【武田家躍進】おしゃべり好きな始祖様が出てきて・・・

宮本晶永(くってん)

文字の大きさ
14 / 78

あれっ?!

しおりを挟む






 北条勢の陣

 北条勢は草原を切り開いて方陣を組み部隊を展開している。

 「氏時様、武田を攻めませぬのか?」

 「ああ、我等は18000おるが、武田の数も様子も解らんのじゃ。ただ、いずれ江戸城を攻めておる上杉勢は撤退する。さすれば、領内各地から援軍が来て我軍は数倍の兵数となる。その時が勝ちを収めるときじゃ」

 「なるほど、解りましてござります。しかしながら、しきりと木を切る音がしまするなぁ。武田勢の目的は何にござりましょうな?」

 「上杉の江戸城攻めと時期を合わせておるから、普通に考えれば上杉への援軍であろうのぅ。ただ、これで解ったことが一つある」

 「何でござりましょうや?」

 「各所に旗が立って居る故、来ておる武将は誰か解る。しかし、旗はあるが信虎は来ておるまい。来ておれば兵数に関わりなく突っかけて来る筈じゃからのぅ」

 「あの暴れ虎が来ておらぬのなら、尚の事攻めれば良いのでは?」

 「そこよ!先程そなたが木を切る音がする、と言っておったであろう。あの林の向こうの村を広げる開拓団も同行している筈じゃ。となれば、村にもかなりの数の武田勢がいる事は間違いあるまい。恐らく、あの入り口の軍勢は我等を引きずり込む撒き餌じゃよ。一刻も早く我等を叩き潰して開拓に専念したいのであろうが、そうも簡単に相手の思惑に付き合ってやる必要もあるまい?」

 「なるほど、言われて見ればその通りにございまするな。では我等は腰を据えて待つことになる訳で?」

 「そうじゃ、ハハハその通りじゃ」











 数日後の北条氏時の陣

 「もうすぐ昼餉か、西からの風があると煙がきついのぅ・・・」

 「あいや暫く!氏時様、煙が変でござる。黒い煙が混ざっておりまする」

 「ん、そうじゃな。地響きもする。各隊に伝えい!敵襲じゃ!準備を致せい!」



 暫くすると兵士達の悲鳴が聞こえてきた。

 「申し上げます!氏時様、わが軍の全面に多数のクマの群れが突っ込んでまいりましてございます。」

 「よし!昼餉の邪魔をしたクマ共を討ち取るのじゃ。夕餉はクマ鍋とする」















 武田勢、板垣の陣

 「じぃ、草原の視界は如何程開けた?」

 「弩の射程程は火が進んだかと」

 「では、昼餉の後、全軍一斉に炎と間合いを保ちながら前進する。以上、各部隊に伝達」

 











 北条勢は西からの強風によって吹き込む煙に苦労しながらも一刻(2時間)近くもクマの群れと闘っていた。

 部隊内で交代を続け、槍襖を作って一頭ずつ包囲牽制しながら弓を射かけて討ち取っていった。

 しかし、戦闘の初めにクマに接近を許し、弓を使える体制を整えるまでに時間が掛かり過ぎた為、死に物狂いのクマを真面に相手にして、死者こそ出ていないものの、重軽傷者合わせて一万人近くに達していた。

 総大将の北条氏時もクマに爪を引っ掛けられてしまい、左の二の腕を負傷していた。






 やがて北条勢を包む煙が晴れた頃、北条勢の前に武田勢が現れた。

 「義叔父上、敵将との口上はこの様にお願い致し申す」

 「ほぅ・・・そなた本当に御館様の子か?頭できが全然違うのぅ」









 北条氏時の陣

 「申し上げます!氏時様、武田から軍使が来ており申す」

 氏時は伝令から受け取った小山田からの書面を読んでニッと笑った。

 「面白い!陣の前面で小山田と口上を交わそう!」





 武田勢の前面には小山田信有(越中守)その両脇に源太郎と板垣が出てきた。

 北条勢の前面には氏時一人が出てきた。

 「氏時殿、我が願い聞き届け頂き、かたじけのうござる」

 「なんの!此度の武田勢、不思議な事ばかりで、話してみとうなったのよ」

 「そうでござるか。紹介いたし申す。我が右手におるは、主君信虎様の嫡子にて我が妻の甥、源太郎信義様。左手におるは、その守役板垣信方殿にござる」

 「ご丁寧にいたみ入る。なぜ紹介を?」

 「此度、源太郎信義様は初陣を飾る筈であった。されど、クマ共に初陣を汚されてしまった様である。後見する立場の者としては、キチンとした戦にて初陣を飾って頂とうござる。ここは手打ちと致しませぬか?」

 「なんと?!一戦も交えずに手打ちとは!戦さの倣いからは外れておりますな」

 「このまま戦さに突入しても好うござるが、総大将たるソナタまでもが、その様な手傷を負っておる軍勢と戦うてもこちらの誉れとはなり申さん。それでも戦うとあらば、確実にそなたの兵達は壊滅いたし申す・・・となれば最早これは戦さではござらん。戦さにも礼儀や嗜みはあり申す」

 「我等に情けをかけると申されるのか?」

 「情けではござらん。嗜みにござる。」

 「して、手打ちの条件は?」

 「今宵、クマ鍋のご相伴に預かりたい。明日、同時に陣を引き申そう」

 「ハハハ、随分と安い条件よのう。少々お待ち頂きたい。我が部下達と諮り申す」

 と言って氏時は後ろを向き、部下たちに相対して大声で諮った。

 「皆の者~!今、武田より手打ちを申し込まれた~!戦い足りぬものはおるか~?!今すぐ武田と戦いたい者はおるか~?!返事が無くば手打ちを受ける事とする!そして今宵は武田勢とクマ鍋で宴会じゃ~!」

 暫く時が経った後

 「「「「「「「「「「御大将のお心のままに」」」」」」」」」」

 「皆の者~!将として感謝する~!」

 氏時が武田勢の方へ向き直った。

 「御覧の通りでござる。手打ちを申し入れて頂き、感謝申し上げる」

 それを見ていた源太郎が氏時に言った。

 「北条様、素晴らしき兵達にござりまする。北条様のお人柄が兵達の資質を押し上げているに相違ござりませぬ。それがし、本日の北条様を手本の一人と致しとうござります」

 「ハハハ、武田の次世代は他人を乗せるのが上手そうだ。ガッカリされぬ様、それがしも精進せねば。若殿様、手本の一人として頂き感謝申し上げる」






 その夜は武田・北条双方が、敵勢である事を忘れて、終始和やかに宴会に興じた。

 翌朝、武田・北条双方は約条通りに陣を払い、それぞれの本拠へ向かった。

 











しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

小日本帝国

ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。 大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく… 戦線拡大が甚だしいですが、何卒!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

大東亜架空戦記

ソータ
歴史・時代
太平洋戦争中、日本に妻を残し、愛する人のために戦う1人の日本軍パイロットとその仲間たちの物語 ⚠️あくまで自己満です⚠️

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

電子の帝国

Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか 明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。

処理中です...