モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの

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雨宿り~1~

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 今……私は、ちょっと困っている。
否、過去最高に困っている。
「さ、おいで」
 もじもじする私の目の前には、ニコニコ顔で両手を広げている旦那様。私の戸惑いは、完全にスルーだ。
い、いやいやいや……、ダメでしょうそれは……。


 今私達がいるのは森の外れにある小さな小屋だ。猟師さんが臨時に使用するものらしく、勝手に使っても良いらしい。簡易ベッドと食器や最低限の調理器具の入った小さい棚、木製のテーブルと椅子……。床には中央に熊の毛皮が敷かれていて、剥製にされた頭部が鋭い目をこちらに向けている、恐い。
 そもそも今日、私と旦那様はこの森に魔獣の討伐に来ていた。新たな薬に使う材料を採取するためである。
三ツ目熊を5頭狩り、山を下りる途中でにわか雨に遭い、何とかこの小屋にたどり着く。ずぶ濡れになった衣服は旦那様の魔法で乾いたけど、やや体が冷えた。
 なら暖めよう、と言う事になって暖炉に火をつけたまでは、良かったんだけど……
パチパチ、と暖炉で火が爆ぜている。その前で毛布を背中にかけた旦那様が、敷物に直接座り込んだ体勢で、再度私に向かってぽんぽん、とお膝を叩いて見せた。
 やはり……そこに座れと、言う事なんですね?
「どうしたの、チヨ? 来なさい」
どうしたの? ではない。
子供と呼ばれる年齢であっても、私も一応、それなりの年頃というヤツで……。
 そして旦那様は、行動がアレでも見かけは超が付く程の美青年なので……。つまりは……恥ずかしい、のだ。
「わ、私は使用人ですので……っ」
 と、言葉の途中で空気の変化を感じた。――くるっ!
「面倒くさい、良いから来な、さいっ」
「!」
私が動くより早く、旦那様の指がクイッと動いた――次には私の体が床から浮き、旦那様の方に飛ぶように吸い寄せられ……あっという間に、私の体はスポッと旦那様の胸に抱き込まれた。
「あー最初からこうしとけば良かった。敵意のない魔法はまだ、察知するのが遅れるねー」
あー子供はあったかいなーなどと満足そうに、旦那様はご機嫌だ。でも私はしてやられた気分でぐぬぬ……と呻きを漏らす。よりにもよって移動魔法なんて、簡単に対処出来るのに……。
「うぅ……魔術師なんてぇ……!」
そんな私の頬を旦那様がつんつんつつきながら楽しそうだ。
「くくく……! お前がこんな顔するなんてね……っ、屋敷に来た頃の無表情からはまるで想像つかないよ」
思わず顔を上げた。
「無表情でしたか、私?」
「うん――ジェシカ達も言ってた。“前はもっとひどかった。”って」
――“前”
 その言葉に私は、ジェシカ師匠と初めて出会った日のことを思い出した。
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