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第20部 現世(エリアス編)
第245話 仲介依頼
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俺達は一度セトラー国に戻り、アリッサさんを連れ隣のアレン領を目指した。
魔王軍から預かった火竜の素材のオークションの件で話を付けるためだ。
前回の緑竜の時は、エリザちゃんの実家のファイネン公爵家で仲介をしてもらった。
しかし今回の火竜も、と言うわけにもいかない。
竜の素材は貴重だ。
縁故だからと人から妬まれても困るからね。
そこで選んだのがセトラー国に一番近いアレン領のドゥメルグ公爵だ。
セトラー国と貿易をしているのはジリヤ国では、ファイネン公爵家のウォルド領とアレン領のドゥメルグ公爵のみだ。
今度は交互にと言うことでドゥメルグ公爵の顔が立つだろう。
そして俺は覚えたばかりの『空間結合』を、試しながらアリッサさんと進んでいく。
僅かな時間で移動し俺達はアレン領に着いた。
おぉ!これは便利だ。
ドゥメルグ公爵家の門番に俺が来たことを告げる。
貴族に会う時は事前に面会の約束を取るのが普通だ。
しかし俺は女神ゼクシーより、勝手御免の許しを得ているから助かる。
本人が居るのに都合の良い日を聞いて、また伺うなんて無駄にしか思えない。
待っていると50代前半の白銀の髪をした、執事のアルマンさんがやって来た。
「ようこそいらっしゃいました、エリアス様」
「突然、伺ってすみません」
「そんなことはありません。エリアス様ならいつでも当家は歓迎いたします。さあ、どうぞ」
アルマンさんに促され、アリッサさんと屋敷の中に案内される。
しばらく客間で待っていると、ドゥメルグ公爵とアルマンさんが部屋に入ってきた。
向かいのソファにドゥメルグ公爵は座り、アルマンさんはその後ろに立っている。
「お待たせしたねエリアス君。いいや、エリアス陛下と呼んだ方が良いいかな?」
「茶化さないでくださいドゥメルグ公爵。今まで通りエリアスで良いですよ」
「ははは、君は変わらないね。今日は何だい?」
俺は今回の目的をかいつまんで話した。
あの険しいアスケル山脈を越え魔族が、シェイラ国とセトラー国に挟まれた土地に国を興すことになったこと。
彼らは戦闘能力重視で、産業や農地開拓はまるで駄目だと言うこと。
遊牧民である彼らは豊かな土地を求めてきたが、今いる地域以外はすでに国があり進むなら侵略とみなすと説明した。
「魔族か、まかさ本当にいたとは…。古文書の中のお話だと思っていたよ」
「彼らも私達のことは『原住民』と呼び、知らないようでした」
「どのくらい戦士がいるのかね?」
「アスケル山脈を越え来たのが約3,000人、そこを縄張りにしていた火竜を倒すのに1,000人は失ったようです」
「なに?火竜だと?それを倒したと言うのか?!」
「えぇ、そうです」
「彼らは大丈夫なのか?そんな屈強な戦士が後2,000人はいると言うことだろう」
「彼らは遊牧民で季節ごとに移動し、穀物などは現地調達をしていたようです。そのため、住民は牧畜がメインのようです」
「その心配はありません。事前に釘を刺しておきましたから」
「そうなのか…」
「彼ら1人1人は強いかもしれませんが、まとめて叩けば問題はありませんから」
「どういうことだね?」
「残りの2,000人を1人1人倒していくのは面倒ですが、あの辺りは広大な森です。大魔法1発で焦土にすれば誰にも迷惑を掛けず問題はありませんよ」
「そ、そういう問題なのかね?怖いことを言うな君は…」
「それに当初は好戦的でしたが話し合いの結果、わかって頂きましたから。それに自給自足ができるように農業、酪農や林業を彼らに教える約束もしています」
「それは良かった」
「しかし彼らが大人しく国作りに励んでくれるかは、今後の問題ですが…」
