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神様にお祈りしよう
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神子召喚の翌日。
俺はツバキさんに頼んで大神官に「神様にご挨拶したい」と申し出た。
まあ、お祈りするのはどこですか? て感じ。
爺ちゃんの返事は、「いつでもどこでも出入り自由です」という曖昧な言葉が返ってきた。
おいおい、どこでもじゃ困るよ。
祈りの間とかないの? とナリヒサさんやツバキさんに尋ねると、こちらの神様とやらは神様の像とかも作られてなく、十字架みたいなシンボルもない、とな。
「どこに向かって祈るのさ……」
「さあ、祈りたいときに自分の部屋や好きな場所で……ですかね?」
うーん、神社や寺、教会みたいなものもないらしい。
なんじゃ、そりゃ。
敬虔な信者は神子の庭に礼拝に来ることもあるけど、大抵は爺ちゃんとか高位神官の有難いお言葉を聞いて満足するらしい。
「どうしよう」
この部屋で祈るつーのも、気持ちが入らないし。
祈るっていうか、脅すっていうか。気分はカツアゲだもんなー。
誰にも見られないところでこっそり交渉したい。
神様が本当にいるならね。
「百合の間はどうでしょう!」
「百合の間?」
「はい。ルイ様が召喚されたお部屋です。百合の間を含めた四つの召喚の間は、普段は立ち入り禁止区域ですが、神子様は自由に使えますし。なんとなく神威を感じられるお部屋です!」
ツバキさんが言うには、召喚の間は召喚の時以外は固く閉じられている部屋で、神子の私室と言っても過言ではないらしい。
そうだな……。俺も自分が呼ばれた部屋はじっくり見てみたい。
あのときは、そんな余裕なかったし。
一応、大神官の爺ちゃんに連絡はしておこう。
神子だからこそ、報連相は大事!
朝ご飯を済ませお茶まで飲んだ後、ツバキさんの案内で訪れた百合の間。
他にも召喚の間はあるけど、俺の神力(そんなものあるのか?)と相性がいいだろうと、ここにした。
預かった鍵で扉を開く。
ナリヒサさんとツバキさんは一緒には入れないので、ここで待っていてもらう。
「じゃあ、待っててね」
神兵たちと侍女たちが頭を下げて見送ってくれる中、開けた扉に体を滑り込ませ、パタリと扉を閉めた。
グルリと見回す。
八~十畳ぐらいの広さ。
天井と壁は白い石で綺麗に装われている。床は大理石のようなスベスベの石が敷き詰められており、中央は円形状に少し高く作られている。
そして何よりも、部屋中を覆う百合の花。
見慣れた白い百合や赤やオレンジの百合。黒百合もある。ピンクや黄色、水色や紫など色も多彩だ。
でも、匂いはキツくない。柔らかく匂う。
「なんか、落ち着くな」
相性がいいのは本当かもしれない。とても息がしやすく、リラックスしている自分に気付く。
ゆっくりと中央の円形の場所まで歩み進める。
そこには祭壇のような机と四角い、床の間みたいな空間がある。
その空間には何もない。
「……ここで、いいか」
祈りの作法もないとのことなので、適当にします。
すんません、と心で謝って、俺はその場に両膝を付け、両手の指を組む。
大きく息を吸い、ゆっくり吐く。
目を瞑り……。
(おい! 神様とやら、俺をこんな世界に勝手に寄こしやがって。ちゃんとアフターフォローしやがれっ。とにかく今、必要なのは抑制剤だっ! 代わりになるものを周りにはソレと分からないように用意してくれ。常時、手に入るようなものだぞ。あと、俺が持っていても不思議じゃないもので! 変に目立つものは却下だっ! ……あと、日本米がみつかりますように)
「よろしく、お願いします」
と呟く。
……。
……。何も……起きないな……。当たり前だけど……。何も……ない……な。
そろそろと片目を開けて見る。
!
一度閉じて、また恐る恐る片目を開けて……。
今度は両手で目を擦って、両目をかっ開いて見る。
「なんだ……これ」
何もなかった四角い空間にふよふよと虹色の百合が浮いていた。
白い百合の花弁の先だけが、虹色に色づく不思議な花がふよふよ、と。
差し出した俺の手のひらに、ゆっくりと舞い降りて。
「これが……抑制剤?」
キョロキョロと見回すと百合の花が咲き乱れている一角に、手の中と同じ色合いの百合の花を見つけた。
「さっきまで、なかったよな?」
……これを、いったいどうしたらいいのかな?
