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動き始める甲斐
しおりを挟む小山田勢から援軍要請の使者を迎えた躑躅が崎館
小山田越中守からの書状を一瞥した信虎は、自らの予測と違う北条勢の動きに仰天する。
しかし、スグに楽しそうな表情を浮かべた信虎は、諸将を招集する為、各方へ使者を出した。
(「ハハハハハ・・・源太郎、良かったのぅ。小山田は律儀に使者を寄こしたではないか」)
自室で寝そべっていた源太郎に信義が語り掛ける。
(「またまたお出ましにございますか・・・始祖様、それがしは毎度毎度イキナリのお出ましになられる故、ソレには、もぅ慣れましたぞ。それにしても、義叔父上がじぃの言う通りにして下さり嬉しゅうござる」)
(「まぁ、信虎の様な阿保ではない故、千の兵で万の敵に突っかける訳はあるまい。そなた、仮にも義叔父に対し、無礼であろう。さぁさ、軍議に早う行くのじゃ!」)
(「はぁ・・・何ぞ嬉しがっておられる様な・・・解りましてございます」)
信虎は小山田越中守からの書状を諸将に回して読ませた。
「小山田越中から援軍要請が来た。皆、如何様に思うか思うところを述べるが良い」
では、と板垣が発言した。
「書状によれば北条勢は万を超える軍勢。とても小山田勢のみでは戦えませぬ。援軍を出すか、撤退を指示するかの何れかでありましょう」
それを受けて駒井。
「されど、撤退するにしても小山田勢だけでは易々と撤退させてくれまい。何しろ北条勢の兵数が十倍以上かも知れぬからのぅ」
それを受けて飯富が混ぜかえす。
「のぅ・・・それでは詰まらぬぞ!北条の胆を寒くしてやることはできぬのかのぅ」
信虎がソレに乗った。
「そうじゃ!北条を打ち破り江戸城へ行き、上杉殿と祝杯を酌み交わすのじゃ!」
「されど御館様、このままでは小山田勢が全滅しまする。取り敢えず、この板垣が急ぎ小山田に合流致しまする。それゆえ急ぎ今後の方針をお決め下され」
「じぃ!ワシの初陣にする。準備はできておる。この信義を連れて行け!」
「板垣!抜け駆けは許さんぞ!ワシ、飯富昌虎も行くからの!」
「「「「「「御館様!若殿の初陣、我等加賀美・馬場・山県・内藤・工藤・荻原もお見届け致しまするぞ。何卒出陣のお許しあれ」」」」」」
「・・・相解った。板垣を大将とし、飯富ら7名の者を信義の初陣の後見とする。直ちに出陣するが好い」
「「「「「「「「「御館様、後備えを急ぎお願い申し上げます。では御免!」」」」」」」」」
源太郎達が急ぎ足で去っていく。
猛将として名高く、家臣達には鬼の様に恐れられている筈の信虎であったが、今までと違い家臣達の勢いの押されてしまった。
暫く何かに化かされた表情をしていた信虎は、気を取り直して軍議を続けるのであった。
源太郎は忍びの者達からの情報によって、北条勢の大将は氏綱の弟氏時である事、甲斐と相模の国境の戦場で状況の変化が無い事を把握していた。
そして、この数年間は公式的な初陣の準備として、弩(ボウガン)2万帳、礫弓(スリングショット)2万丁、長槍2万本、短槍2万本を板垣の屋敷に貯蔵していた。
しかし、この装備品全部を使うだけの兵数が集まらなかったのである。
急ぎ出陣できたのは、騎兵1000歩兵7500であった為、装備品は半数を持ち出す事となった。
「源太郎様、そろそろ小山田勢の陣に着きますが、如何いたしましょうや?」
「じぃ、北条勢は雑木林の向こうゆえ、恐らくこちらの事は知らぬ事だらけであろう。援軍は林の入り口辺りで待機して、義叔父の所へはワシとじぃ、荻原殿で参ろう」
小山田勢の陣
「義叔父上!初陣を飾りに参りましたゾ!」
「これはこれは・・・若殿ではござらぬか?!戦場は遊び場ではござらぬぞ!板垣殿、この様な場所へ若殿をお連れになられるとは・・・どういう了見でござるか?!」
「ハハハ、やはりそう言われるか。小山田殿、若殿にとって戦場は初めてではござらぬのよ・・・実は。過ぐる一度目の諏訪征伐の折、総崩れした御館様の軍勢を救ったのは若殿でござる。尤も、知っておるのはワシと飯富の他、ここにいる荻原殿くらいなのじゃ」
「まさか・・・荻原殿、真実なのか?」
「信じられぬであろうがの。本当の事なのじゃ。諏訪勢に押されて命が危うかったところを飯富殿の騎馬隊に助けられてのぅ。我が部隊が、武田本隊から取り残されておったから、飯富殿が一緒になって連れ帰ってくれた所が若殿の陣じゃった」
「ワシが守役だから言うのではないが、若殿の言う通りに兵達を動かすつもりじゃ。若殿は兵一人一人、民の者一人一人を大事にしておられる。できる事ならば、全ての兵達を無事に連れ帰ってやろうではないか。そなたもワシに同意して欲しい。飯富達は若殿の指示のままに動くと言っておる」
「ワシ自身が救われたから言うのではないが、小山田殿、若殿は我らが思いも付かない事をする。ゆえに、北条も若殿のやり方は解らぬと思う。兵数が北条に及ばぬ今は、若殿の指示にお任せして見ようではないか?」
「そうか・・・チラホラと聞こえてきた噂は真実であったか。若殿は麒麟児であると。とんでもない甥を持ってしまったものよのぅ。相解った。若殿、指示に従いまする。何なりと申しつけ下され」
「義叔父上、かたじけのうございます。では今宵、輜重の手勢を連れて林後方の陣に来て下され。軍議の後でお渡ししたい物がございます」
「解り申した。必ず伺いまする」
話が決まり、源太郎達は陣へ戻った。
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