「それはどう言うことかね?」
「戦闘メインの民族が農業をするのか?と言うことです」
「どういうことかね?」
「私の力を見せましたので、人族の力を私と同じと考え大人しくしているでしょう。そして我が国以外の人とも、しばらくは関わり合わせない方が良いと思っています」
「良い考えだ。友好的かどうかはわからないなら、しばらくは様子をみるしかないだろう。そして食料が無いのなら略奪より、自給自足に慣れてもらうしかないだろう」
「そう思っています。私も1度、魔界に赴き王に会って来たいと思っています」
「友好を築くためにも、相手のことを知るにも良い考えだ」
「そしてここからが本題ですが、彼らは火竜の素材を売りたいそうです」
「なんだと?!」
「そのオークションの開催を、ドゥメルグ公爵に仲介して頂ければと思いまして」
「本当か?!気を使わせて悪いね」
「今、預かっているのは鱗、骨、爪、魔石です。そして彼らが欲しがっているのは穀物や食料、その次にお金です。ここに来るまでの間、補給もなくやってきたようですから」
「彼らも必死と言うわけだな。わかった、早ければ来月にでも開けるだろう。それまでの間、彼らはどうしているのだ?」
「国作りのために魔界と行き来するそうです。食料はドラゴンの肉がありますから、しばらくは大丈夫でしょう。無くなれば森で魔物を狩れば良いことですから」
「簡単に言うのだな。ではさっそく各領主と隣国に使いを出そう」
「それから仲介手数料がかかると話しておきました」
「さすがは元商人。ドラゴンの素材なら手数料だけでも十分な金額になるだろう」
「では日程が決まりましたら、蒸気機関車の従業員に知らせてください」
「わかった。その時は連絡をしよう」
前回の緑竜はファイネン公爵家。
今回の火竜はドゥメルグ公爵家が仲介する。
これでドゥメルグ公爵家の箔が付いたとドゥメルグ公爵は微笑んだ。
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いつも応援頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。
よろしくお願いいたします。
魔王軍から預かった火竜の素材のオークションの件で話を付けるためだ。
前回の緑竜の時は、エリザちゃんの実家のファイネン公爵家で仲介をしてもらった。
しかし今回の火竜も、と言うわけにもいかない。
竜の素材は貴重だ。
縁故だからと人から妬まれても困るからね。
そこで選んだのがセトラー国に一番近いアレン領のドゥメルグ公爵だ。
セトラー国と貿易をしているのはジリヤ国では、ファイネン公爵家のウォルド領とアレン領のドゥメルグ公爵のみだ。
今度は交互にと言うことでドゥメルグ公爵の顔が立つだろう。
そして俺は覚えたばかりの『空間結合』を、試しながらアリッサさんと進んでいく。
僅かな時間で移動し俺達はアレン領に着いた。
おぉ!これは便利だ。
ドゥメルグ公爵家の門番に俺が来たことを告げる。
貴族に会う時は事前に面会の約束を取るのが普通だ。
しかし俺は女神ゼクシーより、勝手御免の許しを得ているから助かる。
本人が居るのに都合の良い日を聞いて、また伺うなんて無駄にしか思えない。
待っていると50代前半の白銀の髪をした、執事のアルマンさんがやって来た。
「ようこそいらっしゃいました、エリアス様」
「突然、伺ってすみません」
「そんなことはありません。エリアス様ならいつでも当家は歓迎いたします。さあ、どうぞ」
アルマンさんに促され、アリッサさんと屋敷の中に案内される。
しばらく客間で待っていると、ドゥメルグ公爵とアルマンさんが部屋に入ってきた。
向かいのソファにドゥメルグ公爵は座り、アルマンさんはその後ろに立っている。
「お待たせしたねエリアス君。いいや、エリアス陛下と呼んだ方が良いいかな?」
