転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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恋愛編① 冬ごもり

セシル、冬まつりを知る

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一向に王都へ帰る様子のないルーカスと過ごすこと数日、とうとうシャーロットちゃんが屋敷に帰れるという手紙がきた! やったぁーっと喜んだのも一瞬で、ルーカスとシャーロットちゃんを会わせていいものかと頭を抱え込んだ。

俺はすぐに手紙の返事を書き、事情を説明し兄上も同席してほしいと訴えた。だって、一人で娘と元カレのご対面の状況を耐えられる自信がなかったんだもの。ちなみに仔狼のリヒトのことも、これでもかっ、とかわいい様子を列挙しておいたので、内面乙男オトメンの兄上はもふもふしたくて屋敷に立ち寄るだろうと確信している。わははははっ。

そして、ヴァゼーレにいる父上からは分厚い手紙が届いていた。なにこれ? これ全部読まないとダメ? 便箋何枚あるの、これ? ディーンが澄ました顔で開いた封筒から手紙を出してペラリと開くと……、これって。

「わぁ、すっげぇ。これ、ヴァゼーレの鉱山町の見取り図……ってかなり建物が変わっているような?」

何枚かは町の見取り図つーか設計図で、鉱山までの道の整備案とか、イラストっぽいものだった。字が書いてあるのは二枚ほど。内容は町を作り変えることの了承を求めるのと、これからのヴァゼーレに必要な人やもののリストだった。
父上……他家の領地なのに、なんて細かい配慮なんだ。息子は嬉しいデス! ついでに投資もしてください。

「ヴァゼーレまで作り変えるほどの余力はないからな。投資だっ、投資。父上も魔石鉱山の調査を終えて帰ってくるから、お金を強請らなければ」

ふひひひっと不気味に笑う俺を引き気味で見るディーンと、もの珍しそうに眺めるルーカス。ベンジャミンは父上が書き送ってきた設計図やら整備案に目を通している。

「セシル様。前ハーディング侯爵様の考えですと、この町は魔道具の町として考えておられるようですね」

「そうだな。ラスキン博士の要望どおり魔獣研究所も建てるが、商業ギルドを牽制するために、腕のいい魔道具職人を招致しておきたいって。魔道具の工房をいくつか建てるつもりらしい」

しかし、魔道具の職人なぞにアテはない。そんな職人に会ったこともないぞ? また王都に行って探すのか? トビーみたいな奴がいるかなぁ……。

「魔道具職人ならツテある」

「ルーカス?」

「ウェントブルック領地には魔道具職人が沢山いるが、自分の工房を持てない職人も多い。勧誘しだいでは移住してくれるかもしれないぞ」

「移住か……」

どっちにしろ、魔道具職人なんてすぐには育たないし、だったら余所から移住してきてもらって、ついでに領民で魔道具職人になりたいって希望者を教育してもらえば一石二鳥なのでは?

「セシル様。なにか悪いこと考えているでしょう?」

「うるさいっ。俺はいつでも領民のことを考えてるわっ」

失礼な奴だな、ディーンは。領民が豊かな生活を営めるように就職先を増やそうと企む……じゃなかった考えただけでしょうが。
そんな俺とディーンのやりとりをニコニコと眺めるルーカスと、関わりたくないとばかりに存在を消すベンジャミン。リヒト? あいつはお昼寝中。中身は異世界産の魂が入ってるかもしれないけど、今は所詮、仔狼だからね。いっぱい寝て大きくなってください。






















「冬まつり?」

夕食はみんなで食べようと、ジャコモに頼んで庭で鉄板焼き、バーベキューをしてもらった。肉、肉! 今日はチートディーとばかりに肉を頬張る俺です。
同じく串焼きの肉を豪快に嚙み千切るレナードから、冬まつりなるイベントの話を聞いた。

「一応、神へ感謝する目的だけどな。一年健やかに過ごせました感謝しますって。俺らもヴァゼーレの鉱山町では夜通し酒を飲んで騒いだもんだけど、こっちはやらねぇのか?」

はて? そんな楽しい祭りの話などベンジャミンたちから聞いてないけど? 俺がコテンと首を傾げてベンジャミンたち使用人に視線を送ると、なにかに気づいたようにベンジャミンたちは焦りだした。

「す、すみません。オールポート家では冬まつりは行っていませんでした。お嬢様の……そのぅ亡くなった奥様の代から……」

「ちっ。またか……」

思わず舌打ちしちゃったよ。お行儀が悪い。足元で骨付き肉にかじりついているリヒトの教育にも悪いもんな。でも、また亡くなった奥さんの仕業かよ。冬まつりをなくして、どんなメリットがあるんだよ。

「その……冬まつりは若い恋人同士の間では、その日に一緒に教会でお祈りすると永遠に結ばれるという話がありまして。ですが、セシル様はそのころ部屋に籠りっきりでしたから、自分が楽しめないお祭りは禁止すると……」

「はぁ? バカなの? そんなことしたら領民たちから文句がでるでしょうが!」

実際、出たらしい。で、どうしたって? 首謀者を捕まえて一週間の禁固刑と罰金を科したらしい。ヒドイ話だよ。それ以降、オールポート家では冬まつりは行われない。たぶん、身内で家族内で友達同士でとか、狭い範囲では楽しんでいたと思うけど。

「今年はやるか。やらないとダメでしょう? 準備間に合うかな? クラークが死にそうだな……」

領都クレモナとサレルノに加えヴァゼーレのこともあり、過労死寸前なのに、冬まつりするぞ! と言ったら恨まれそうである。

「セシル。俺も手伝うよ」

「ああ……うん、頼む」

手伝いは嬉しいが、俺は絶対にお前と一緒に教会には行かないからなっ。絶対に行かないぞ! 絶対だからなっ!
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