俺は百合の花を手に持ち、暫し途方に暮れた。
俺はツバキさんに頼んで大神官に「神様にご挨拶したい」と申し出た。
まあ、お祈りするのはどこですか? て感じ。
爺ちゃんの返事は、「いつでもどこでも出入り自由です」という曖昧な言葉が返ってきた。
おいおい、どこでもじゃ困るよ。
祈りの間とかないの? とナリヒサさんやツバキさんに尋ねると、こちらの神様とやらは神様の像とかも作られてなく、十字架みたいなシンボルもない、とな。
「どこに向かって祈るのさ……」
「さあ、祈りたいときに自分の部屋や好きな場所で……ですかね?」
うーん、神社や寺、教会みたいなものもないらしい。
なんじゃ、そりゃ。
敬虔な信者は神子の庭に礼拝に来ることもあるけど、大抵は爺ちゃんとか高位神官の有難いお言葉を聞いて満足するらしい。
「どうしよう」
この部屋で祈るつーのも、気持ちが入らないし。
祈るっていうか、脅すっていうか。気分はカツアゲだもんなー。
誰にも見られないところでこっそり交渉したい。
神様が本当にいるならね。
「百合の間はどうでしょう!」
「百合の間?」
「はい。ルイ様が召喚されたお部屋です。百合の間を含めた四つの召喚の間は、普段は立ち入り禁止区域ですが、神子様は自由に使えますし。なんとなく神威を感じられるお部屋です!」
ツバキさんが言うには、召喚の間は召喚の時以外は固く閉じられている部屋で、神子の私室と言っても過言ではないらしい。
そうだな……。俺も自分が呼ばれた部屋はじっくり見てみたい。
あのときは、そんな余裕なかったし。
一応、大神官の爺ちゃんに連絡はしておこう。
神子だからこそ、報連相は大事!
朝ご飯を済ませお茶まで飲んだ後、ツバキさんの案内で訪れた百合の間。
他にも召喚の間はあるけど、俺の神力(そんなものあるのか?)と相性がいいだろうと、ここにした。
預かった鍵で扉を開く。
ナリヒサさんとツバキさんは一緒には入れないので、ここで待っていてもらう。
「じゃあ、待っててね」
神兵たちと侍女たちが頭を下げて見送ってくれる中、開けた扉に体を滑り込ませ、パタリと扉を閉めた。
グルリと見回す。
八~十畳ぐらいの広さ。
天井と壁は白い石で綺麗に装われている。床は大理石のようなスベスベの石が敷き詰められており、中央は円形状に少し高く作られている。
そして何よりも、部屋中を覆う百合の花。
見慣れた白い百合や赤やオレンジの百合。黒百合もある。ピンクや黄色、水色や紫など色も多彩だ。
でも、匂いはキツくない。柔らかく匂う。
「なんか、落ち着くな」
相性がいいのは本当かもしれない。とても息がしやすく、リラックスしている自分に気付く。
ゆっくりと中央の円形の場所まで歩み進める。
そこには祭壇のような机と四角い、床の間みたいな空間がある。
その空間には何もない。
「……ここで、いいか」
祈りの作法もないとのことなので、適当にします。
すんません、と心で謝って、俺はその場に両膝を付け、両手の指を組む。
大きく息を吸い、ゆっくり吐く。
目を瞑り……。
(おい! 神様とやら、俺をこんな世界に勝手に寄こしやがって。ちゃんとアフターフォローしやがれっ。とにかく今、必要なのは抑制剤だっ! 代わりになるものを周りにはソレと分からないように用意してくれ。常時、手に入るようなものだぞ。あと、俺が持っていても不思議じゃないもので! 変に目立つものは却下だっ! ……あと、日本米がみつかりますように)
「よろしく、お願いします」
と呟く。
……。
……。何も……起きないな……。当たり前だけど……。何も……ない……な。
そろそろと片目を開けて見る。
!
一度閉じて、また恐る恐る片目を開けて……。
今度は両手で目を擦って、両目をかっ開いて見る。
「なんだ……これ」
何もなかった四角い空間にふよふよと虹色の百合が浮いていた。
白い百合の花弁の先だけが、虹色に色づく不思議な花がふよふよ、と。
差し出した俺の手のひらに、ゆっくりと舞い降りて。
「これが……抑制剤?」
キョロキョロと見回すと百合の花が咲き乱れている一角に、手の中と同じ色合いの百合の花を見つけた。
「さっきまで、なかったよな?」
……これを、いったいどうしたらいいのかな?
俺は百合の花を手に持ち、暫し途方に暮れた。
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