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再び西へ(その2)
しおりを挟む越前を辞した源太郎は琵琶湖を目指したのち、琵琶湖を右手に見ながら観音寺城へ向かう。
観音寺城
六角定頼は源太郎の来訪を聞いて早速に大広間へ通した。
「武田殿、挨拶を抜いてでも話たき事がありそうじゃの?我等の仲ぞ、遠慮はいらぬ」
「六角様、かたじけのぅござる。実は先頃、駿河の国が外つ国の軍勢に襲撃され申した」
「そなたがここへ来た・・・という事はそなたが直に立ち会ったのじゃな?」
「はい、それがしと弟・晴信が己の身をもって対処致し申した」
「それならば、損害は少なかったであろうから良いとして・・・困ったことが出てきたのじゃな?」
「はい・・・」
「先ずは・・・外つ国とは何処じゃ?明か?朝鮮国か?」
「明、朝鮮のどちらでもござらん。明の国がある陸の遥か奥にある国にて、イスパニアと申すそうでござる」
「何と?!!!まさか、陸を通って明の国を突っ切ったわけでもあるまいに!」
「船で行けるそうでござる。船にて数十日から百日程度かかるそうでござる」
「まさか、国が接して居らぬのに、戦さの後は如何するつもりなのじゃ?」
「『植民地』とかいうモノにするそうで、そこの領民を牛馬の如く遣い潰しながら、その地の富を奪い続けるそうでござる」
「その者達は真に人か?」
「その者達は我らを人と思うておらぬそうでござる」
「なぜじゃ?」
「肌と目と髪の色が違うからでござる。それと、言葉も違いまする」
「されど、いくら何でも少なき人数で大勢の人を牛馬の様には使い続けられまい」
「それを可能にする物がこれでござる」
・・・と言って、源太郎は5丁の短銃を側用人に渡し、定頼の元へ持って行かせる。
「何じゃ?これは?」
「鉄砲と申す物にて、その筒から火薬と申す物の爆発する力を利用して、金属の玉を打ち出す道具でござる」
「弓の様な物か?」
「左様でござる」
「されど、高々弓の代わりとなる道具が大勢の人を抑える力となるのじゃ?」
「弓を使って飛ばす矢よりも、鉄砲の玉の方が遠くへ飛びまする。その威力は、偶に鎧の胴丸を貫通致しまする。更に途轍もない音が響き渡る故、騎馬隊の天敵となり申そう」
「厄介じゃのぅ。馬が使えぬとならば、荷の運搬の手間が増えようし、戦さにかかる期日も増える」
「その通りでござる」
「ん?!その割に、そなた落ち着いておるのぅ」
「はい、今領内の民を総動員して、短銃を始めとする異国の物を調べさせております故」
「これをここへ持ち込んだと言うは、こちらでも調査をして欲しいのじゃな?」
「左様でございます」
「ところで、外つ国の者は同じ言葉を話すのか?」
「いいえ」
「よくも意思疎通ができたモノよ」
「明の国と交易をしておるそうにて、明の国の言葉を使える者同士を介して尋問致しました」
「なるほど・・・されど、その出来事に出会った最初の人がそなたであった事が、日乃本にとっては、一番の幸運であったのぅ。とてもワシでは対処できぬわ」
「いやいや、過分な誉め言葉は遠慮致したき事でござる」
「そなたでなければ、犠牲が多く出ておったであろうし、敵に橋頭堡を築かれておったであろう」
「いろいろな方々にそう言われまするが、それがしには解り申さん」
「まぁ、褒めて貰えるのじゃ。形だけでも喜んでおけば相手も気持ちが良い。そういう事にしておくのじゃ。この後は京に行かれるのであろう?ワシから先触れをしておく故、ゆるりと為されよ」
「お気持ち有難く・・・」
源太郎は観音寺城で数日滞在するのであった。
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