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日乃本の事を考えている最中に・・・
しおりを挟む天文8年(1539年)の夏、源太郎の弟・武田晴信は今川義元、太原雪斎、将軍・足利義晴、朝廷の仲介によって三条公頼の次女を正妻に迎える事となり、婚儀を執り行った。
また同じ頃、未だ武田領内のみで研究を進めている、イスパニア式大型船ガレオンを小型化した試作品ともいえる疑似ガレオン船が13隻、駿河湾の海上にうぶ声を上げた。
鹵獲したガレオンが2000トン級の大きさに対し、試作された武田式ともいえるガレオンはまだまだ小さい500トン級であるが、武田領内各地に散らばった志摩衆によって、様々な操船の試験をされる事になる。
久々に居城と定めた烏峰城へ腰を落ち着ける事が出来た源太郎は、久しぶりに味わうゆったりとした雰囲気の中、嬉しい知らせを受け取った。
「お館様~っ!一大事でございますっ~!」
源太郎の婚儀の時より、源太郎付きの侍女から蓮の方付きになった椿女が執務の部屋へ駈け込んで来た。
「おぉ・・・椿女、如何した?そなたらしゅうないぞ・・・いつもワシに五月蠅く窘めるではないか」
椿女は部屋に入った着た途端、床に膝から崩れ落ち、両手を床について「はぁ、はぁ」と、ひたすらに荒い息をつき続けている。
「おぉい・・・誰ぞ椿女に水を持て」
源太郎はお付きの者に命じて、受け取った器を持って椿女に水を飲ませた。
「ワシが姉の一人とも頼むそなたが如何したのじゃ?ゆっくりと少しずつ飲むが好いぞ」
少し驚き、呆れたような雰囲気を滲ませながら、源太郎は椿女に水を飲ませ続ける。
やがて椿女は源太郎の手に自らの手を添えて器を手にすると、ごくごくと器をあおるように水を飲み始めた。
「ふぅ~・・・お館様、一大事でございます!」
人心地着いた椿女が再度、源太郎に口上を述べた。
「一大事は相解った。姉役のそなたと各務には『お館様』ではなく、『源太郎』と呼ぶように申し付けているであろう?して、如何した?」
「もぉ~・・・源太郎様はノンビリと為されて。良くお聞き下さりませ!蓮の方様ご懐妊にございます!」
源太郎のノンビリした感じの様子にイラついたかの様に椿女が口上を述べる。
「へっ?!」
奥で起こりそうな事件を色々思い浮べて対処を考えていた源太郎は、虚を突かれて間の抜けた声を出した。
「「「ぷっ!!!」」」
源太郎の様子を注視している宇佐美定満、長尾為景、織田家から源太郎の直参となった柴田勝家が一斉に噴出し、哄笑し始める。
「「「ハアッハッハッハッハハハハハ・・・」」」
椿女と顔を見合わせていた源太郎は3人へ向き直って尋ねる。
「ん?!3名とも如何致した?」
「「「いや~麗しき姉弟愛を見せて頂き申した・・・源太郎様、早う奥方様の下へ!ハハハハハ・・・」」」
そう言うと3名は再び笑い始めた。
「されど、今後の外つ国への対応を話し合っておる最中ではないか」
「「「いやいやいや。いつ来るか解らぬ外つ国よりも、今は奥方様が大事でござる。ハハハハハ・・・」」」
源太郎のツッコミに対応すると、3名は再び延々と笑い始める。
「此度はこれまでじゃの。奥の元へ行って参る」
源太郎は諦めた様に椿女を伴って執務の部屋を出て行った。
執務の部屋からは暫くの間、3名の笑い声が響いていた。
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