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序章:カエルの着ぐるみが喋り出した件について

第2話:俺はカエルの着ぐるみ着用を余儀なくされた。

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「くそっ。こんな所でやられるわけには...。」

俺は地面に倒れ込んでいた。

「まさかいきなりこんな強敵と会うとはな。参ったぜ。いくら俺でもあの敵には絶対に敵わないって思ったね。」

ガクッ...。

『...あの、マスター?いつまで寝ているつもりですか?さすがに幾ら何でもウサギには負けないだろうと思っていたのですが...。』

「やめろ!それ以上言うな!」

そう、俺はカエルスーツを脱いで森を歩いているとウサギに出会った。初めて格下の敵に出会えた俺はハイテンションになり、ウサギを討伐しようとした。しかし、強敵ウサギは俺の拳をいとも簡単に避け、その後俺はウサギの後ろ蹴りをくらい一発KOされてしまったわけだ。

『やはり鎧を着ません?ウサギに負けるぐらいの強さしかないマスターだったらそのうち転んだだけで死にますよ多分。』

やだ!絶対に着ない!いいから早く村まで案内しろ!

『はあ~。分かりましたよ。こっちです。』

こうしてまた歩き出した。

少し歩くと小川があった。 

「お、川だ。喉が渇いていたから丁度いいや。少し水を飲んでいいだろ?」

『大丈夫です。まだ日が落ちるまで時間があるので。』

デュラハンから許可も貰ったので俺は川に近づく。

そして、しゃがみこんで頭と手を前に出した所で、

「おわぁぁ!」

バランスを崩して川に落っこちた。

「ちょ、この川流れ強すぎだろ。助けてー、デュラハン!おい!マジで助けてくれ!溺れ死ぬ...。」

『...そんなに助けて欲しいなら「鎧、召喚!」って、言えばいいじゃないですか。』

嫌だ!あんなダサい鎧なんて一生着たくない!ガハッ。ってかマジメに死ぬ!死ぬって。

...あぁ、もう分かったよ!着れば良いんだろ?着れば。

「鎧、召喚!」

俺の体は光の粒子に包まれ、やがて緑の毛の生えた鎧に包まれた。

その瞬間体から力が湧いてきて、俺は泳いで川から脱出した。

『やはり鎧は着ていた方が良いんじゃないですか?』

俺はデュラハンの提案に無言で承認した。

その後、走っても全然疲れなかったので、俺は全速力で森の中を走った。

しばらく走っていると、だんだん木々が少なくなっていき、やがて森を抜けた。すると、少し丘を降ったところに村があるのが見えた。

「おおー。本当に村があるな。ん?なんか騒がしくないか?」

『マスター!村が人間に襲われています!』

人間?モンスターとか魔族じゃなくて?

『この世界では人間が魔族より圧倒的に強いのです!』

そうなのか。同じ人間とはいえ、村を襲うのは感心しないな。

より早く村に向かうためには...お、そういえば馬も召喚できるんだっけ?

『はい!「馬、召喚!」と、叫んでください。』

果たしてどんなダサい馬が来ることやら。

「馬、召喚!」

すると、俺のすぐそばに緑の鎧に包まれたかなり大きい馬が現れた。

馬の鎧は金属製で、俺のカエルスーツよりも遥かに格好良かった。

「おい、なんで馬の方が豪華な鎧を着ているんだ?」

『え?私的には、マスターの鎧の方がかなり強そうに見えますよ?』

いや、お世辞とかいらないから。とりあえず、急いで村に向かうか。

俺、馬なんて乗ったこと無いのだが魔法の時と同じようなことにならないか?

『馬に関しては、デュラハンのステータスによってかなり楽に馬を乗りこなせると思うので大丈夫だと思います。』

俺はその言葉を信じて恐る恐る馬に跨る。

馬が暴れないのを確認してから、そのまま、村の方へ行け!と念じながら鞭を叩くと、

「ヒヒィィン!」

と馬は雄叫びを挙げ、俺のいきたい方向へ向かって走り出した。

おお、本当に簡単に乗り越せたな。っていうか、馬ってこんなに早く走れるものなんだな。

馬は一気に丘をかけ下がり、村の周辺まで行くと止まった。

俺が馬から降りて、馬の頭を撫でると馬は光の粒子となって消えた。


一応、カエルの頭もつけておこう。顔を見られると後々面倒くさい事に巻き込まれるかもしれないからな。

村は真っ白の全身鎧フルプレートの部隊に攻撃を受けていた。

村人は手枷をつけられ荷台に乗せられ、家は所々破壊され燃えている家もある。

俺が村を見て回っていると、

「おい!誰だ貴様は?ここは一般人が来て良い場所じゃないぞ!」

兵士に声をかけられた。

これは平和的解決は無理そうか?でもさすがに殺人は避けたい。しかし、無抵抗だと俺が殺されそうだしな...。

『マスター。この程度の相手だったらマスターの力で無力化にする事も出来ますよ?魔法は威力が強すぎるので、鎧の腰に掛けてある剣で戦うことを推奨します。』

なに?剣なんて装備していたのか?

俺はそう思い、腰のあたりを探っていると確かに何か硬いものがあった。おそらくこれが剣だろう。しかし、鞘から抜きづらいな。

俺は、着ぐるみの手でなんとか剣を引き抜こうとしたが、全然引き抜けなかった。

ああ、もう焦れったい!

鎧を消すと抜こうとしている剣も消えるので右手を口から出して剣を抜く事にした。

「聴いているのか!早くここから立ち去れと言っているのだ!うずくまって何をしている?具合でも悪いのか?」

兵士はうずくまっている俺を見る。

その時、俺は口から手を出し、自分の剣を引き抜いているところだった。

そんな姿を兵士は見て、

「ぎゃぁぁぁぁ!!化け物が現れたぞ!おい、撤退だ!撤退!」

兵士は叫び声を挙げ、他の兵士たちの所へ走っていった。

「おい、どうした!何を見たんだ?」

「あ...あれが...。」

怯えている兵士が指差した方を他の兵士たちが見る。

そこには口から手を生やしている緑の生物がこちらに向かって歩いていた。

「ぎゃぁぁぁぁ!」
「村人は置いて行け!早く馬に乗れ!」
「おい、早くしろ!化け物に喰われるぞ!」

兵士たちは、素早く馬に乗り込み何処かへ行ってしまった。

『流石はマスターです。まさか戦わずして敵の戦意を挫くとは。』

...まあな?

「とりあえず村人を解放するか。」

俺は、カエルスーツだと村人を怖がせる可能性があるのでカエルスーツを脱ぎ、荷台へ向かった。

荷台には30人くらいの魔族が乗っていた。

「おい、村人が来たぞ。」
「あの兵士は何処に行ったんだ?まさかもう王国に着いた訳ではないよな?」
「でも、瞬時に移動できるテレポートっていう魔法があるらしいぞ。」
「じゃあ、本当に?」

魔族達はこそこそと話し合っている。

俺は、できるだけ怖がせないように笑顔で村人達の枷を外そうとした。

「おい、やめろ。抵抗するなって。」

しかし、俺が手枷を外してあげようとした娘は全力で抵抗した。そして、娘の振り回した手が俺に当たり、吹き飛ばされて荷台の壁に頭をぶつけた。

く、くそ。俺はこんなに貧弱な体だったのか...。

俺は薄れ行く意識の中、カエルスーツを出来るだけ着ていようと決心した。


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