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恋愛編① 冬ごもり
セシル、大聖堂へ
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オールポート領都で開催する冬まつり。サレルノでも冬まつりを開催するように手紙は出しておいたし、トビーやヘクターに頼んで限定のお菓子を届けてもらうよう手配する。あとは肉と酒を配給すればいいかな?
クラークたちと別れて馬車に揺られること暫し、名前負けのロンバル大聖堂に到着した……あれ?
「なんか、立派になってないか? もと寂れた教会だったはず」
口を開けてロンバル大聖堂を見上げた俺の疑問に、ディーンが離れた場所から答える。
「ハーディング侯爵家と教会本部からの出資で、ほぼ建て直しに近い状態で手直ししたそうでーす」
むむ? オールポート家の懐が痛まないなら別にいいが、普通そういう大事なことは領主である俺に報告しないか? どうなってんだ、お前らは。
「ちゃんと執事長が報告書を上げてますよー。セシル様、また流し読みして頭に入ってませんでしたねー」
「うぐっ」
た、確かに、重要じゃない用件は報告書を読むだけで、スルッと忘れちゃうこともあるけれども! いいじゃない、問題があるわけでもなし。俺の脳みそのキャパシティーを考えてくれっ。
「さ、行くか。リベリオ大司教様はいらっしゃるかなぁ」
俺は鮮やかにスルーした。大聖堂が立派になってリベリオ大司教様も嬉しいだろう。俺も嬉しい。オールポート家の財政に関係なく立派な大聖堂にモデルチェンジして、冬まつりとのタイミングもバッチリだ。ここが冬まつりのメイン会場に相応しいだろう。
俺はスタスタと大聖堂の敷地内へと足を運ぶ。……うん、ずっとルーカスと手を繋いでいるけどね。もう慣れてきた自分が怖いよ……。しかも、ルーカスが威嚇するから、怖がって従者のディーンは俺と距離を取るし……。
「おや、セシル様ではないですか? お久しぶりです」
この柔らかく耳障りのよいイケボは……。
「リベリオ大司教様」
うわぁぁぁん、会いたかったよーっ。この、隣にいる不埒な男に説教してやってくださーい!。満面の笑みで小走りする俺にリベリオ大司教は笑顔を崩さなかった、さすがだ……こんなにデカい奴が引っ付いているのに。
「そちらは、確か王国騎士団の副団長殿でしたか?」
「ハッ。ルーカス・ウェントブルックです」
ルーカスが俺の手を離さずにリベリオ大司教へ礼をするが、離せ、離せ。はーなーせーっ。
ぶんぶんっと腕を振り回しても、ガッチリと繋がれてビクともしないっ!
「仲がよいですな。ピッポ、お茶の用意を」
「……はい」
リベリオ大司教の影、ピッポくんは、ルーカスの異常さに少々ド肝を抜かれたようだが、即座に立て直し客を迎え入れる準備へと去っていった。
「リベリオ大司教様。今日は冬まつりのことでお願いがあって参りました」
「お話を聞きましょう」
結局、しつこい引っ付き虫のルーカスの態度に怯むことなく、リベリオ大司教は俺の話に賛同し、協力を約束してくれた。今回は細やかな祭りにするつもりだから、大聖堂では厳かなミサのイメージで、決して浮かれた恋人同士がチャラチャラとお祈りをするのではなく、ありがたいリベリオ大司教様の説法付きのミサ仕様で開催。蝋燭の灯りを活用し、ところどころをサレルノで生産された白い布を飾る。白い布で造花を作ってもキレイだ。
「セシル様。布で作る造花、しかも教会への供物。商業ギルド案件……いや教会案件です」
「またか……。って、教会案件ならリベリオ大司教様へ投げる。俺のアイデアごと教会への寄付だ」
ということで、今回の冬まつりのアイデアのうち、大聖堂に関わる部分は教会への寄付とした。このスタイルが流行り、恋人同士の永遠を約束するなんちゃらは廃れることを祈る! リア充爆発しろとはよく言ったものである。
この教会にお祈りにくると、小さなカップケーキがもらえる。これはトビーたちに協力してもらって安価な材料で孤児院の子どもが簡単に作れるもの。でも無料ではやらん。無料では。教会に来るときにお布施が必要。お金以外はお古の洋服とか靴でも可。これは孤児院の子どもが再利用する。それも持ってこれない場合は、薬草を採取して持ってくる。これなら、貧しい家の子でも大丈夫。二束三文のありきたりな薬草でも、孤児院の子どもには必要なものだ。小さい子はすぐに体調を崩すからね。
冬まつりの協力を主要人物たちに依頼を終え、ピトッとくっつく厄介な野郎と一緒に屋敷に戻れば、ベンジャミンがにこやかにお出迎え。はて? お前はそんなにこやかな顔をしていたっけ?
「失礼ですセシル様。コホン。明日、シャーロット様とハーディング侯爵様が王都をお出になります」
「へ?」
そ、それは、ようやくシャーロットちゃんが帰ってくるってこと? しかも兄上と一緒に! 絶対に一緒に帰ってきて! お願い、かわいい弟が困っているんだから、お兄ちゃん助けて!
「シャーロット嬢とは、セシルの娘……だっけ」
ポツリと呟いたルーカスに、俺とベンジャミンがピタリと止まる。そして流れる冷や汗が背中にダラダラと……。いや、違う。俺は悪くない。悪くないが……シャーロットちゃんも悪くないし、ルーカスも悪くない。ん? やっぱり俺が悪いか?
