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桜ノ国編
7.桜ノ別れ
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「桜姫、着きました」
「ええ、そうね」
この橋を渡ったら、もう二度と大和と会うことはないだろう。
そう思うと、涙が込み上げてきた。
(駄目よ。最後くらい笑顔でいなきゃ…)
私は、涙が溢れそうになるのを必死に堪える。
「大和、ここまで送ってくれてありがとう。大和がいたから私、今まで笑っていられた。すべて大和のお陰よ。本当にありがとう……さよなら……」
私は笑顔でそう言うと、大和の手を振り解いて走った。
「お待ちください!桜姫!」
私は、思わず足を止める。
「感謝するのは僕の方です。桜姫と一緒にいられて、僕はとても幸せでした!例え離れていても、僕はずっと桜姫の幸せを願っております!」
大和の大きな声が、背後から聞こえた。
堪えていた涙が、一気に溢れ出す。
(私も、幸せだったわ…)
--『知っていますか?この桜の木の前でお祈りすると、どんな願いも叶うらしいですよ』
--『だから僕は今、桜姫とずっと一緒にいられますようにとお祈りしました』
--『これでもう大丈夫です。僕と桜姫はこれからもずっと一緒です!』
大和と過ごした宝物のような思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
その幸福だった思い出を胸に、私は歩いていこう。
例えこの先どんな苦難が待ち受けてようとも、決して諦めないで立ち向かってみせる。
(大和、私もあなたの幸せを心から願っているわ。あなたに出会えて、本当に良かった)
私は振り返らずに、ただ前だけを向いて歩き出した。
***
--場所が変わって宮殿・玉座の間
父上は厳しい面持ちで、私を見下ろしていた。
その威圧感に、圧倒されそうになる。
流石は王者の風格といったところだ。
「そなたには失望したぞ。いったいどの面下げて、儂の前にいけしゃあしゃあと現れたのじゃ」
「申し訳ございませんでした」
私は膝まつき、頭を深く下げる。
「何故、戻ってきた!!」
「私は何も知りませんでした。外に出て初めて民の苦しみを知り、考えを改めました。父上、浅はかな私をどうかお許しください」
「ふむ。そなたも曲がりなりにも姫だったという訳か。ところで--大和はどこにおる?」
張り詰めた空気が玉座の間に走る。
--ドクンドクン
私は爆発しそうな鼓動を抑え、必死に冷静を装う。
「何のことでしょうか?私は一人で脱走を試みました。大和など知りませんわ」
「あくまで白を切るつもりか。まぁよい。自らの意思で戻ってきたことに免じて、大和のことは目を瞑ってやる。わかっておるな?そなたには明日の朝一に薔薇ノ国に出発して貰うぞ」
「はい。至急、用意致します」
(良かった…これ以上追求されたら身が持たなかったわ…)
***
玉座の間を後にして渡り廊下を歩いていると、突然、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「これはこれは、桜姫やあらしませんか」
「紅華妃…」
目を向けると豪華な衣を身に纏った、紅華妃が立っていた。
後ろには多数の侍女を引き連れている。
紅華は低い身分でありながら正室にまで上り詰めただけあって、野心家で欲深い性格だ。
その姿は毒々しくもあり、とても美しい。
「使用人と夜逃げしたて聞いたけど、たった一日でへこたれて、のこのこと舞い戻ってくるとは、とんだ笑い者どすなぁ。よくもまあ恥ずかしげもなく平然としていられる。その厚顔無恥な性格は、亡き母上である吉野様譲りどすか?」
容赦なく悪意ある言葉を放つ紅華妃。
普段なら何を言われても無視するが、母上の名前を出されて、私は黙ってはいられなかった。
「紅華妃、私のことは何とでも仰っても構いませんが、母上を侮辱するのはお辞めください」
「王妃であるこのわたくしに口ごたえするとは、なんと生意気な!相変わらず礼儀がなってまへんで!」
「明日からはもうその生意気な顔を見ることはございませんので、どうか御安心ください」
「ようもまぁ、次から次へと減らず口が……いつまでそないな強気な態度でいられるのか楽しみどすなぁ。なんでも噂によると薔薇ノ国の第三王子オルフェオは、えらい冷徹な男で、許嫁やった貴族令嬢をも殺したそうな。せいぜい桜姫も殺されへんよう気ぃつけるんどすなぁ」
