プレゼント・タイム

床田とこ

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 少し嫌な感じがした。
 
「アイちゃん、和田くんと仲良かったよね」
「別に。幼馴染みなだけです」
「だよね。よかった。じゃあさ、テスト勉強、僕と一緒にどう? 僕が教えてあげるよ、アイちゃんに。きっと成績上がるよー? 和田蓮太より教えるのうまいと思うんだよね、僕って。どうかな」
 
 少しでも興味を持ちそうになった私がいけない。無駄なエネルギー消費をしてしまうところだった。『伝説のあんぱん』の残りで、再生エネルギーを補充する。
 うるさいうるさいうるさい。
 息継ぎもせずにまくし立てる真中くんの言葉が、だんだん遠のいていく。
 あー、あんぱん美味しい。
 


「ファミレスとかカフェとかで勉強する? 夕ご飯も奢るよ。お母さんいないと大変でしょ?」

「……え?」
 


 唐突に。
 ほにゃららの霹靂。
 自然で聞き逃しそうで。真綿の輪が首に掛かるような、穏やかな、声。


 
「片親だと子供も大変だよね。お父さんもなかなか帰ってこないんでしょ?」

「……いや、父は仕事で……」

「長距離ドライバーだっけ。いつもひとりぼっちだもんね。その環境だとそんな風になっちゃうよね。それじゃあアイちゃんがほんとにかわいそうだ」
 


 かわいそう。

 そうかな。そうなのかな。

 これは検証が要るんじゃないかな。
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