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第5話:ポン太、はじめての迷子札
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「ポン太、新しい首輪だよ~♪」
休日の朝、花さんが僕に差し出したのは、赤いチェック柄の新しい首輪。
チャームのような金具がついていて、名前と電話番号が彫ってある。
「これ、“迷子札”っていうの。防災訓練の日だし、念のためね」
僕は少し不満げに鼻を鳴らした。
だって、僕は毎日この町を歩き慣れてるし、花さんと離れることなんて絶対ない。
……そう思っていた。
その日、町内会の防災訓練で人がたくさん集まっていた。
子どもたちの声、大人たちの誘導、拡声器の音。
少し緊張していた僕は、ふとした拍子にリードがすっぽ抜けた。
「ポン太!?」
花さんの声が遠くなり、僕はあわてて辺りを見回す。
見知らぬ人ばかりの中、どこに行けばいいのかわからない。
焦った僕は、公園のベンチの下に身を隠した。
お腹がぎゅるっと鳴った。
ああ、どうしよう。はやく帰りたい――。
そのとき、遠くから誰かが叫ぶ声が聞こえた。
「……ポン太!!」
顔を上げると、花さんが走ってくる姿が見えた。
僕は飛び出して、花さんの足元に飛び込んだ。
「よかった……ほんとに……」
花さんが抱きしめてくれる腕の中で、僕は胸をどくんどくんさせながら、そっとしっぽを振った。
そのあと、町内放送で“首輪の迷子札に感謝”という話題が流れた。
僕の名前と電話番号を見た近所のおじさんが、花さんに連絡をしてくれたらしい。
あの小さなチャームが、僕をおうちに戻してくれた。
守っているようで、守られている。
この名札は、ぼくのしるし。愛の証だ。
休日の朝、花さんが僕に差し出したのは、赤いチェック柄の新しい首輪。
チャームのような金具がついていて、名前と電話番号が彫ってある。
「これ、“迷子札”っていうの。防災訓練の日だし、念のためね」
僕は少し不満げに鼻を鳴らした。
だって、僕は毎日この町を歩き慣れてるし、花さんと離れることなんて絶対ない。
……そう思っていた。
その日、町内会の防災訓練で人がたくさん集まっていた。
子どもたちの声、大人たちの誘導、拡声器の音。
少し緊張していた僕は、ふとした拍子にリードがすっぽ抜けた。
「ポン太!?」
花さんの声が遠くなり、僕はあわてて辺りを見回す。
見知らぬ人ばかりの中、どこに行けばいいのかわからない。
焦った僕は、公園のベンチの下に身を隠した。
お腹がぎゅるっと鳴った。
ああ、どうしよう。はやく帰りたい――。
そのとき、遠くから誰かが叫ぶ声が聞こえた。
「……ポン太!!」
顔を上げると、花さんが走ってくる姿が見えた。
僕は飛び出して、花さんの足元に飛び込んだ。
「よかった……ほんとに……」
花さんが抱きしめてくれる腕の中で、僕は胸をどくんどくんさせながら、そっとしっぽを振った。
そのあと、町内放送で“首輪の迷子札に感謝”という話題が流れた。
僕の名前と電話番号を見た近所のおじさんが、花さんに連絡をしてくれたらしい。
あの小さなチャームが、僕をおうちに戻してくれた。
守っているようで、守られている。
この名札は、ぼくのしるし。愛の証だ。
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