「そうか。セシル、シャーロット嬢が許してくれるならば、俺も挨拶がしたいのだが」
きゅるんと捨てられた子犬みたいな目で見るな! 俺の中で何かが目覚めるわっ!
「そ……そうだな」
俺は引きつった笑いで誤魔化した。
クラークたちと別れて馬車に揺られること暫し、名前負けのロンバル大聖堂に到着した……あれ?
「なんか、立派になってないか? もと寂れた教会だったはず」
口を開けてロンバル大聖堂を見上げた俺の疑問に、ディーンが離れた場所から答える。
「ハーディング侯爵家と教会本部からの出資で、ほぼ建て直しに近い状態で手直ししたそうでーす」
むむ? オールポート家の懐が痛まないなら別にいいが、普通そういう大事なことは領主である俺に報告しないか? どうなってんだ、お前らは。
「ちゃんと執事長が報告書を上げてますよー。セシル様、また流し読みして頭に入ってませんでしたねー」
「うぐっ」
た、確かに、重要じゃない用件は報告書を読むだけで、スルッと忘れちゃうこともあるけれども! いいじゃない、問題があるわけでもなし。俺の脳みそのキャパシティーを考えてくれっ。
「さ、行くか。リベリオ大司教様はいらっしゃるかなぁ」
俺は鮮やかにスルーした。大聖堂が立派になってリベリオ大司教様も嬉しいだろう。俺も嬉しい。オールポート家の財政に関係なく立派な大聖堂にモデルチェンジして、冬まつりとのタイミングもバッチリだ。ここが冬まつりのメイン会場に相応しいだろう。
俺はスタスタと大聖堂の敷地内へと足を運ぶ。……うん、ずっとルーカスと手を繋いでいるけどね。もう慣れてきた自分が怖いよ……。しかも、ルーカスが威嚇するから、怖がって従者のディーンは俺と距離を取るし……。
「おや、セシル様ではないですか? お久しぶりです」
この柔らかく耳障りのよいイケボは……。
「リベリオ大司教様」
うわぁぁぁん、会いたかったよーっ。この、隣にいる不埒な男に説教してやってくださーい!。満面の笑みで小走りする俺にリベリオ大司教は笑顔を崩さなかった、さすがだ……こんなにデカい奴が引っ付いているのに。
「そちらは、確か王国騎士団の副団長殿でしたか?」
「ハッ。ルーカス・ウェントブルックです」
ルーカスが俺の手を離さずにリベリオ大司教へ礼をするが、離せ、離せ。はーなーせーっ。
ぶんぶんっと腕を振り回しても、ガッチリと繋がれてビクともしないっ!
「仲がよいですな。ピッポ、お茶の用意を」
「……はい」
リベリオ大司教の影、ピッポくんは、ルーカスの異常さに少々ド肝を抜かれたようだが、即座に立て直し客を迎え入れる準備へと去っていった。
「リベリオ大司教様。今日は冬まつりのことでお願いがあって参りました」
「お話を聞きましょう」
結局、しつこい引っ付き虫のルーカスの態度に怯むことなく、リベリオ大司教は俺の話に賛同し、協力を約束してくれた。今回は細やかな祭りにするつもりだから、大聖堂では厳かなミサのイメージで、決して浮かれた恋人同士がチャラチャラとお祈りをするのではなく、ありがたいリベリオ大司教様の説法付きのミサ仕様で開催。蝋燭の灯りを活用し、ところどころをサレルノで生産された白い布を飾る。白い布で造花を作ってもキレイだ。
「セシル様。布で作る造花、しかも教会への供物。商業ギルド案件……いや教会案件です」
「またか……。って、教会案件ならリベリオ大司教様へ投げる。俺のアイデアごと教会への寄付だ」
ということで、今回の冬まつりのアイデアのうち、大聖堂に関わる部分は教会への寄付とした。このスタイルが流行り、恋人同士の永遠を約束するなんちゃらは廃れることを祈る! リア充爆発しろとはよく言ったものである。
この教会にお祈りにくると、小さなカップケーキがもらえる。これはトビーたちに協力してもらって安価な材料で孤児院の子どもが簡単に作れるもの。でも無料ではやらん。無料では。教会に来るときにお布施が必要。お金以外はお古の洋服とか靴でも可。これは孤児院の子どもが再利用する。それも持ってこれない場合は、薬草を採取して持ってくる。これなら、貧しい家の子でも大丈夫。二束三文のありきたりな薬草でも、孤児院の子どもには必要なものだ。小さい子はすぐに体調を崩すからね。
冬まつりの協力を主要人物たちに依頼を終え、ピトッとくっつく厄介な野郎と一緒に屋敷に戻れば、ベンジャミンがにこやかにお出迎え。はて? お前はそんなにこやかな顔をしていたっけ?
「失礼ですセシル様。コホン。明日、シャーロット様とハーディング侯爵様が王都をお出になります」
「へ?」
そ、それは、ようやくシャーロットちゃんが帰ってくるってこと? しかも兄上と一緒に! 絶対に一緒に帰ってきて! お願い、かわいい弟が困っているんだから、お兄ちゃん助けて!
「シャーロット嬢とは、セシルの娘……だっけ」
ポツリと呟いたルーカスに、俺とベンジャミンがピタリと止まる。そして流れる冷や汗が背中にダラダラと……。いや、違う。俺は悪くない。悪くないが……シャーロットちゃんも悪くないし、ルーカスも悪くない。ん? やっぱり俺が悪いか?
「そうか。セシル、シャーロット嬢が許してくれるならば、俺も挨拶がしたいのだが」
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俺は引きつった笑いで誤魔化した。
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