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後編
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「…………」
「…………」
はあ、と女教師は鬱屈の溜まったため息を吐き出す。
「せめてファンタジーの世界とか、現代でもどっちかが音楽の専門学校とか特殊な世界設定なら、早く解決したでしょうに……」
でも2人共、平凡な学園ラブだから難儀なのだ。
「……そうなんですね。……それに……僕は乙女ゲームも恋愛小説も読んだことは無いんですけど、さっきから彼女らが言ってるあれって……」
―――いわゆる“テンプレ”なのでは?
数多の恋愛を目的とした媒体において、絵師やキャラが変えられても変らないものがある。それがテンプレ。
攻略対象のキャラを深め、魅力を示す為には易々とプレイヤー・もしくは読者がシンクロ出来る展開が必要なのだ。そしてそのパターンは、年代が変ったとしてもさほど変らない。
そんなものが判断材料になる訳が無い。
「両方から話を聞いた生徒も何人かいいて、その子らが言うには、“確かにイベント? みたいな事は起きているけど、どっちも同じような内容だから確定出来ない”らしいわ」
「……まぁ……恋愛もののイベントって、似たようなもんですよね」
他にも“懸命に影練しているところに出くわす”、“不良に絡まれて困っていた所を救われる”、“捨て犬にエサをこっそりやってる場面に出くわす”……等々。
誰もが一度は目にしたデジャブだ。
「大体乙女ゲームが元の小説だってあるだろうし」
「逆にゲームが元ネタの小説だってありますよ」
「舞台が学園で、登場人物がイケメン揃いってだけなら、もう何10年前からでもあったわよ」
「けどヒロインが2人、なんて事はないでしょう」
「あたしが昔ハマってたヤツは、2人からの選択制だったけど……。あの子らの様子だと違うみたいね」
2人いるなら、どっちがヒロインなどと主張するはずがない。
「それはそうと、ですね……」
信任教師は、なおもギャアギャアと言い合っている2人を見ながら首を傾げた。
「あの子らの言う通り、ゲームや小説の世界だったとして、彼女らは……」
「……そうよね、そう思う」
――ゲーム(もしくは物語)を進める気はあるのか?
教師らが知る限り、彼女らが美形の生徒と仲良くなったという話は聞かない。
ひたすら“私がヒロイン”と角突き合わせて言い合っているだけだ。時期的には親しくなった男子生徒と並んで歩きながらやれ手を繋ごうか腕に掴まろうかなどとジレジレ考えているところだろうに。
とそこで、2人の教師の関心は攻略対象(もしくは小説のキャラ)についてに移行する。
「登場人物って言うからには、顔が良くて優秀な生徒だと思うんですが」
「美形の教師も外せないわね」
「なら化学の久世先生、ですか? でも何か最近、お見合い相手とうまく行きそう、とか言ってましたよ」
「後は弓道部の期待の星・弓削かしら? でも確か最近、年下の彼女が出来たらしいけど……」
「おっと、生徒会長の高梨を忘れてました。親が金持ちで有名人、本人もハーフの美形で成績優秀・スポーツ万能。おまけにあだ名が“王子”。可能性ダントツでしょ?」
「あああいつ、男テニの部長と付き合ってるって」
「マジでっ!?そっちの人だったんですか彼!!」
ビックリ仰天する新任教師に女教師はニヤニヤ笑う。
「いやあ~男子達、くやしがってたね~。“俺にもチャンスがあったのかー!”“どっちがどっちなんだ!!”とか絶叫しちゃって、なかなかの阿鼻叫喚だったわよ?」
「……何か、あの子ら……ケンカしている場合ですかね?」
「イイ男は早い者勝ちって、どんなジャンルでも基本なのにね……」
「……まぁ……ここはゲームでも小説でもないので……」
――いつか良い人に、出会えると良いね。
2人の教師の目が、やや生暖かいものになる。
いつの間にか、2人の自称ヒロイン達は消えていた。
もし本当に、この世界はゲーム(もしくは恋愛小説)の世界だったとしても。
教師2人はあくまでモブキャラだろう。だってあのヒロイン達に関わり合う要素が無いのだから。
ただ、ほんの野次馬根性からか……こんなことを思ってしまった。
ゲーム(もしくは物語)を始められないヒロイン2人の、明日はどっちだ?