「行くで!!」と声を掛けると、紅華妃は歩き出した。
お付きの者達も後を追うように動き出す。
桜ノ国一の美貌と謳われた紅華妃は、その美しさを父上に見初められ宮殿入りしたが、低い身分だった故に正室にはなれず、母上が亡くなるまでは側室という立場だった。
そのため、桜ノ国の中でも屈指の貴族出身だった母上を妬んでいた。
そしてその娘でもある私も当然快く思わず、小さい頃からそれはそれはいじめ抜かれたものだ。
***
翌朝--
『桜姫、どうかお元気で』
『桜姫がいないと寂しくなりますわ』
『桜姫様のことは、絶対に忘れません』
薔薇ノ国に旅立つ私を見送るために、宮殿前には、大勢の使用人たちが集まっていた。
なかには、目を腫らして泣いてる者までいる。
「みんなありがとう。私、薔薇ノ国に行っても頑張るわ」
こんなにも大勢の者たちが、私のために集まってくれたのかと思うと、感激で胸がいっぱいだった。
「姉上、どうか道中お気をつけてください」
この精悍な顔をした少年は、私の腹違いの弟・桜之助
とてもあの紅華妃から産まれたとは思えぬほど、心優しくてしっかりしている。
「桜之助、桜ノ国のことは任せましたよ」
「はい…!必ずや立派な王になって、姉上が守ってくれたこの国を、今度は余が守ってみせます」
とても頼もしい跡継ぎだ。
今はまだ子供だけど、桜之助はらきっと素晴らしい国王になると私は信じている。
「父上…」
「そなたのお陰で我が国は救われた。次期に薔薇ノ国の強靭な軍隊が送られてくるだろう。婚姻の話はすぐに梅ノ国にも伝わり、桜ノ国から撤退せざるを得なくなる。礼をいうぞ」
「良かった……これで安心して旅立てます。父上、どうか体調には気をつけて、長生きしてください」
私は輿に乗り込んだ。
鍛え抜かれた男数人の手で、ゆっくりと輿は持ち上げられて、周りを馬に乗った護衛が囲む。
もう二度と、ここには戻ってくることはないだろう。
辛いことも多かったが、楽しいこともあった。
私は、愛しき人の顔を思い浮かべる。
(大和、私…行ってくるわ)
心の中で、そっと呟く。
満遍なく咲き誇る桜を背に、輿は動き出す。
桜雲橋を渡り、城下町を抜けて、私は薔薇ノ国に向けて出発した。
「ええ、そうね」
この橋を渡ったら、もう二度と大和と会うことはないだろう。
そう思うと、涙が込み上げてきた。
(駄目よ。最後くらい笑顔でいなきゃ…)
私は、涙が溢れそうになるのを必死に堪える。
「大和、ここまで送ってくれてありがとう。大和がいたから私、今まで笑っていられた。すべて大和のお陰よ。本当にありがとう……さよなら……」
私は笑顔でそう言うと、大和の手を振り解いて走った。
「お待ちください!桜姫!」
私は、思わず足を止める。
「感謝するのは僕の方です。桜姫と一緒にいられて、僕はとても幸せでした!例え離れていても、僕はずっと桜姫の幸せを願っております!」
大和の大きな声が、背後から聞こえた。
堪えていた涙が、一気に溢れ出す。
(私も、幸せだったわ…)
--『知っていますか?この桜の木の前でお祈りすると、どんな願いも叶うらしいですよ』
--『だから僕は今、桜姫とずっと一緒にいられますようにとお祈りしました』
--『これでもう大丈夫です。僕と桜姫はこれからもずっと一緒です!』
大和と過ごした宝物のような思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
その幸福だった思い出を胸に、私は歩いていこう。
例えこの先どんな苦難が待ち受けてようとも、決して諦めないで立ち向かってみせる。
(大和、私もあなたの幸せを心から願っているわ。あなたに出会えて、本当に良かった)
私は振り返らずに、ただ前だけを向いて歩き出した。
***
--場所が変わって宮殿・玉座の間
父上は厳しい面持ちで、私を見下ろしていた。
その威圧感に、圧倒されそうになる。
流石は王者の風格といったところだ。
「そなたには失望したぞ。いったいどの面下げて、儂の前にいけしゃあしゃあと現れたのじゃ」
「申し訳ございませんでした」
私は膝まつき、頭を深く下げる。
「何故、戻ってきた!!」
「私は何も知りませんでした。外に出て初めて民の苦しみを知り、考えを改めました。父上、浅はかな私をどうかお許しください」
