一族ご出身の超絶お金持ちは俺にもお恵みのあるステータスだった。
理人は、いい奴だけど、いい奴なんだけど……俺が不慮の事故でこの世を去ってから、少しセーブが効かない困った人になってしまった。まずは生活が乱れた。メシは食わない、夜は眠れない。会社に行って仕事はしているけど、周りとコミュニケーションを取らない。あんなに女性社員からの人気が高かったのに、チャライ独身社員にその座を奪われ、営業、企画などの花形職から、研究職へと異動になり、ますます人と接する機会が失われていった。
再三、実家から戻ってこいコールがあり、用意された席はグローバル企業の取締役ランク。なのに、理人は実家とは距離があるみたいで、あまり関わりたくなさそうだ。
父親は仕事が忙しくほぼ会うことはないみたいだが、母親がうるさい。家に戻ってこいとか、結婚しろとか……。うん、おばさんが理人に結婚を勧めるから、俺としては知りたくなかった理人の想い人を知ることになった。う~っ、ダメだ! それを考えたら俺の頭が沸騰してどうにかなっちまう。
コホン。つまり、理人は俺が死んでから一年経つのに、相変わらず不摂生な生活の廃人ごとき仕事スタイルで実家と攻防を繰り返している。
……理人、お前もいい加減、俺のことは忘れろよ。
そして今日は俺の墓参りに来ている理人。ありがとう。いや、俺の法事は明日だが、理人は明日実家のパーティーに呼ばれて参列できないので、今日一人で墓参りに来てくれている。
俺の大好きな京竹屋の豆大福を供えてくれた。わ~い! うまっ。久しぶりに食べると、めちゃうまっ! これ……トビーの奴、作ってくれないかなぁ?
「拓海……。ごめんな、法事に行けなくて。もういっそ……実家、潰すか……」
うおぉいっ! やめろ、そんな危ない発言、やめれ! ビビッて豆大福が喉詰まるかと焦ったわ! いいよ、いいよ。パーティーに参加して美味いもの食って、高い酒飲んで、キレイな姉ちゃんたちとウハウハしてこいよ。むっ? いいなぁ、俺もキレイな姉ちゃんとウハウハしたああぁぁぁぁぁぁぁぁい!
理人……俺は白豚なのに、超絶エリートのイケメン騎士に纏わりつかれて困っている……。あ、夢なのにマジで人生相談するところだったわ。
フワフワと空に浮かんで豆大福食べて、理人の呟きにツッコミいれて……今日の夢はここまで。
そう……俺は翌日に起きるとんでも事件を夢で見ることなく、豆大福に満足して爽やかに朝を迎えたのだった。
華やかなパーティー。キラキラと輝くシャンデリア。手にグラスを持ち歓談に勤しむ紳士淑女たち。その間をスルスルと動く給仕たち。
主催者家族が登場すれば、張り付けた笑顔で話しかけ、話術に隠れて金を引き出そうと画策する。その愚考を逆手に取り、相手の喉笛に食らいつこうとする女狐は……俺の母親だ。
その後ろに無表情で立っているだけの男は兄。代々、口にもできない非道を尽くして大きく成長させたグローバル企業の跡継ぎ。しかし、なかなか父や一族の年長者からは及第点すらも貰えず、最近はずっと顔色が悪い。
「……っ」
息が詰まる。俺は母と兄の後ろからさりげなく離れ、こちらに寄ってこようとするハイエナたちを避け、パーティー会場である一流ホテルのバルコニーへと逃れた。
冷たい風が頬を撫でる。
母に会うと必ず話題に出る、実家への帰還と結婚話。もう、うんざりだ。このパーティーの後、俺は母と兄に関係を断絶することを伝えるつもりでいる。仕事で忙しいという口実で別の家庭を持つ父には手紙を送付済だ。
俺は……残りの人生を穏やかに過ごしたい。ただ、愛する人を想う日々を過ごしたい。拓海の思い出だけで満たされる人生でありたい。
空を見上げれば濃紺の空に欠けた月が浮かぶ。数多ある星は地上の人工の輝きに邪魔されて見えない。
「……理人」
「あに……き?」
なんで? あんたはパーティーで母にくっついていたのに? なんでこんなところに?