「…………」
はあ、と女教師は鬱屈の溜まったため息を吐き出す。
「せめてファンタジーの世界とか、現代でもどっちかが音楽の専門学校とか特殊な世界設定なら、早く解決したでしょうに……」
でも2人共、平凡な学園ラブだから難儀なのだ。
「……そうなんですね。……それに……僕は乙女ゲームも恋愛小説も読んだことは無いんですけど、さっきから彼女らが言ってるあれって……」
―――いわゆる“テンプレ”なのでは?
数多の恋愛を目的とした媒体において、絵師やキャラが変えられても変らないものがある。それがテンプレ。
攻略対象のキャラを深め、魅力を示す為には易々とプレイヤー・もしくは読者がシンクロ出来る展開が必要なのだ。そしてそのパターンは、年代が変ったとしてもさほど変らない。
そんなものが判断材料になる訳が無い。
「両方から話を聞いた生徒も何人かいいて、その子らが言うには、“確かにイベント? みたいな事は起きているけど、どっちも同じような内容だから確定出来ない”らしいわ」
「……まぁ……恋愛もののイベントって、似たようなもんですよね」
他にも“懸命に影練しているところに出くわす”、“不良に絡まれて困っていた所を救われる”、“捨て犬にエサをこっそりやってる場面に出くわす”……等々。
誰もが一度は目にしたデジャブだ。
「大体乙女ゲームが元の小説だってあるだろうし」
「逆にゲームが元ネタの小説だってありますよ」
「舞台が学園で、登場人物がイケメン揃いってだけなら、もう何10年前からでもあったわよ」
「けどヒロインが2人、なんて事はないでしょう」
「あたしが昔ハマってたヤツは、2人からの選択制だったけど……。あの子らの様子だと違うみたいね」
2人いるなら、どっちがヒロインなどと主張するはずがない。
「それはそうと、ですね……」
信任教師は、なおもギャアギャアと言い合っている2人を見ながら首を傾げた。
「あの子らの言う通り、ゲームや小説の世界だったとして、彼女らは……」
「……そうよね、そう思う」
――ゲーム(もしくは物語)を進める気はあるのか?
教師らが知る限り、彼女らが美形の生徒と仲良くなったという話は聞かない。
ひたすら“私がヒロイン”と角突き合わせて言い合っているだけだ。時期的には親しくなった男子生徒と並んで歩きながらやれ手を繋ごうか腕に掴まろうかなどとジレジレ考えているところだろうに。
とそこで、2人の教師の関心は攻略対象(もしくは小説のキャラ)についてに移行する。
「登場人物って言うからには、顔が良くて優秀な生徒だと思うんですが」
「美形の教師も外せないわね」
「なら化学の久世先生、ですか? でも何か最近、お見合い相手とうまく行きそう、とか言ってましたよ」
「後は弓道部の期待の星・弓削かしら? でも確か最近、年下の彼女が出来たらしいけど……」
「おっと、生徒会長の高梨を忘れてました。親が金持ちで有名人、本人もハーフの美形で成績優秀・スポーツ万能。おまけにあだ名が“王子”。可能性ダントツでしょ?」
「あああいつ、男テニの部長と付き合ってるって」
「マジでっ!?そっちの人だったんですか彼!!」
ビックリ仰天する新任教師に女教師はニヤニヤ笑う。
「いやあ~男子達、くやしがってたね~。“俺にもチャンスがあったのかー!”“どっちがどっちなんだ!!”とか絶叫しちゃって、なかなかの阿鼻叫喚だったわよ?」
「……何か、あの子ら……ケンカしている場合ですかね?」
「イイ男は早い者勝ちって、どんなジャンルでも基本なのにね……」
「……まぁ……ここはゲームでも小説でもないので……」
――いつか良い人に、出会えると良いね。
2人の教師の目が、やや生暖かいものになる。
いつの間にか、2人の自称ヒロイン達は消えていた。
もし本当に、この世界はゲーム(もしくは恋愛小説)の世界だったとしても。
教師2人はあくまでモブキャラだろう。だってあのヒロイン達に関わり合う要素が無いのだから。
ただ、ほんの野次馬根性からか……こんなことを思ってしまった。
ゲーム(もしくは物語)を始められないヒロイン2人の、明日はどっちだ?
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