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廃村の鬼人編 シーズン1

1話 ジレンマ

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日本で最もコアな人種が集まる街
「秋葉原」この街の一等地に構える老舗ジャンクショップ「パラドックス」ここの店主を務めているのが通称ジレンマそれが彼の名だ。

ジャンクショプというのはカモフラージュで
本来は殺人、呪、自殺などあらゆる闇案件の窓口となるのがパラドックスの素顔である。


代々受け継いできた、闇の法則でクライアントの願いを叶えるのがジレンマの仕事である。

父親から継いだパラドックスの経営はもちろんだが1番の目的は
「呪印の書」
を探し出すことである。ジレンマ自身に入り込んだ最悪の魔物を封じ込めるためには呪印の書が必要なのである。


この先は謎多き主人公
「ジレンマ」の壮絶な人生の物語。

「呪界団地編」を先に読むも良し、ご愛読よろしくお願いします。


今日も秋葉原は静けを知らず絶え間なく人の群れが交差する。
この街にルールなんて通用しない。
何故なら異能力者、死霊の吹き溜まりだからだ。

「マスター、コーヒーは?」
可愛らしい声が店内に響き渡る。

アルバイトの「琴美ちゃん」専門学生でジレンマの数少ない理解者でもある。こんな小さい店だからバイトなんて雇う必要がなかったが、ジレンマは琴美の志望動機が気に入った。
ただそれだけだった。

「琴美ちゃん、キリマンジャロのブラックお願いするよ」

「はーぃ❗️」

こんな陽気な琴美ちゃんも初めはクライアントだった、彼女自体、深い闇の中を彷徨っていた一人だ。

琴美はコーヒーをカウンターに静かに置き
お盆を胸に抱えたまま店の外を見つめる。

琴美はため息をつきカウンターのジレンマに呟いた。

「マスター疲れ気味ですね、たまにはゆっくり休まないと死んじゃいますよ💦」

ジレンマは元々痩せ型で乱れた長髪、見るからに生気が抜けているように見える。
廃人という言葉が似合うかもしれない。

「大丈夫だょ(笑)こう見えても案外元気だから」
そう言って、コーヒーを啜りながらタバコに火をつける。

「琴美ちゃんパラドックスの結界が弱ってきたから変えといてもらえるかな」

「はーぃ」

パラドックスには結界が敷かれている。
通常結界は外部からの邪気の侵入を防ぐものだが、パラドックスの場合は逆だ。
結界は店内の邪気を外に出さない為である。


ジレンマのゆっくりと吐き出す煙は店内を無造作に漂う。
シケモクやフィルターギリギリまでタバコを吸うのは当たり前、時代にそぐはない愛煙家である。

「チリン チリン」
店頭の呼び鈴が鳴る。


「こんにちは。。。」

「いらっしゃいませ!」
琴美が挨拶に反応して店先にむかう。

店先には若い男女が訪れていた。

「ジレンマさんにご相談があります」
気の弱そうな若い男がそういった。

「マスター相談者様のようです。」

咥えタバコしたジレンマが店先まで出向く。

「はぃはぃ こんにちは、どうぞ2階で伺います」

「凛子ちゃんいこう」
男性の声掛けに対し舌打ちをする女性。

PCのジャンク品が所狭しと並ぶ店舗の奥には2階へつながる細い階段があり
ジレンマは2人をを先導して2階に案内する。

2階の部屋には骨董品が並ぶ棚や施術をする台があり、壁一面の棚には薬品や様々な物が陳列されている。

「ガタガタガタ‼️」
突然店内に地響きが鳴り響く。

「ガタガタガタ‼️」

店内の呪物やパラドックスに宿る魔物が
何かに反応してる。

これは危険だと感じたジレンマは
「ごめん。やはり向かいのカフェで話を聞くよ💦」

唯ならぬ事態にジレンマはそう言ってパラドックスの外に二人をだした。

「琴美ちゃんちょっと店番お願い」

琴美にそう伝え、3人は向かいのカフェに入っていた。

冷房がきつめに効いている店内、ジレンマは1番奥の人通りの少ないテーブル席をチョイスした。
ソファに座るとすぐにタバコに火をつけ話を切り出す。

「さっきは失礼したね、お店から追い出すようにここに連れてきてしまって」

この二人だが、どうみても不釣り合いの容姿である。男性はここの秋葉原にいそうな、覇気の無いニートタイプ、女性は奇抜な髪の色にピアスだらけでタトゥーまでいれているまるでハーレークィーンのようなタイプだ。

「あぁぁあーもう、イライラする!このおっさんに早く要件つたえてよ」

モジモジしてる男性に痺れを切らし女性が話し出した。

「私達、四六時中離れられないのよ、もう4日もこの状態」

「君たちの出会いと、パラドックスにきた理由を教えてくれないか?」

諭すようにジレンマは優しい口調で話を進めた。




果たして2人はどんな関係でジレンマに何を尋ねてきたのか?

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