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27話

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廃ビル新宿ミカエルの地下室にある古井戸を覗き込んだハルキは精神に異常を起こし
おばぁと共に亜空山という所へ連れていかれた。

マヤカは母親と共に自宅のある風俗ビルへと帰っていった。
母親はマヤカの手を握り無言のまま家路をたどるのであった。

部屋に戻り、母親はタバコに火をつけ、髪をかき上げる、何か迷いあるのか、それともただイラついているのか
2.3服すって灰皿にタバコを押し付けた。

「マヤカ、早すぎるかもしれないが、いずれ知ることだから覚悟してお聞き」

そう言って母親は話をはじめた。

懐女カイジョ?」

「いいから最後まで聞きな」

時代は江戸幕府の時までさかのぼる、幕府は勢力を維持するために忍びなど暗殺部隊を率いていたが
戦争もなく平和になるにつれて忍びも解体されていった。

その頃にできたのが懐女という呪を主に暗殺する組織が作られた。

懐女は15歳になると少しずつ自身に呪いを刷り込み、耐性を作りながら呪いをまとう遊女となる。
むろん、美貌や振る舞いなども必要とされるため、本当の懐女になれるのは一握りである。

「あの井戸はその懐女と何か関係があるの?」

「あの井戸は懐女に最後の儀式を行う場所なんだよ」

「お母さんも懐女なの?」

「私はなれなかった。。懐女になって悪い奴を殺せば自由になれるはずだったのに。。。」

ひそやかに日本の裏社会ではびこる、幕府の血筋、マヤカの母は懐女になれず、子を産む役割になった。

小さな呪いの儀式から始め、あらゆる毒を体内に入れていき、最後は魔物と呼ばれるものが潜む
あの古井戸の水を浴びて懐女となる。

ハルキは男子だったので除いただけで諸に影響を受けてしまったのだ。

「ハルキはどうなるの?」

「男子は大抵、駒のように使われる役に付くらしいが、亜空山に連れていかれたのは意外だった、おばぁのことだ、ハルキを何かに利用する気だ」

「・・・・」マヤカは黙り込んだまま、涙を流した。

「あんたも、ユイナもうすぐ懐女になるための修行にはいる、最後の儀式まであのビルには近づくんじゃないよ」

母親はそういって再び仕事に戻っていった。


「懐女か。。。聞いたことないなぁ」

「当たり前だろ、おっさんが知ってるような組織ならもうとっくに壊滅されてるし」

「そりゃそうだね(笑) でも君にかかってる呪いはその修行の時のかい?」

「いや、私は修行を受けてない。。。。」

懐女になる宿命を背負うはずのマヤカは修行を受けていないと答えた。
それはどういう意味があるのか。




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