それに……なぜ、俺の胸が熱い? 兄が俺へと突進してきて、ぶつかったところが、熱い……。
「お前が……。お前がいなければ……。俺だって、俺だって、あの人たちに認められたんだ!」
なにを……言っている? ああ……胸から、血が……。俺の血が……流れていく。兄の顔には涙が……流れて。俺の手からは命が流れ……。
俺の口から笑い声と血が零れ落ちた。
「ははは……ハハハッ。あ、ありがとう。ありが、と……う」
ありがとう、これで俺は、拓海に会える。拓海と同じところに行ける。
拓海を愛し続けられる……。
時間が経つのは早いなぁ。家族も少しずつ俺の不在に慣れ、姉ちゃんは結婚が決まった。あれだけハイスペを捕まえると豪語していたのに、蓋を開けてみれば高校の同級生というベタな展開だったけど、俺はその人、いいと思う。サムズアップをしておきます。家族には見えないだろうけどね。
俺を階段から突き落とした元カノは、罪としては軽いと思うけど社会的には抹殺されたも同然……らしい。元同僚たちの給湯室トークで知った。引っ越ししても、養子縁組で名前を変えても、必ず俺への悪行がバレるらしく、生活もままならない状態だと。
ん? 誰かの仕業か? それとも自業自得なのか? ま、いいか。
俺も生まれ変わって白豚として健気に頑張っているけれど、時々こうして前世の夢を見る。夢だよ? 夢、夢。夢にしておかないと、俺の親友の気持ちが重すぎて嫌だ。
俺の親友であり、この世の才能という才能、美という美に恵まれた、ちょっと恵まれすぎて自分と比べる気もおきないという、グローバル企業の創業一族ご出身の超絶お金持ちは俺にもお恵みのあるステータスだった。
理人は、いい奴だけど、いい奴なんだけど……俺が不慮の事故でこの世を去ってから、少しセーブが効かない困った人になってしまった。まずは生活が乱れた。メシは食わない、夜は眠れない。会社に行って仕事はしているけど、周りとコミュニケーションを取らない。あんなに女性社員からの人気が高かったのに、チャライ独身社員にその座を奪われ、営業、企画などの花形職から、研究職へと異動になり、ますます人と接する機会が失われていった。
再三、実家から戻ってこいコールがあり、用意された席はグローバル企業の取締役ランク。なのに、理人は実家とは距離があるみたいで、あまり関わりたくなさそうだ。
父親は仕事が忙しくほぼ会うことはないみたいだが、母親がうるさい。家に戻ってこいとか、結婚しろとか……。うん、おばさんが理人に結婚を勧めるから、俺としては知りたくなかった理人の想い人を知ることになった。う~っ、ダメだ! それを考えたら俺の頭が沸騰してどうにかなっちまう。
コホン。つまり、理人は俺が死んでから一年経つのに、相変わらず不摂生な生活の廃人ごとき仕事スタイルで実家と攻防を繰り返している。
……理人、お前もいい加減、俺のことは忘れろよ。
そして今日は俺の墓参りに来ている理人。ありがとう。いや、俺の法事は明日だが、理人は明日実家のパーティーに呼ばれて参列できないので、今日一人で墓参りに来てくれている。
俺の大好きな京竹屋の豆大福を供えてくれた。わ~い! うまっ。久しぶりに食べると、めちゃうまっ! これ……トビーの奴、作ってくれないかなぁ?
「拓海……。ごめんな、法事に行けなくて。もういっそ……実家、潰すか……」
うおぉいっ! やめろ、そんな危ない発言、やめれ! ビビッて豆大福が喉詰まるかと焦ったわ! いいよ、いいよ。パーティーに参加して美味いもの食って、高い酒飲んで、キレイな姉ちゃんたちとウハウハしてこいよ。むっ? いいなぁ、俺もキレイな姉ちゃんとウハウハしたああぁぁぁぁぁぁぁぁい!
理人……俺は白豚なのに、超絶エリートのイケメン騎士に纏わりつかれて困っている……。あ、夢なのにマジで人生相談するところだったわ。
フワフワと空に浮かんで豆大福食べて、理人の呟きにツッコミいれて……今日の夢はここまで。
そう……俺は翌日に起きるとんでも事件を夢で見ることなく、豆大福に満足して爽やかに朝を迎えたのだった。
華やかなパーティー。キラキラと輝くシャンデリア。手にグラスを持ち歓談に勤しむ紳士淑女たち。その間をスルスルと動く給仕たち。
主催者家族が登場すれば、張り付けた笑顔で話しかけ、話術に隠れて金を引き出そうと画策する。その愚考を逆手に取り、相手の喉笛に食らいつこうとする女狐は……俺の母親だ。
その後ろに無表情で立っているだけの男は兄。代々、口にもできない非道を尽くして大きく成長させたグローバル企業の跡継ぎ。しかし、なかなか父や一族の年長者からは及第点すらも貰えず、最近はずっと顔色が悪い。
「……っ」
息が詰まる。俺は母と兄の後ろからさりげなく離れ、こちらに寄ってこようとするハイエナたちを避け、パーティー会場である一流ホテルのバルコニーへと逃れた。
冷たい風が頬を撫でる。
母に会うと必ず話題に出る、実家への帰還と結婚話。もう、うんざりだ。このパーティーの後、俺は母と兄に関係を断絶することを伝えるつもりでいる。仕事で忙しいという口実で別の家庭を持つ父には手紙を送付済だ。
俺は……残りの人生を穏やかに過ごしたい。ただ、愛する人を想う日々を過ごしたい。拓海の思い出だけで満たされる人生でありたい。
空を見上げれば濃紺の空に欠けた月が浮かぶ。数多ある星は地上の人工の輝きに邪魔されて見えない。
「……理人」
「あに……き?」
なんで? あんたはパーティーで母にくっついていたのに? なんでこんなところに?
それに……なぜ、俺の胸が熱い? 兄が俺へと突進してきて、ぶつかったところが、熱い……。
「お前が……。お前がいなければ……。俺だって、俺だって、あの人たちに認められたんだ!」
なにを……言っている? ああ……胸から、血が……。俺の血が……流れていく。兄の顔には涙が……流れて。俺の手からは命が流れ……。
俺の口から笑い声と血が零れ落ちた。
「ははは……ハハハッ。あ、ありがとう。ありが、と……う」
ありがとう、これで俺は、拓海に会える。拓海と同じところに行ける。
拓海を愛し続けられる……。
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