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閑話:辺境伯令嬢の憂鬱②

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……私が一体、何をしたって言うんですか…………。
 ごろん、とベッドに寝転がって天井を睨む。前世で済んでいたユニットバスと簡易キッチン付きワンルームがすっぽり入った上にまだ余裕のありそうな広さだ。続きにある小部屋はウォークインクローゼットらしい。冗談でしょ?

「こんなお金持ちなんだから、悪役なんてならなきゃいいのに……」
今は自分であるところのルイーズの心境を思う。
   神様を恨みたい。本当に前世ではちょー無難にしか生きていなかった。妬みを買うほど仕事も優秀じゃなかったし、誰かを妬む事もなかった。彼氏は人のを奪うどころか浮気された、きぃっ!
 だってこの『悪役令嬢・ルイーズ・シャルナ』は、ヒロインが誰のルートに入っても邪魔してくるし、更には悪の手先として利用され、無残な最期を遂げるという、全然救いの無い役どころ。
「メリアの邪魔なんてしなければ幸せに暮らせたでしょうに……」
ゲームには出てなかったけど、ルイーズが堕ちた後今の家族達もただでは済まなかった筈。とゲームには出ていない、今世の家族を思い浮かべた。
今の両親は私に、甘過ぎる程に優しい。お兄様が2人いるけど彼らも同じ。私もそんな皆が大好きだ。運命に巻込んじゃいけない。
グッと手の平を握り込んだ。
家族の為、そして自分の今世の幸せの為に断罪を回避するぞ!
決意が固まる。私は勢いのままベッドの上に仁王立ちになると、
「やるぞ!!」
おー!! と、雄叫びを上げて拳を振り上げた。
 
 ――結果、目撃したばあやとお母様にお説教されました――
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