「茶化さないでくださいドゥメルグ公爵。今まで通りエリアスで良いですよ」
「ははは、君は変わらないね。今日は何だい?」
俺は今回の目的をかいつまんで話した。
あの険しいアスケル山脈を越え魔族が、シェイラ国とセトラー国に挟まれた土地に国を興すことになったこと。
彼らは戦闘能力重視で、産業や農地開拓はまるで駄目だと言うこと。
遊牧民である彼らは豊かな土地を求めてきたが、今いる地域以外はすでに国があり進むなら侵略とみなすと説明した。
「魔族か、まかさ本当にいたとは…。古文書の中のお話だと思っていたよ」
「彼らも私達のことは『原住民』と呼び、知らないようでした」
「どのくらい戦士がいるのかね?」
「アスケル山脈を越え来たのが約3,000人、そこを縄張りにしていた火竜を倒すのに1,000人は失ったようです」
「なに?火竜だと?それを倒したと言うのか?!」
「えぇ、そうです」
「彼らは大丈夫なのか?そんな屈強な戦士が後2,000人はいると言うことだろう」
「彼らは遊牧民で季節ごとに移動し、穀物などは現地調達をしていたようです。そのため、住民は牧畜がメインのようです」
「その心配はありません。事前に釘を刺しておきましたから」
「そうなのか…」
「彼ら1人1人は強いかもしれませんが、まとめて叩けば問題はありませんから」
「どういうことだね?」
「残りの2,000人を1人1人倒していくのは面倒ですが、あの辺りは広大な森です。大魔法1発で焦土にすれば誰にも迷惑を掛けず問題はありませんよ」
「そ、そういう問題なのかね?怖いことを言うな君は…」
「それに当初は好戦的でしたが話し合いの結果、わかって頂きましたから。それに自給自足ができるように農業、酪農や林業を彼らに教える約束もしています」
「それは良かった」
「しかし彼らが大人しく国作りに励んでくれるかは、今後の問題ですが…」
「それはどう言うことかね?」
「戦闘メインの民族が農業をするのか?と言うことです」
「どういうことかね?」
「私の力を見せましたので、人族の力を私と同じと考え大人しくしているでしょう。そして我が国以外の人とも、しばらくは関わり合わせない方が良いと思っています」
「良い考えだ。友好的かどうかはわからないなら、しばらくは様子をみるしかないだろう。そして食料が無いのなら略奪より、自給自足に慣れてもらうしかないだろう」
「そう思っています。私も1度、魔界に赴き王に会って来たいと思っています」
「友好を築くためにも、相手のことを知るにも良い考えだ」
「そしてここからが本題ですが、彼らは火竜の素材を売りたいそうです」
「なんだと?!」
「そのオークションの開催を、ドゥメルグ公爵に仲介して頂ければと思いまして」
「本当か?!気を使わせて悪いね」
「今、預かっているのは鱗、骨、爪、魔石です。そして彼らが欲しがっているのは穀物や食料、その次にお金です。ここに来るまでの間、補給もなくやってきたようですから」
「彼らも必死と言うわけだな。わかった、早ければ来月にでも開けるだろう。それまでの間、彼らはどうしているのだ?」
「国作りのために魔界と行き来するそうです。食料はドラゴンの肉がありますから、しばらくは大丈夫でしょう。無くなれば森で魔物を狩れば良いことですから」
「簡単に言うのだな。ではさっそく各領主と隣国に使いを出そう」
「それから仲介手数料がかかると話しておきました」
「さすがは元商人。ドラゴンの素材なら手数料だけでも十分な金額になるだろう」
「では日程が決まりましたら、蒸気機関車の従業員に知らせてください」
「わかった。その時は連絡をしよう」
前回の緑竜はファイネン公爵家。
今回の火竜はドゥメルグ公爵家が仲介する。
これでドゥメルグ公爵家の箔が付いたとドゥメルグ公爵は微笑んだ。
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