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試験航海(その2)
しおりを挟む武田水軍のお披露目として、大型ガレオン5隻小型ガレオン10隻の編成で豊橋の港から出発し、第一の目的地は紀伊半島を周り大阪湾を目指す事になった。
大型ガレオンには源太郎の他に宇佐美定満・長尾為景・諏訪満隣・真田幸隆・斎藤道三利政が随行員として乗船する。
そして、水軍衆から九鬼定隆と小浜時綱が、それぞれ5隻ずつの小型ガレオン計10隻を指揮する為に各人1隻の大型ガレオンに乗り込んで源太郎に同行する事となった。
天文8年(1539年)晩夏、尾張国熱田の港から武田の家紋を付けたガレオンの船団が出港した。
各船、操作の為の人員は大型100名、小型68名で4交代制を採用して人員の使い方を試験する事も兼ねる航海の始まりである。
旗艦となる楯無と名付けられた大型ガレオンの中で真田幸隆が源太郎に話しかけた。
「源太郎様、此度は旅にお連れ頂き感謝致し申す」
「幸隆兄殿、那古野城の務めは良いのか?」
「源太郎様は又もやワシを兄と祭り上げる・・・城の務めは弟の矢沢頼綱・常田隆永・鎌原幸定を呼びました故、少しも心配ござりませぬよ!」
「兄の物見遊山の為に呼びつけられた弟御達には、気の毒な事をしてしもうたの」
「いやいや、普段田舎でのんびりと過ごして居る故、偶には大きな町の城勤めをしておる兄の苦労を知る事も、良い経験になるのでござる」
「ワシは・・・甲斐から引っ張り出して居る弟や家臣達には、常々申し訳なく思うておるのに、幸隆兄殿は身内使いが厳しいのぅ」
「何を言っておられる?ワシを傍から外して、城勤めに閉じ込めた御仁が何を言っておるのやら・・・」
「仕方が無いではないか。人材が不足して居る故、猫であろうがネズミであろうが、使える存在は使うしか選択肢が無いからじゃ!」
「相解りましてございまするよ。されど、山というか、陸地しか知らぬ我らが、海を旅する事になろうとは・・・思いもよらぬ事でございますな」
「うむ、おまけに外つ国イスパニアに対する警戒を、各寄港先で説いて回らねばならぬ」
「見た事も無い事柄について話すと言うは、苦労の多さが思いやられますなぁ」
「されど、領内に閉じこもっておっても、いずれはまた巡ってくる災難じゃ。来るのが解っておるなら、早めの対処をするに越した事は無い」
「それでも源太郎様がおられる限り、武田領内だけはイスパニアの来襲に万全の対処できましょう程に、どこに居っても大いに安心でござる。ただし、身をもって恐ろしさの程が解って居る故でござるが・・・」
「それを日乃本全土に広げるのが此度の船旅の目的であるぞ」
「他国の水軍は我らに攻め掛かって来ましょうな?何やら気の毒に思えて参りまする」
「戦さ抜きで話し合いができる事を祈るしかあるまいて」
「源太郎様、ワシも祈ることと致しまする」
「幸隆兄殿かたじけない。少しだけ神仏の加護を得られる気がして参った」
「それは嬉しゅうござる。『烏景様』の異名通りの御利益が我等にありましょうて」
そんな会話を続けながら二人は、滑る様に快調に進む船の船室に入っていくのであった。
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