私が何をしたって言うんだ!

梅したら

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一章 落ちぶれた大魔道士、オークションから救出される

3 差し支えなければ

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「レン、あなた薬か何かを盛られていますね?」

「……盛られていないが!?」

 とりあえず大嘘をついた。
 性奴隷として売られていた上に、尻に媚薬を仕込まれたなど、誰にも知られたくない恥部だ。
 ましてかつての養い子であるフィーリに知られるなど、想像すらしたくない。

「私の体に異常がなかったのは、診察した君が一番よく知っているだろう」
「診察も検査も、万能ではありません。魔法すらすり抜けるものがある。例えば――最近、裏で出回っている媚薬であれば、昨夜の診察では見つけられません」
「!!」

 息を呑む。
 直後、しまったと気づいても遅かった。

 フィーリがスゥと目を細める。

「わかりやすい人ですね、レン」
「な、なんのことだ」
「どうやらあなたは、自分に盛られた薬がなんなのか、ご存知のようだ」
「し、知らない。薬など、盛られていない!」

 私は否定するのに、フィーリは聞かない。
 勝手に近づいてきて、手首を掴んでくる。

「失礼します」

 おもむろに、私の指先をフィーリが舐めた。

「な、何を……!? 何をしている! 私を誰だと思っている!」
「さあ? あなたは本名さえも、教えてくださらなかったから」

 振りほどこうとするが、フィーリの方が力も体格も圧倒的に勝っていた。
 指先を何度も何度も、フィーリの舌でなぞられる。

 フィーリが間近にいるだけで、媚薬で茹だった体が震えた。
 鼻に届く涼やかな匂いに、頭を侵食される。これはおそらく、フィーリの匂いなのだろう。

 匂いを吸い込むたび、頭が痺れる。
 目の前の男が欲しいと、喉が渇く。

「やはり、媚薬か……」

 フィーリの呟きが耳に届いた。
 どうやら私の指から、盛られた薬を特定してしまったらしい。
 魔力に反応しない薬であっても、他の成分は精密検査を行えば検出できる。

 つまり、今フィーリが私の指を舐めたのは、粘膜と体液を媒介とした、簡易的な精密検査だ。
 倫理感を横に置けば、効率が良いとされる手法。まさかフィーリが私に対してそんなことをするとは思わなかった。

「どうして言ってくださらなかったんですか、レン?」

 フィーリはいつのまにか寝台に上がり、膝立ちで私をまたぐようにして見下ろしていた。
 手首は掴まれたままだ。振りほどこうとすれば、今度は簡単に解放される。

 理性をどうにかかき集め、フィーリを睨みつけた。

「いかにも、私は媚薬を盛られたが、それが何か? 君には関係がない。だから言う必要はなかった」
「関係あるでしょう。その媚薬の効果をご存知ですか?」
「興味はない。媚薬などに負ける私ではないからな」
「かっこいいな……でも、そのうち負けますよ」
「なんだと!? 私を侮辱してい――、ッ!?」

 侮辱しているのか、と怒ろうとした私の布団が、おもむろに剥ぎ取られた。
 寝台の上で立ち上がったフィーリが、剥ぎ取ったのだ。

「……ああ、やっぱり。抗いきれませんよね、魔法薬には」

 布団を投げ捨ててしゃがんだフィーリの視線は、私の濡れた股間に向いていた。
 つい先ほど射精したばかりのそこはまだ、痕跡を隠せるほど乾いていない。
 何があったのか、ひと目でわかってしまうだろう。

「ち、ちが、これは……」
「隠さないで」

 急いで手で隠し、身をよじって視界から外そうとする。
 だがあろうことか、フィーリが私の膝を掴み、足を開かせてきた。

「な、な……!?」

 屈辱のあまり唇がわななく。
 養い子の眼前がんぜんで、オムツを変えられる赤子のような体勢を取らされている……だと……!?

「ふ、ふざけ――」
「ふざけているのはどっちですか? 媚薬を盛られて、それを言いもせず一人で耐えようとして。あなたには治療が必要なんです。この魔法薬は、条件を満たさない限り、いくら耐えたって治まらないんですよ」

 怒りを沸騰ふっとうさせようとした私の出鼻でばなが、くじかれる。
 私はフィーリを睨みつけていたが、フィーリもまた、私を睨んできた。まくしたてられるのは、私を責める言葉。

 ――こんなフィーリは初めて見るかもしれない。

「……フィーリ。君、もしかして怒っているのか?」

 フィーリが怒っている姿など、かつてともに暮らした記憶にはない。反抗的ではあったが、怒りとは違ったように思う。
 だが表情や声のトーンからして、今のフィーリのこれは、怒りに分類されるのではないだろうか。
 だとしたら、なぜ私は怒られているのか。媚薬を盛られたことは、フィーリが怒る理由にはならないはずだ。

「……怒っていませんよ?」
「そ、そうなのか……」

 怒っているように見えたが、フィーリが違うと言うならば、怒っていないのだろう。
 フィーリは昔から、嘘をつかない子どもだから。
 いつも素直で、生意気だった。

「…………」

 私は納得してみせたというのに、フィーリはなぜか目を細め、私をにらみつける。

「な、なんだ、フィーリ?」
「いえ、なんでも」
「そうか……んん!?」

 あろうことか、フィーリはおもむろに、私の濡れた股間を触ってきた。
 五本の指で摘むようにしたあと、上に指を滑らせて、離す。

「な、何をしている……!?」

 股間からザワザワと、くすぐったさが背筋を駆け上る。
 フィーリの手は何度も同じ動きを繰り返してきて、足を閉じて抗おうとしても、膝で押さえつけられ阻止された。

「この媚薬――魔法薬の解除条件を、レンはご存知で?」
「知らな……っ、股間を撫でるのをやめろ……っ!!」

 フィーリは私の股間をくすぐるように触りながら、問いかけてくる。
 最悪なことに、尻のあわいにある孔が、ヒクヒクと疼いていた。全身が震え、頭が朦朧もうろうとしてくる。

 私がいくらやめろと言っても、フィーリはやめなかった。
 膝で私の足を広げ、片手は私の股間をくすぐり、もう片方の手で頬を鷲掴わしづんで、強制的に視線を合わせてくる。
 私は両手を使ってフィーリの腕を掴むが、指に力が入らず、荒い息を吐きながら震えるばかりだった。

「解除条件は、ここに」
「…………っ!!」

 フィーリの膝で、尻の間を押された。体が自然とのけぞる。認めたくはない快楽が、尻から背筋を駆け上り、脳髄を痺れさせた。

「他人の体液を注ぎ込まれなければ、その体はしずまりません。うずきは時間とともにひどくなり、二晩も経つ頃には獣にさえも、なさけをいたがるでしょう」
「なっ……!!」

 考えたくはないが、事実だろう。
 疼きは時間とともにひどくなっていた。

 少なくとも昨日の私であれば、この場でフィーリを怒鳴りつけるくらいの気力はあった。
 だが今は、与えられる刺激を貪欲に受け止めたがる体を、これ以上の無様は晒さないように押さえつけることしかできない。
 そして――それすらも近いうちにできなくなるだろうという予感があった。

「た、たい、えき……?」
「はい。治療するには、あなたの腹に、他者の体液を、入れる必要があります」

 朦朧もうろうとする私でも聞き逃すことがないように、フィーリは一言一言を大きく、ゆっくりと告げた。

「――つかえなければ、私がお相手を」
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