【再々掲】オメガバースの世界のΩが異世界召喚でオメガバースではない世界へ行って溺愛されてます

緒沢利乃

文字の大きさ
7 / 14

ひとり思うこと

しおりを挟む
やっと、部屋で一人になれた。
まだ夜早い時間ではあるけれども、召喚当日で疲れているでしょうと、早めの就寝となり侍女たちはみんな下がり、神兵は部屋の外で護衛中だ。

その前に食べた夕飯も旨かった。
よかった、食生活が貧困にならなくて。日本という食の贅沢な国で生まれ育った俺にとって、食生活レベルが低いのは頂けない。

でも、いずれ日本の国民食であるお米は探そう。
パンや麺類はあるけど、米が東南アジアで食されているパラパラのお米しかなさそう。
水分のあるもっちりとしたお米が恋しくなるのは必定だ。
今のうちから、探しておこうと思う……神子の庭の人に頼んで。
……だって、この世界の初心者が、いきなり世界中からひとつの食材を探すって無理ゲーじゃん。
この神子の庭にはいろんな国から仕えに来てる人がいるし、商人の出入りもあるって聞いたし。
見つかるといいなぁ、お米。

そして、誰にも気取られずに見つけなきゃいけない物もある。

「……抑制剤」

そう。Ωである俺の発情期を抑える薬。
もともと俺の発情期は大人しい方だ。
五~六回、自家発電で抜いてしまえば、その欲は収まる。微熱が出て倦怠感があったりするのは続くけど。
それぐらいの症状でも、俺は欠かさず抑制剤は飲んでいた。

に代わるモノがここにあるかな?」

抑制剤の成分なんて調べたこともない。
当たり前に飲んでいた薬だ。たぶんホルモン剤みたいな……、わからん。
αもβもΩもいない世界。
発情期なんてここの人間にあるわけもない。

「どうしようか……」

ソファに深く体を沈めて、上を仰ぎ見て息を吐く。
代替品なんて、手に入るんだろうか……。
神子と貴ばれても、定期的に欲情を持て余す俺を、周りはどう見るだろうか……。

「神子……なんだよな、俺」

実感は湧かないし、いつまで経っても自分のことを神子だとは思えないだろう。
でも神子としての役目があるなら、神様は俺の願いを聞いてくれてもいいんじゃないんだろうか?
困ったときの神頼みと言うし。

「ダメでもともと。こっちの神様とやらに頼んでみるか」

抑制剤の代替品を寄こせ、と。
そして、この願いが叶えられたら、自分が神子だと自覚してやらないでもない。

「あとは……聖痕者殿だな」

こちらに呼ばれたときに一度だけ会った聖痕者。
金髪の美形だったことしか覚えてない。美形と言いつつも、その造形は忘れた。
あの猪突猛進、失礼千万な乱入男の兄だと思うと、ちょっと……いや、かなり気が重いな、ちゃんと会うの。

結婚は無理やりすることもないし、サハラーン国には一度は行くが、嫌だったら神子の庭に戻ってくればいい。
その後、死ぬほどヒマになったら、諸国漫遊してもいいしな。

「ふー、Ωの次は神子か……」

俺、帯刀瑠偉。
今までの人生で、個人として見てもらったことがあっただろうか。
家族の中でもαの中のΩとして特別扱いだった。両親も兄たちも俺がΩとして傷つかないように心身ともに守ろうと気遣ってくれた。Ωとして、な。

友達もそうだ。Ω同士なら将来の相手、αの品定め。αの奴らは性欲の相手。運命の番を夢見る奴らもいたが……現実はΩの男には厳しい。

そして、連れてこられたこの世界では、ルイ・タテワキではなく、神子。神子としての俺。

どこまでいっても、肩書に縛られる人生。
諦めていたけど……やっぱ、ちょっとしんどい。
違う世界に来ても、俺はただの俺であることができない。

「ふぅーっ」

目を瞑る。
両親、兄たち、友達、向こうの世界の人々。
帰りたい、戻りたいと思わない俺を許してくれ。
ここで神子として生きる覚悟もないけど、今はΩの帯刀瑠偉からは目を背けていたいんだ。

しばらく、捨てた世界に思いを馳せてから、のろのろと寝台に上がり灯りを消して寝た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...