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エピソード1

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物語は連載中の「僕の神の手」とクロスオーバーします。

「呪伝師 麗華」

「僕の神の手」

「藍原楓」

3作品コメント、お気に入り登録頂ければ幸いです。

-藍原楓 イタコの血を継ぐ者-

青森県の下北半島の小さな漁村で
私は生まれた。

13歳の時に両親が離婚をして
3歳年上の姉と母方の祖母に育てられた。

祖母はイタコにならなかったが
私もイタコの血を継いでいる。
口寄せ、浄霊、それともうひとつ
人とは違う何がある。

姉は17歳になったら東京に行くって言ってる。早く働いて私たちに仕送りするって。

後一年しかない、そんなの寂しすぎるよ

お姉ちゃん、看護師になる夢はどうするの?
高校辞めちゃったらなれない。

両親が離婚をして、私たちを見る周りの目も
変わっていった。

私はいつも、学校が終わると港の防波堤にいた、夕日が沈み、辺りが暗くなるとお姉ちゃんが迎えにきた。

「これからバイトだから早く帰っておばあちゃんの手伝いするょ、あんたがいないとおばあちゃんも大変だから」

姉は寂しくないのか?両親がいなくなって
朝は港でバイトしてから学校、学校が終わると居酒屋でバイト。

お姉ちゃんには、幼馴染の彼氏もいる、ただ両親が離婚してから、きっと会う時間もない。

東京に行ったら彼氏とはどうなるんだろ。

そんな一年先の不安を毎日ここで
考えていた。

姉は16歳、17歳になったら東京にいってしまう。


3月、青森はまだ桜は咲かない。

姉と青森で過ごす、最後の1日だ。
「なぁに楓、死んだ魚みたいな目をして」

「一生会えない訳じゃないんだから、悲しい顔しないで」

姉はいつも通りの朝をすごしている。

「夏休みになったら東京に来なよ、ねぇちゃんの部屋に泊めてあげるから。ね?」

「いいの?本当に」

「もちろん、妹だからね。ちょっとカズくんと会ってくる。駅には行きたくないって言ってたから、押しかけてくるよ」

姉は私と正反対、姉ようになりたいっていつも思ってた。

12時かお姉ちゃん遅いなあ、汽車間に合わないよ。

「ごめーん、お待たせ、楓、駅まで歩いて行こう」

駅まで歩くと40分流石の姉も駅に近づくに
つれて口数が少なくなってきた。

「カズくんとね、別れたんだ。。。」

「えっ⁈」

「だってさぁ、カズくん漁師の一人息子だよ、船つがないわけにはいかないでしょ」

「カズくんは、卒業したら東京にくると言ってたけど、私は待たないって言っちゃったんだ」

「だからさぁ、何としてでも楓とおばあちゃんを守らないとカズくんに顔立たない」

「楓は好きなように生きるんだょ、私が絶対守るから」

2人で大泣きしながら駅まで歩いた。

「一様ね、お父さん東京にいるから、どうしようもなかったら、連絡取るかもしれない」

汽車の警笛が寒空を貫くように鳴り響く

「楓、いってくるね」

姉は小さな体で大きなバックをもって東京へ
旅立っていった。


おばぁちゃんが体調を崩して夏に東京は
行けなかった。

お姉ちゃんが心配だから冬休みに
東京に行くようにおばあちゃんから頼まれた。

仕事が忙しいのか、電話も出ないし。。
冬休みに東京に行くと手紙をだした。

こんな小さい漁村だけど年末になると
流石に慌ただしくなる。

おばあちゃんに頼まれて市場に買い物にいった。

「楓ちゃん」

振り返るとカズくんがいた、お姉ちゃんが東京にいってから、カズくんと会うのが気不味くなっていて少しさけていた。

「ばぁちゃんから聞いたけど、東京いったらねぇちゃんにこれ渡してくれないか?」

私は無言で、お守りを受け取った。

「よろしく頼む」

私はうなずき、市場を後にした。

結局、お姉ちゃんとは連絡が取れず。

万が一の時は父さんに連絡するよう、おばあちゃんから連絡先を渡された。

仙台でもこんな都会なのに、東京はもっとすごいのかぁ

東京駅に着いた。

夜なのに昼間のような明るさ。。。

私は雑踏にまぎれ、お姉ちゃんのアパートに向かった。

東京には色々な色の人がいる、カラフルな人が大半だけど。灰色に見えたり、黒く見えたり赤く見えたり、緑色の人もいる。

都会は不思議だらけ。

姉のアパートについた。木造の2階建
周りの華やかな建物とは比べ物にならないくらい。古さを感じる。

「ピンポーン」「お姉ちゃん?」

鍵もないので玄関で待つことにした。


コツ コツ コツ 
だれかが、階段から、上がってくる。

目があうと、すぐさま振り返り、走り去る。
「お姉ちゃん?」

何かを抱え背を向けたまま

「何できたの?」お姉ちゃんとは思えない。強い口調が、都会の雑音にまじって返ってきた。

「どうして逃げるの?」楓

髪で顔を隠すように、こちらに振り返った。

いつも、防波堤まで迎えに来てくれた、姉の笑顔、綺麗な顔、澄んだ瞳、風になびく綺麗な黒髪。
全てこの街に奪われてしまっていた。

ガチャガチャ、キィーッ

「突っ立てないで入んなよ」

部屋の中はまるでストリップ劇場のメイク室のように化粧品だの、ウィッグだの無造作に置かれていた。
タバコの吸い殻、空の酒瓶。

「ちょっと片付けるから、そこ座ってなよ」

ゴミを寄せて座布団1枚分くらいのスペースをつくった。

お湯を沸かし姉はキッチンに

しばし無言の時間が流れる。

「あっ、これおばあちゃんから、お姉ちゃんといっしょに食べろってイカ飯渡された。」

14歳が何とか考えた、言葉がこれくらいだった。

姉は急に振り返り、私を抱きしめた。

暖かい、姉の温もり、、

これだけは都会も奪えなかった。

あの防波堤が脳裏に浮かぶ。港町、昨日までいたのに懐かしく感じる。

「楓、ごめん、妹に気を使わせて、姉ちゃん失格だね」

涙が溢れてこぼれ落ちた、そんな私を姉の手が包むように頭をなでてくれる。

「今はさあ、まだ東京の土に根付いてなくて、手探り状態だけど姉ちゃん頑張るから」

私は灰皿を指刺した。

「それね、彼氏の 心配しないで今泊まり込みで現場いってるから年末まで帰って来ないょ」

渡そうと思ったカズくんからのお守り
渡せなかった。

姉は昼間はコンビニ、夜は居酒屋でバイトをしてるようだ。基本賃銀は高いかもしれないけど東京に来た意味があるのか、疑問がのこった。

「あんたの言いたいことわかるよ、あの場所から抜け出したかったんだ。」

「お金がないから、看護学校にいけない
それならあの場所に残る意味があるのかって」

「3年待って、きっと東京の土に根付くから
今はこんな感じだけど、もう少しお金貯まったらちゃんとしたとこ勤める。」

「疲れたでしょ、ご飯食べて寝よ」

久しぶりの姉との食事、お風呂

「明日朝から私仕事だから、渋谷、原宿でもいってきなよ、人の多さにびっくりするよ」




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