「ふむ。そなたも曲がりなりにも姫だったという訳か。ところで--大和はどこにおる?」
張り詰めた空気が玉座の間に走る。
--ドクンドクン
私は爆発しそうな鼓動を抑え、必死に冷静を装う。
「何のことでしょうか?私は一人で脱走を試みました。大和など知りませんわ」
「あくまで白を切るつもりか。まぁよい。自らの意思で戻ってきたことに免じて、大和のことは目を瞑ってやる。わかっておるな?そなたには明日の朝一に薔薇ノ国に出発して貰うぞ」
「はい。至急、用意致します」
(良かった…これ以上追求されたら身が持たなかったわ…)
***
玉座の間を後にして渡り廊下を歩いていると、突然、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「これはこれは、桜姫やあらしませんか」
「紅華妃…」
目を向けると豪華な衣を身に纏った、紅華妃が立っていた。
後ろには多数の侍女を引き連れている。
紅華は低い身分でありながら正室にまで上り詰めただけあって、野心家で欲深い性格だ。
その姿は毒々しくもあり、とても美しい。
「使用人と夜逃げしたて聞いたけど、たった一日でへこたれて、のこのこと舞い戻ってくるとは、とんだ笑い者どすなぁ。よくもまあ恥ずかしげもなく平然としていられる。その厚顔無恥な性格は、亡き母上である吉野様譲りどすか?」
容赦なく悪意ある言葉を放つ紅華妃。
普段なら何を言われても無視するが、母上の名前を出されて、私は黙ってはいられなかった。
「紅華妃、私のことは何とでも仰っても構いませんが、母上を侮辱するのはお辞めください」
「王妃であるこのわたくしに口ごたえするとは、なんと生意気な!相変わらず礼儀がなってまへんで!」
「明日からはもうその生意気な顔を見ることはございませんので、どうか御安心ください」
「ようもまぁ、次から次へと減らず口が……いつまでそないな強気な態度でいられるのか楽しみどすなぁ。なんでも噂によると薔薇ノ国の第三王子オルフェオは、えらい冷徹な男で、許嫁やった貴族令嬢をも殺したそうな。せいぜい桜姫も殺されへんよう気ぃつけるんどすなぁ」
「行くで!!」と声を掛けると、紅華妃は歩き出した。
お付きの者達も後を追うように動き出す。
桜ノ国一の美貌と謳われた紅華妃は、その美しさを父上に見初められ宮殿入りしたが、低い身分だった故に正室にはなれず、母上が亡くなるまでは側室という立場だった。
そのため、桜ノ国の中でも屈指の貴族出身だった母上を妬んでいた。
そしてその娘でもある私も当然快く思わず、小さい頃からそれはそれはいじめ抜かれたものだ。
***
翌朝--
『桜姫、どうかお元気で』
『桜姫がいないと寂しくなりますわ』
『桜姫様のことは、絶対に忘れません』
薔薇ノ国に旅立つ私を見送るために、宮殿前には、大勢の使用人たちが集まっていた。
なかには、目を腫らして泣いてる者までいる。
「みんなありがとう。私、薔薇ノ国に行っても頑張るわ」
こんなにも大勢の者たちが、私のために集まってくれたのかと思うと、感激で胸がいっぱいだった。
「姉上、どうか道中お気をつけてください」
この精悍な顔をした少年は、私の腹違いの弟・桜之助
とてもあの紅華妃から産まれたとは思えぬほど、心優しくてしっかりしている。
「桜之助、桜ノ国のことは任せましたよ」
「はい…!必ずや立派な王になって、姉上が守ってくれたこの国を、今度は余が守ってみせます」
とても頼もしい跡継ぎだ。
今はまだ子供だけど、桜之助はらきっと素晴らしい国王になると私は信じている。
「父上…」
「そなたのお陰で我が国は救われた。次期に薔薇ノ国の強靭な軍隊が送られてくるだろう。婚姻の話はすぐに梅ノ国にも伝わり、桜ノ国から撤退せざるを得なくなる。礼をいうぞ」
「良かった……これで安心して旅立てます。父上、どうか体調には気をつけて、長生きしてください」
私は輿に乗り込んだ。
鍛え抜かれた男数人の手で、ゆっくりと輿は持ち上げられて、周りを馬に乗った護衛が囲む。
もう二度と、ここには戻ってくることはないだろう。
辛いことも多かったが、楽しいこともあった。
私は、愛しき人の顔を思い浮かべる。
(大和、私…行ってくるわ)
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